新潟のつかいかた

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新潟県酪農発祥の地へ。
〈神田酪農〉で牛と触れ合い、
〈ヤスダヨーグルト〉で
生乳の恵みを味わう旅 | Page 2 Posted | 2025/10/31

人と牛が寄り添うように暮らす〈神田酪農〉

まずは、牛のモニュメントから車で約3分、田んぼに囲まれた場所にある〈神田酪農〉を訪れました。

もともと稲作農家が多い阿賀野市では、住宅のすぐ隣に水田があり、牛舎も同じく隣にあります。集落の外れに住み、田んぼで育てた牧草を牛のエサにするという水田と酪農を合わせた酪農のやり方は、この土地ならでは。広大な土地で放牧されて育つ酪農のイメージとは違い、人と牛が寄り添うようにして暮らす光景を初めて見た人は、きっと驚くのではないでしょうか。

田んぼの景色の中に〈みるぱす〉が見えてきた
国道から六野瀬の交差点を曲がり小さな路地を進んでいきます。少し奥まった場所にあるので、迷わないように注意。

そして、牛舎のすぐ隣には〈神田酪農〉が運営するソフトクリーム&ジェラートショップ〈みるぱす〉があります。搾りたての生乳を使ったソフトクリームを看板商品として、阿賀野市産をはじめとした新潟の季節の果物や野菜を使ったジェラートを提供しています。

〈みるぱす〉の看板
お店の名前は「MILK PASSPORT」の略。

大切に育てられた牛の搾りたて生乳をたっぷり使用した「ミルクソフトクリーム」は、お店の一番人気。濃厚なのに、さっぱりした後味が印象的な味わいです。

〈みるぱす〉で購入したソフトクリーム
ソフトクリームは「ワッフルコーン」または「メープルコーン」、カップから選べます。

また、自社生乳100%のオリジナルブランド〈やすだ愛情牛乳〉も見逃せません。一般的に自社のみの生乳で牛乳をつくるのは難しいのですが、〈みるぱす〉では〈神田酪農〉が搾った生乳からのみつくられた牛乳を味わうことができます。

パック入りの〈やすだ愛情牛乳〉とカップに注いだ牛乳
さっぱりした飲み口なのに生クリームのようなコクがあります。

〈やすだ愛情牛乳〉を贅沢に使ってつくる濃厚ジェラートは、季節ごとにフレーバーが変わるので、訪れるたびに違った味を楽しめます。

様々なフレーバーのジェラートが並ぶショーケース
〈越後姫〉のいちごミルクや自家製枝豆のフレーバーも。

乳牛たちは神様からの贈り物

〈神田酪農〉の創業は1920年(大正9年)。3代目である神田豊広さんの祖父・豊松さんは〈六野瀬地区牛乳販売利用組合〉の発足メンバーのひとりでした。「酪農の神様」と呼ばれ、乳牛の飼育に限らず分娩や病気治療にも携わっていたのだとか。

その後、2代目を受け継いだ豊広さんの父・豊三さんがヒルツ系の乳牛を血統登録。豊広さんは自社の牛から生産される生乳だけでつくるブランド牛乳〈やすだ愛情牛乳〉を商品化しました。

「小さいときから当たり前に牛がいる生活でした。牛たちはそれぞれ性格が全然違って、最初は人間に対する警戒心が強い子も多いです。小さかった仔牛が今度は母親になって、また子を産む姿は何度経験しても言葉で言い表せません。家族と同じなんですよね。大事な家族がつくってくれる牛乳は本当においしいですから、このおいしさをもっと広めていきたいですね」

と豊広さんが〈やすだ愛情牛乳〉への思いを語ってくれました。

仔牛の喉をさする豊広さん
一頭ずつやさしく声をかける豊広さん。安心しきった様子で仔牛たちは甘えていました。

〈神田酪農〉では「大きな愛情を持って乳牛を育て、『とってもおいしい愛情牛乳』をお客様に提供すること」を理念に、水や餌、飼育環境にこだわり、家族同様に牛と接することで信頼関係を築いています。

牛舎内でたくさんの牛が牧草を食べている
昨今の猛暑に備え、一頭一頭が水浴びをできるようにシャワーを設置したそう。

また、〈神田酪農〉は2019年に農場HACCP(ハサップ)認証を取得しています。農場HACCPは食品の安全性を確保するための衛生管理システムのこと。畜産を取り巻くトラブルや事故を未然に防ぐために作業をマニュアル化し、安心・安全な畜産物を提供できるよう努めています。

牛舎には藁やもみ殻が敷き詰めてあり、常に牛床が乾燥しています。風通しが良く、衛生管理を徹底しているので牛舎特有の臭いをほとんど感じません。

〈みるぱす〉は楽しい酪育の場の入口

お店の名前〈みるぱす〉(MILK PASSPORT)には、酪農を体験する楽しさを知ってもらうための「 楽しい酪育の場の入口」という意味が込められています。

「こどもたちは牛乳がどうやってできているかや酪農についてなど、ほとんど知る機会がない。みなさんに牛乳のこと、酪農のことをもっと知ってもらえたらと思っています」と豊広さん。

そのため、〈神田酪農〉では牛舎の一部を開放しており、かわいい牛たちやスタッフの作業風景を見ることができます。また、定期的に酪農見学会を実施したり、餌やりや搾乳などの体験教室を開催したりすることもあります。

食事中の乳牛たち
約80頭の乳牛が育てられています。

〈神田酪農〉では、年間50頭ほどの赤ちゃんが生まれるそうです。愛情たっぷりに育てられ人懐っこい仔牛たちは、人が近づくと興味津々に寄ってきてくれます。

「写真OK 頭なでるOK」と書かれたプレート
触れ合いがOKなのもうれしいポイント。

餌やり体験ができるのは、大人になる前の仔牛たち。餌をあげてみると、勢いよく食いついておいしそうに食べてくれました。

取材チームが餌やり体験中
餌を引っ張る牛の力強さに驚くかもしれません。

〈神田酪農〉では地域循環型の環境保全型農業を推進し、自社で栽培した牧草で牛を育てています。牛の糞尿と稲わらでつくった堆肥を畑や牧草地に撒き、栄養たっぷりの牧草を栽培しているのです。

また、牧草だけでなく、私たちが食べている食用米と同じ栽培方法で育てた飼料用稲も与えています。稲が完熟する前にモミと茎葉を丸ごと刈り取り、密封して発酵させることで、おいしく質のいい餌になるそうです。

飼料用稲を手にしている
農場内に積まれていた飼料用稲は上越市から届いたもの。牛も喜ぶ新潟県産のお米です。

愛情たっぷりに育てられた牛たちと実際に触れ合ってみると、〈やすだ愛情牛乳〉やソフトクリームもさらにおいしく感じます。〈みるぱす〉を訪れた際は、ぜひ牛さんたちと触れ合ってみてくださいね。

Information

【ソフトクリーム&ジェラートショップ みるぱす/株式会社神田酪農】
address:新潟県阿賀野市六野瀬331
tel:090-4917-0429/0250-68-4652
access:磐越自動車道「安田IC」より車で約5分
営業時間:11:00〜16:00 ※土・日曜、祝日 10:00〜17:00
定休日:水曜、年末年始
駐車場:15台(無料)
web:神田酪農

ヤスダヨーグルトの生産工場の内部で、ボトルがたくさん流れている

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