新潟のつかいかた

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何度でも何度でも来たくなる。
佐渡で気になるお店を巡る旅 Posted | 2023/02/10

旅の達人たちが、思い出深かった新潟旅を綴ります。彼女たちの目に映った風景・食・体験を追ってみましょう。第5回は、新潟県出身の『新潟のつかいかた』Instagram担当者が綴る、秋の佐渡旅です。

佐渡金山だけじゃない。いまの佐渡と出合う

みなさんは佐渡といえば何を思い浮かべますか?

私自身、子どもの頃に佐渡に行って以来、しばらく行けなかったので、「佐渡=佐渡金山」というイメージがずっと抜けませんでした。

でも、最近は古材を使ったおしゃれなカフェやオーシャンビューのレストラン、心地よさを大切にしたお店がたくさんあるのだとか。そんな“いまの佐渡”を体感するため、秋の佐渡へと足を運びました。

佐渡汽船のフェリーの船体

新潟から佐渡へ向かう約2時間半の船旅。1時間ほどで着くジェットフォイルではなく、カモメと戯れながらゆったりと過ごせるフェリーを選択。

最近は電車や飛行機に乗ると、すぐスマートフォンや本を開いてしまう私ですが、フェリーでは船酔いをしやすいので何もできません。デッキに出て写真を撮り、船内を散策し、ただ海を見る。そんな贅沢な時間を過ごせる移動手段は旅をより豊かにしてくれるのかもしれない。波に合わせて揺れるフェリーに身を預けながら、そんなことを考えていました。

近くをカモメが飛んでいる、フェリーからの日本海の景色

佐渡の両津港に着いたのは、お昼頃。レンタカーに乗ると、さっそく加茂湖の近くにある〈caMoco café 湖ASOBi〉へと向かいます。ここは牡蠣漁師が営むカフェで、11月末〜2月にかけては加茂湖でとれた牡蠣を使ったパスタが人気のお店。私が訪れた10月はまだ牡蠣の収穫は始まっていなかったので、代わりに佐渡で養殖している銀鮭を使った「鮭のプレートランチ」をお願いしました。

〈caMoco café 湖ASOBi〉の「鮭のプレートランチ」
佐渡産の食材をふんだんに使った、「鮭のプレートランチ」。1500円

箸を入れるとほろっと崩れる銀鮭。味が濃く、しっとりとした食感がたまりません。鮭に添えられたきのこのソテーには牡蠣バターを使っていて、牡蠣のエキスがたっぷり感じられる濃厚な味わい。今度はふっくらした牡蠣を食べにまた来たくなりました。

佐渡の海の風景

お腹がいっぱいになったら、車を30分ほど走らせて「あめやの桟橋」へ。

海にせり出すように桟橋がのびる「あめやの桟橋」
SNSで人気となった「あめやの桟橋」。秋の平日は人がまばらでゆっくりと景色を楽しめます。

着くとちょうど夕暮れ時で、細長い雲にかかる茜色が少しずつ濃くなっていく頃。刻一刻と変わるグラデーションにしばらく目を離せないでいると、砂浜で高校生たちが写真を撮り合い始めました。夕日を撮ったり、代わる代わる海を背景に撮影したり。美しい夕焼けと相まって、何気ない日常がドラマチックに見えた瞬間でした。

〈HOSTEL Perch〉の外観

海の景色を堪能したら、今回泊まる〈HOSTEL Perch〉へ。蔵サウナが有名なホステルで、全国からPerchを目掛けて佐渡を訪れる人もいるほど。サウナ内は120度以上になることもあり、サウナーから高い支持を集めています。

〈HOSTEL Perch〉のロビーに設置された薪ストーブ
薪ストーブがあり、暖かいロビー。カウンターで地元の人と飲み交わすこともできます。

断熱性の高い蔵サウナはほかのサウナよりも熱がこもる印象。その分、外へ出て水風呂に入ったときの気持ちよさが段違いでした。ふわふわとした高揚感を覚えながらサウナと水風呂、外気浴を繰り返しているうちに気づけば旅の疲れが消えていました。

心がほどける、佐渡の美しい景色とお店の数々

翌日は朝食を食べずに、こだわりのパンや料理が楽しめる〈しまふうみ〉へ。旬の佐渡産の食材をふんだんに使用したパンは、島の水と在来の菌で起こしたパン種の一種・ルヴァン種と、近くの農園でとれたりんごの自家製酵母でつくっています。

佐渡の魚介と野菜を使った「佐渡ジオパークプレート」

お腹が減っていた私が頼んだのは、佐渡の魚介と野菜を詰め込んだ「佐渡ジオパークプレート」(1300円)。グリルされた野菜はジューシーで、キッシュはしっとり。ポタージュは野菜本来のやさしい甘さが表れていて、ひと口飲み進めるごとに心がほぐれていくようでした。

赤いパラソルが用意された〈しまふうみ〉のテラスベンチ席

目の前は、地中海のように穏やかな真野湾。佐渡の食材にこだわった料理を食べながら海を見ていると、気持ちがスッと晴れやかに。心も体も元気になれるしまふうみは、「佐渡を訪れたらまた来たい」と思わせてくれる大切な場所になりました。

〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉外観

お腹がいっぱいになったら、里山の風景の中を〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉へと車を走らせます。米山 耕(たがやす)さんが営むこのお店の人気メニューは、まんまるの見た目がかわいらしい素朴なドーナツ。飾り気のないドーナツに惹かれ、リピートする人も多いそうですよ。

袋に入った〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉のドーナツ

油っぽさを感じさせないシンプルな味わいで、1個食べるとすぐに次が食べたくなるおいしさ。気づけば5個入り(プレーン550円)の袋が空になってしまっていました。

〈本と雑貨 ニカラ〉の外観
元油屋の倉庫をリノベーションした〈本と雑貨 ニカラ〉。

そんなタガヤス堂の近くには、米山さんのパートナーの幸乃さんが営む〈本と雑貨 ニカラ〉がひっそりと佇みます。人文系を中心にエッセイや小説などの読み物、実用書、絵本などが並んだ新刊書店です。最初は幸乃さんが好きな本をセレクトしていたものの、来てくれた人と話しているうちに佐渡暮らしに根ざした本が増えていったのだとか。

『柿のお菓子づくり』などが並ぶ店内の本棚
お店がある羽茂(はもち)は柿の名産地。

お店を始めてから来てくれた人のこと、集落の人との会話、ご自身の今までのこと。周りも自分も大切にして生きている幸乃さんの姿に、これからの生き方のヒントを見つけたような気がしました。

〈トキブルワリー〉の入口

今度は港の方向へと車を走らせ、佐渡で初めてできたクラフトビールのブルワリー〈t0ki brewery (トキブルワリー)〉へ。お店でつくられたビールもあれば、県外のビールもあり、さまざまなビールを飲み比べて楽しむことができるお店です。

箱詰めされた〈トキブルワリー〉の缶ビールセット

このときは車で来ていたので、お土産にトキブルワリーの缶ビールを購入。家に帰って飲んでみると、ホップの苦味とカラッとした喉越しが程よく、IPA好きにはたまらない味わい。今度はバスで行って、その場で飲み比べをしてみたくなりました。

四角い形のチーズケーキとバスクチーズケーキ

最後に両津港から車で10分ほどの〈チーズケーキと焼き菓子のお店 ma_ma〉へと向かいます。オーガニック素材でチーズケーキをつくるお店で、子どもが安心して食べられるようにと、砂糖もできるだけ少なめ。ショーケースには四角い形のチーズケーキやバスクチーズケーキ、旬の果物を使ったカッサータが並んでいます。

様々な種類が並ぶ〈チーズケーキと焼き菓子のお店 ma_ma〉のショーケース

四角いチーズケーキは、なかなか市場に出回らないチーズを使ったオリジナルの「チーズケーキ」とカカオ80%の超濃厚な「ショコラ」、ミルクチョコと濃厚マスカルポーネを使った「ミルク&チーズ」、ホワイトチョコとチーズを掛け合わせた「ホワイトチョコ」の4種類。悩んだ挙句、オリジナルとショコラ、バスクチーズケーキを購入し、フェリー乗り場へと向かいました。

フェリーからの両津港の風景

たくさんのお店に出合えた旅も終わり。船の汽笛が鳴り、少しずつ遠くなる佐渡を見ていると寂しい気持ちになると同時に「また来よう」と自然と思っていました。一度訪れると、また何度でも訪れたくなる。それが佐渡の一番の魅力なのかもしれません。

『新潟のつかいかた』のロゴ

Profile 『新潟のつかいかた』Instagram中の人

『新潟のつかいかた』のInstagramを運営する、新潟県在住スタッフ。カフェやレストラン、絶景など、毎週金曜日に新潟県内のおすすめスポットを投稿している。趣味はカフェ巡りで週末はどこかしらのカフェに出没。古民家をリノベーションしたお店には目がない。Instagram|@howtoniigata