新潟のつかいかた

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燕三条の
ものづくり文化を守りたい。
株式会社〈MGNET〉
代表・武田修美さん | Page 2 Posted | 2022/11/18

ものづくり、ことづくり、まちづくりの3つの事業

MGNETは、地域発のソーシャルデザイン企業として「ものづくり」、「ことづくり」、「まちづくり」の3つの事業を展開しています。

「ものづくり事業は、自社製品の企画・開発や製造コーディネートなどです。製造コーディネートとは、何かをつくりたいというお客様のイメージをカタチにする仕事。我々が職人や工場を選定したうえで、素材は何を使うのか、どんな仕上げにするのか、細かく発注します。また商品を消費者に届けるFACTORY FRONTの運営もこの事業の一環です」

セレクトショップ〈FACTORY FRONT〉の雑貨やタオルなどが並ぶ陳列棚

「ことづくり」は、それぞれの企業が持つすばらしい技術やサービスを、いまの時代に合わせて、より魅力的に世の中に発信していくというもの。

「主にブランドデザインやパッケージ監修、コーポレートサイト制作などのディレクションを行っています。伴走者という立場で、燕三条に限らず、いろいろな企業のお手伝いができればと考えています」

燕市〈中野科学〉のカトラリー〈As it is〉
虹色のような美しい光沢が魅力の、燕市の〈中野科学〉のカトラリー〈As it is〉。武田さんがパッケージデザインなどのディレクションを手がけた、ことづくり事業のひとつ。

3つ目の「まちづくり」では、将来、ものづくりを支えていく若者にフォーカスした事業を展開。

「たとえば、まちの活性化を目的として、若者が集まれるようなカフェをプロデュースしたり、現在は、地域通貨〈まちのコイン〉の燕三条版『めたる』の運営を行っています。また、ほかの企業や大学と協力して『ジュニア起業家スクール』など、子どもや学生向けのイベントやセミナーを企画することもあります」

地域通貨〈まちのコイン〉の燕三条版『めたる』の普及イベントブース
〈まちのコイン〉とは、コインをもらうときも使うときも、まち、ひと、地球にやさしい体験ができるという、スマートフォンを利用したコミュニティ通貨。鎌倉市に拠点を置く〈面白法人カヤック〉が開発した同サービスを燕三条ではMGNETが運営。この導入で、若者がものづくりに触れる機会が増えることが期待されています。(写真提供:MGNET)

これらの仕事はほんの一部であり、幅広い事業を展開しているMGNET。そのため社員にはディレクターやデザイナー、映像クリエイターなど、各分野のスペシャリストが揃い、それぞれが自分たちの得意分野で力を発揮しています。

「理想は、お客様から頼まれてやるのではなく、頼まれなくてもいい環境をつくること。社員には自由な発想で、どんどん新しいビジネスを開拓していってもらいたいと思っています」

古民家カフェ〈TREE〉の入り口に並んだ運営スタッフ
2017年にスタートした古民家カフェ〈TREE〉。現在はMGNETから独立、法人化し、さらに活躍を広げる。(写真提供:TREE)

そんな武田さんの新規事業が、新潟県全域を対象とした、民間シンクタンク〈事業環境創造研究所 BEECL(ビークル)〉です。

「これまでの仕事を振り返ったときに『自分たちがやってきたことは、本当に正しいのか』そんな疑問が湧いてきました。正しいことをやっているはずという、漠然としたものではなく、これまでの事例をちゃんと分析し、どのように企業やまちに機能しているのかを構造化する必要があると感じたんです。将来的には、企業の事業拡大や地域経済の発展などに役立てる知識として、新潟県全域で共有できればと考えています」

インタビューを受ける武田さん
横浜商科大学で観光地のブランディングとコミュニティデザイン、新潟の開志専門職大学でコミュニケーションデザインの非常勤講師も務める武田さん。〈BEECL〉は、新潟大学経済科学部准教授である伊藤龍史さんと昭和女子大学グローバルビジネス学部准教授である髙木俊雄さんを連携研究員に迎え、研究を進めています。
趣味のカメラを手にする武田修美さん

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