個性派が集まり、相乗効果を生み出すショップ〈LIS〉
そんな樺沢さんが、長岡の魅力を発信しようと仲間たちと立ち上げたのが、「森のスーパーマーケット」と銘打ち、食べ物とライフスタイルを提案する〈LIS(リス)〉。
FARM8と、オーガニック食品、マクロビオティック食材を扱う〈たつまき堂〉、心地よい暮らし方を提案する書籍、雑誌、絵本を揃えた〈ブックスはせがわ〉の3店舗が共同運営するセレクトショップです。
*現在は営業形態を変え、移転しています。
長岡の山寄りにあるため、決してアクセスがいいとは言えないものの、3人のオーナーの選りすぐった品々を求め、子育て世代を中心に、幅広い年齢層のファンが通うお店に。
「隣の家具屋〈S.H.S長岡〉のオーナーから、この棟で食品関係のお店ができないかと声がかかったんです。FARM8の商品と、たつまき堂の猪俣さんに声をかけてオーガニック食品を置いたんですけど、なんとなく食品スーパーみたいな感じになってしまって(笑)。そんなときに、市内を中心に“移動本屋”を運営している長谷川さんの名前が出てきて、あの人しかいない! と」
3人とも長岡出身のため、互いのことは知っていたものの、昔から接点があったわけではなかったそう。ですが、猪俣さんと長谷川さんというふたりの感性に惹かれ、スカウト。自分たちで築いたものを表現できる店をテーマに、「Local Identity Store」の頭文字をとって〈LIS〉と名づけたといいます。
2階はギャラリースペースになっており、これまでに長岡出身の陶芸家、版画家、写真家、服飾アーティスト、ガラス職人など、地元で活動するアーティストの作品を展示。ときにはリース教室や、アコースティックライブを開催したり、トークセッションイベントの会場としても使っているのだとか。
「オープンしてまだ1年半ですが、長岡には個性派がいっぱい眠っていることを実感しました。長谷川さんも猪俣さんも、地域のネットワークをすごく持っていて、つなげてくれて。
いろんな方に関わってもらうことによってつながりが生まれ、それについてきてくれるお客さんも、お店や食べ物のファンになってくれたり。いろんな相乗効果が生まれる店になってきていますね」
車でしか行けないという立地にもかかわらず、この規模でゆるゆるとやれているお店が存在することは、深い意義があるといいます。地域に根づくすばらしいモノや人を見過ごして、均一なサービスを受け入れがちな現代の仕組みに、アンチテーゼを投げかける役割も担っているという樺沢さん。
「わくわくすることをやっていると、だんだん“類友”みたいに人が集まってきて、すごくおもしろいことができるんですよね。私たちが大きな何かを変えられるとは思っていないけれど、メッセージを発信したり、ムーブメントを起こすことはできると信じています」
新潟を起点におもしろいことが巻き起こり、多くの人が幸せで楽しく暮らせる世界に――樺沢さんの根本には、そんな願いが垣間見えます。
これからの長岡、ますますおもしろいエリアになりそうな予感!
Information
Profile 樺沢 敦
1979年新潟県生まれ。株式会社FARM8代表取締役。中京大学卒業後、マーケティングコンサルタントやエンベデッドシステム開発、NPOや地域の中間支援事業などのキャリアを経て、2015年、新潟県長岡市に地域資源プロデュースの株式会社FARM8を設立。地域コンテンツコーディネーターとして活動。地域資源活用の商品開発やプロデュース事業を地域経済とリンクさせるため、商品開発の仕組みづくり・地域おこし事業・プロモーション・海外展開事業、クラウドファンディング事業などを展開。
credit text:林貴代子 photo:水野昭子