新潟のつかいかた

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長岡でムーブメントを起こす!
〈FARM8〉代表・樺沢敦さん Posted | 2018/08/03

「『樺沢さんって、どれが仕事ですか?』ってよく言われるんです。ビジネスのメインは〈FARM8〉ですけど、私の活動のなかではどれが本業ということはなく『地域がおもしろくなりそう!』と思ったもののなかで活動しています」

新潟県長岡市で、食品加工、地域資源プロデュース、地域ブランディングなどを事業展開する〈株式会社FARM8〉。

代表の樺沢敦さんと話をすれば、「いったい何屋さん!?」と、やっぱり思わずにはいられません。幅広すぎる活動範囲と、あふれて止まらないアイデア。そこには、樺沢さんの“わくわくすること”が根底にありました。

新潟県長岡市で、食品加工、地域資源プロデュース、地域ブランディングなどを事業展開する〈株式会社FARM8〉

〈FARM8〉が目指すのは
長岡の資源でムーブメントを起こすこと

長岡市生まれの樺沢さんは、大学進学を機に名古屋へ。2004年に発生した新潟県中越地震をひとつのきっかけに、名古屋での仕事を辞め、長岡にUターン。その後、いまでいうIoTの開発や、マーケティングコンサルタント、NPOや地域の中間支援事業など、多岐にわたる業界を渡り歩いてきたそう。

そのなかで、さまざまな地域の問題を目の当たりにし、着目したのが“食品開発”。

「昔から、“地産地消”というものにあんまりピンとこなかったんです。おいしいものはお裾分けしてもいいんじゃないかって。でも1次産品である作物は日持ちしないので、それを加工品にして、作物そのもののおいしさを全国に流通させたらどうか、と思ったんです」

〈株式会社FARM8〉代表の樺沢敦さん

FARM8が立ち上がったのは2015年のこと。
現在は、管理栄養士、デザイナー、パートなどを含め、10人ほどのスタッフで運営。企業、組合、農家の相談を受けながら、樺沢さんがアイデアを出し、それを管理栄養士がかたちにし、商品化。ですが、すべての相談を叶えているわけではないのだとか。

「完成すれば年間をとおした収入源になるとはいえ、むやみに商品化しても不幸になるケースがあるんです。販売計画がなかったり、商品ができても結局販売する人がいないとか。だから私が得意とするのは、“チームビルディング”と“ビジョン共有”ですね。それが難しい場合は、商品開発をやめる場合もあります」

FARM8が手がけた、長岡の資源を用いた加工食品の数々。
FARM8が手がけた、長岡の資源を用いた加工食品の数々。

さらに、新しいライフスタイルのきっかけづくりを念頭に置いている樺沢さん。商品の売り上げだけを狙うのではなく、その商品から派生するムーブメントを想定した商品づくりをしているのだとか。

ドライフルーツと新潟銘菓「はっか糖」に日本酒を注ぐだけで、気軽にカクテルがつくれる〈ぽんしゅグリア〉。
ドライフルーツと新潟銘菓「はっか糖」に日本酒を注ぐだけで、気軽にカクテルがつくれる〈ぽんしゅグリア〉。

例えば〈ぽんしゅグリア〉は、「日本酒版サングリア」として楽しめる商品。

「ぽんしゅグリアは、“ライフスタイルの提案”なんです。こんな飲み方アリなんだ! というブームが起きれば、日本酒業界が盛り上がっていく。そうなればコメの業界も上がっていきます。
ウイスキー業界をハイボールブームが底上げしたように、日本酒業界にハイボールの立ち位置をつくりたいなと思って。だから、このアイデアをいかに大きな会社に真似てもらえるかが大切。類似品が出たら勝ちなんです(笑)」

これまでにも日本酒イベントや商品開発などで樺沢さんと組んできた長岡の〈お福酒造〉。現在の日本酒づくりの主流「速醸仕込み」の発祥地といわれる蔵。
これまでにも日本酒イベントや商品開発などで樺沢さんと組んできた長岡の〈お福酒造〉。現在の日本酒づくりの主流「速醸仕込み」の発祥地といわれる蔵。

また、栄養価が高いことは知られるものの、多くは産業廃棄物として処分される酒かす。これを利用できないかと依頼を受けて開発したのが、「酒かすジェラート」。「さかすけ」(酒かすを乳酸発酵させたもの)、豆乳、ビートグラニュー糖の3原料だけでつくったジェラートは、爽やかな酸味がまるでフローズンヨーグルトのよう! 

酒かすジェラート〈醸グルト JOGURT〉
酒かすジェラート〈醸グルト JOGURT〉。アルコールや動物性乳製品は含まないので、子どもや乳製品アレルギーを持つ人も安心して食べられます。写真はプレーン、濃厚かつ爽やかな味わいのストロベリー、生チョコのような滑らかさのショコラ。

「パッケージ化された商品をつくるのは難しいと思う人が多いけれど、そんなことはなくて。調べれば、国や市町村の補助金や助成金が使える場合もあるので、そういったことも伝えながら、活用方法を提案しています。
ただ、食品業界って時代遅れな面があって……いまぶつかっているところです。でも、だからこそオンリーワンを狙える場所でもあるんですよね」

摂田屋のブランド化、日本酒を世界に発信

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