松之山温泉全体を元気にしたい
経営が難しい宿を立て直す、再生プロジェクトにも尽力している山岸さん。それが、玉城屋の姉妹宿として2018年にオープンした〈バル&ホステル 醸す森 kamosu mori〉です。
「醸す森は、もともと〈おふくろ館〉という、そば打ちやトレッキングなどができる市営の簡易宿泊場でした。私も子どもの頃に訪れたことがある、地元の人には馴染み深い施設です。しかし客足が伸びず、苦しい状況に。そんなとき十日町市で再生に関する公募があり、購入に踏み切りました」
醸す森は、オーベルジュスタイルの“泊まれるフレンチバル”。美しい自然を一望できる広々としたダイニングで、地元食材を使ったフレンチをリーズナブルかつカジュアルに楽しめるのが最大の魅力です。100種類以上のワインと日本酒が揃い、ワインのペアリングコースや日本酒の飲み比べセットも用意されています。
朝食を担当するのは、おふくろ館で働いていたお母さんたち。自家栽培の野菜をふんだんに使った、心和む田舎料理が並びます。自然体験も以前のスタッフがそのまま担当するシステムで、雇用を継続しているそうです。
スタッフの得意分野を生かしながら、日本酒と地産地消にこだわったフレンチの魅力を発信する山岸さん。その取り組みが評価され、玉城屋は2019年に開催された旅館の全国大会「第4回旅館甲子園」で、グランプリに輝きました。
山岸さんの取り組みを温泉街全体に広めたいと、いまでは組合一丸となって「地酒を楽しむ(醸す)温泉街」を宣言。松之山温泉で働く人を対象に、日本酒ナビゲーターの養成講座を開いたり、飲み歩きイベントを開催したりと盛り上がりをみせています。「松之山全体をおもしろいエリアにしたい」と話す山岸さん。新たなリーダーの活躍に目が離せません。
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Profile 山岸裕一
1982年新潟県生まれ。〈酒の宿 玉城屋〉、姉妹宿〈バル&ホステル 醸す森 kamosu mori〉代表。横浜国立大学卒業後、調理師学校に入り、〈日本料理 松下〉で修業。その後、リクルート経理統括室などで働き、2016年玉城屋の4代目に就任。宿の再生プロジェクトとして2018年、醸す森をオープン。
credit text:矢島容代 photo:ただ