会議室が建設現場に早変わり! 画期的技術とは?
小柳建設のDXで特筆すべきは、日本マイクロソフト社と共同開発したアプリケーション〈ホロストラクション〉です。これは、専用ゴーグル型端末〈ホロレンズ〉を装着すると、目の前に3D映像のリアルな工事現場が再現されるという業界初の画期的な技術。
これにより、現場まで足を運ばないとできなかった施工イメージの共有や打ち合わせなどが、会社の会議室でできるように。2016年から開発が始まったホロストラクションは、19年からトライアル運用が開始され、いまも品質向上のための研究が行われています。
「現在は、ドローンで計測した点群データをホロストラクションで再現できるようになり、どの程度、土が盛られているのか、重機がどこに置かれているのかといったことまでわかります。これらの技術を駆使して、昨年からは工事の完成検査もリモートで行っています」
ホロストラクションで業務の負担を大幅に軽減した小柳さん。さらにここ数年は、売り上げを大胆にコントロールする試みも。
「以前は売り上げ100億ほどでしたが、いまはあえて70億に。受注を増やせば、売り上げは増えますが、現場に配置される人員が減ります。そうなると当然、残業が増え、従業員は疲弊し、仕事がずさんになり、利益が下がるという悪循環が生まれてしまう。それを避けるために、残業をせずに業務に集中できる環境をつくりました。
結果、売り上げ100億のときと同じ利益をキープしています。つまり、労働時間を減らし、利益率を上げることができたんです」
利益が出た分は社員に還元。以前の年間ボーナスは月給2か月分だったのに対し、現在は4.1か月分に。残業時間も月平均で2時間という、業界では驚異的な短さを実現しています。しかしこれらの成功は、あくまでも社員たちの努力によるものと強調する小柳さん。
「デジタル技術を導入するだけでは、残業時間は減らせません」
小柳さんは、社員をプロジェクトごとに細かいグループに分け、業務を「見える化」し、社員全員で会社を経営する意識を持つ「アメーバ経営」を導入しています。見える化とは、会社の活動実態を全員が把握し、社員同士も互いの業務状況をわかっている状態のこと。
「見える文化にすることで、仕事の問題点も自ずと見えてきます。残業が少なくなったのもそういった問題点を社員たちが改善していったから。DXで目指すべきは、会社の文化そのものを変えること。デジタル技術はそのための手段にすぎません」
さまざまな視点から働く環境を改善していく小柳さん。2021年には「子育てサポート企業」として「くるみん認定」を、2022年には女性活躍推進に取り組む企業として「えるぼし認定」をそれぞれ厚生労働省から受けています。
また福利厚生の一環として、「iDeCo+(イデコプラス)」の運用を開始。これは、個人が加入するiDeCo(公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度のひとつ)に、会社が掛け金を上乗せし、従業員の福利厚生を拡充させる仕組みのこと。
「運用を始めた目的は、社員の金融リテラシーとモチベーションの向上です。これからの時代、金融リテラシーを身につけて、自己資産をいかに自分で増やせるかが重要。強制ではありませんが、運用したいという社員に対しての協力は惜しみません」
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