豪雪地帯の日本三大薬湯
〈松之山温泉センター鷹の湯〉で旅の疲れを癒やす
もちろん、海沿いだけじゃなく山にも魅力がいっぱい。
山の奥深くにある松之山温泉の〈松之山温泉センター鷹の湯〉にも立ち寄りました。
7〜800年前、いつも同じ谷間に降りていく鷹を不思議に思った木こりがそこへ行ってみると、鷹が温泉で傷を癒していた様子を目撃した……という伝説がある、昔から評判の温泉です。
松之山温泉は日本三大薬湯のひとつ。
ハーブのような独特な香りと熱い温度が特徴的で、浸かっているだけで薬湯であることが全身で感じられます。
しかも、この温泉は1200万年以上前に大地の奥底に閉じ込められた海水が湧き出た温泉だと考えられており、舐めるとしょっぱいそう。日本でも珍しいタイプの温泉ですね。
ゆっくり浸かって、旅の疲れがぜーんぶ吹き飛んでいきました。
この場所は新潟の中でも有数の豪雪地。多い時は5メートルを超える雪が降るそうです。冬の、雪が積もってしいんとした夜にまた来てみたいな。きっと最高のひとっ風呂になることでしょう。
松之山温泉は温泉街になっているので、宿や食事処、お土産屋さんもいっぱい。丸一日ここでゆったり過ごすことが次回の目標です!
日本で一番古い飴屋〈髙橋孫左衛門〉。
食べたらトリコになるもっちり食感!
さて、私はいろいろな場所に行くので、よく友だちにお土産をあげるのですが、ここ1年のお土産でいちばん人気だったのが「翁飴」でした。
飴という文字が入っていますが、普段食べる飴とはちょっと違う食感。
翁飴は上越市高田地区に伝わる伝統的な飴で、300年もの歴史を持つ飴菓子です。
ひと口食べればすぐにわかる、でんぷん由来のほどよい甘さともっちりとした食感が特徴的。初めて食べたはずなのになぜか懐かしくて、トリコになるおいしさです。
このお店は日本で一番古い飴屋さんだというところも興味深い。
ほかにもさまざまなお菓子を購入させていただいたのですが、どれもおいしくってたまりませんでした。
ちなみに翁飴は高田城主が江戸へ参勤交代に行く時のお土産としても持参されていたそうです。本当に古くから愛されている味を今でも楽しむことができる贅沢さといったら。
昔の人たちもこれを食べていたんだと思うと、少しだけタイムスリップしたような気持ちになります。
飴が貴重なものだった頃、特別な日に家族みんなで食べたのかな。ひどく険しい旅の途中、大雨の中、洞窟に隠れながらひっそりとこれを齧った人がいたかもしれない。たくさん歩く参勤交代の道中、このお土産を持つ役目を任されていた人は、手元に抱えたこの甘くてやわらかい飴にむしゃぶりつきたくてたまらなかっただろうな……。
家に帰って、配りきれずに余った翁飴をかじりながら、そんな妄想を繰り広げます。すると瞼の裏に浮かんでくるのは、クルマ旅で寄った名所の数々。
クルマで走っている時に見かけた茅葺き屋根が美しいかつての宿場町、灯台の下にひっそりとあった暗い洞窟、荒波が打ち寄せる旧北陸道、美しい連なりが特徴的な棚田がある集落――。
こうして私は、新潟での思い出を抱きしめながら、2度目の旅をするのでした。
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Profile いとうみゆきさん
イラストレーター。埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。ウェブマガジン『カエライフ』で車中泊&アウトドアをテーマにしたイラストエッセイを連載中。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。X|@noca_m Instagram|@nmoytke Web|ito miyuki’s illustration