ビー玉が転がっていくような仕組みをつくること
FARM8の活動以外にも、自身が「おもしろそう!」と感じるものに積極的に取り組む樺沢さん。
「長岡は酒蔵の数が県内最多なんです。それで、いくつかの酒蔵を巻き込んだ日本酒プロジェクトを始動しています。新潟のほとんどの酒蔵は“寒仕込み”といって、雪のシーズンにしかお酒をつくらないんですね。でもその事実がほとんど知られていないことに気づいて」
アジア圏でも日本酒ブームが巻き起こっている昨今。台湾やソウルで、日本酒をフックにした交流イベントを開催するなど、海外のネットワークにも強いという樺沢さん。各国の若手クリエイターたちは、いわゆるブランド銘柄ではなく、つくられた背景がわかる日本酒を好んで飲むといいます。
「約半年間かけて“寒造り”で酒づくりをしているという背景をまず認知してもらおうと思っているんです。新潟の酒づくりは、雪と密接な関係があるといわれていて、それを証明し、雪の恩恵を受けた〈ユキカモシ〉というブランドを立ち上げる予定です」
これが話題を呼べば、山形、秋田、福島といった雪国の酒どころにも波及して、日本酒全体の底上げにもつながるといいます。
「新潟だけにこだわるつもりはなくて。ただ出荷して飲んでもらうというステージではなく、雪と酒、雪と食を楽しめる環境を、“情報”として海外に発信していこうと思っているんです」
また、活動のなかの出会いから、こんな話に発展することも。
「仕事でドバイの有名レストランにいる日本人ソムリエと出会って、話が盛り上がって。そのお店に長岡のお酒を置いてもらうことになったんです。世界の名店に地元の酒が置いてあるって、わくわくしますよね(笑)」
ほかにも、NPO法人〈市民協働ネットワーク長岡〉の理事として長岡市と連携したり、父親支援団体〈ファザーリングジャパン〉の新潟副代表を務めるなど、樺沢さんにはいくつもの顔が。
そんな活動をしていると、行政・企業・NPOという関係性のなかで、役割分担のズレが見えることがあるといいます。行政にしかできないこと、民間にしかできないこと、その歯車をあわせて交通整理し、新しい取り組みの始動エンジンをかける役割を担いたいという樺沢さん。さまざまな知見があり、いろいろな経験をしてきたからこそ、見えるものがあるよう。
「行政・企業・NPOという3つの点をつないで面にして、意味を持たせることがすごく大事だと思っているんです。
それに、無理して頑張らなきゃ活性できないようなまちづくりではなくて、ビー玉が勝手に坂道を転がっていくような仕組みをつくっていきたい。でも、何が坂道なのかは失敗しながらじゃないとわからないので、私にまかせてくれ! 失敗は得意だから! って(笑)。そういう役割になれたらいいなって思いますね」