選手たちが思うBMXフラットランドの魅力とは?
フラットランドの練習は地道で、コツコツ積み上げるしかないと話す悠選手。「でも、技を成功させたときの達成感がたまらない。その瞬間があるからやめられない」と笑顔を見せます。
世界的に日本勢が強い理由も、「細かい技の連続だからこそ、粘り強く練習するところが日本人の特性に合っているのかもしれません」と亮選手は話します。
一方、早川選手がBMXを知ったのは12歳のとき。父にBMXのYouTube動画を見せてもらったことがきっかけでした。ダイナミックな技のカッコよさに衝撃を受け、BMXを始めるも、当初はパークだったため練習できる環境が限られていたそう。続けること自体を躊躇していたときに、片桐兄弟がやっていたフラットランドの存在を知り、「こんな競技があるのか!」と夢中になっていったといいます。
「フラットランド用のBMXに買い替え、亮さん、悠くんとよく一緒に練習させてもらいました。動画を見て研究して、亮さんのところに行って教えてもらって。身近に教えてくれる存在がいたから、次々と新しい技に挑戦できた。誰もやったことのない技を成功させて、人を驚かせたい!という思いがどんどん強くなっていきました」(早川選手)
フラットランドの大会では、この技をやれば何点、といった明確な基準はありません。審査員を務めるレジェンドたちが、繰り広げられる技をどうジャッジするかがすべて。そのあいまいさは競技としての課題でもあり、おもしろさでもあると早川選手は話します。
「選手ひとりひとりが持つスタイルや独創性がどう評価されるか。これをやれば勝てる、という正解がわからないからこそ、どんな技を披露しようかという試行錯誤がおもしろいんです。審査員を唸らせる玄人向けの細かい技もあるけれど、僕は、せっかくやるならBMXを初めて見る人がびっくりするような技を見せたい。フラットランドを好きになってくれる人を少しでも増やしたいなと思っています」(早川選手)
戦いの後はお互いをたたえ合う
選手同士がたたえ合うカルチャーも、エクストリームスポーツの魅力のひとつです。
優勝者を、ほかの選手が胴上げするシーンは、一般的なスポーツ競技ではなかなか見られない光景でしょう。相手をたたえ、尊敬する気持ちは、海外の選手から教わることも多いといいます。
「バトル形式の大会では、相手の選手がいい意味で煽ってくれるからこそ、本来以上の力が出ることもあります。戦っているけれど、技が成功すれば喜んでくれ、盛り上げてくれるんです。技がなかなか評価されずもどかしいこともありますが、どうしたら伝わりやすくなるのかを探究できるのもフラットランドの奥深さ。まだまだ、自分なりの技を磨き続けます」(早川選手)
早川選手は4兄妹の長男。2つ下と8つ下の弟もライダーとして、兄の背中を見ながら活躍を続けています。自身の活躍が「日本のBMXフラットランド界をリードしていく」と、自覚と責任が芽生えてきたと話します。
「フラットランドを始める年齢層がどんどん下がって、キッズライダーが生まれています。自分が活躍することで、次の世代にいろんな選択肢を広げていきたい。長岡で、ライダーの先輩たちが教えてくれ、土台をつくってきてくれたから今の自分がある。その感謝を、弟たちを含め、子どもたちにつなげていく役割があるなと感じています」(早川選手)
2028年のロサンゼルス五輪では、BMXフラットランドの正式競技採用が期待されています。日本代表を目指し活動を続ける片桐悠選手、兄妹とともに競技を牽引していく早川選手をはじめ、新潟勢の若い世代の活躍からますます目が離せません。
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credit text:Rumi Tanaka