火気厳禁! 打ち揚げ花火の玉づくりの現場を歩く
〈小千谷煙火興業〉の敷地内を歩き、製造工程を追ってみました。
歩き出すと、まず目に飛び込んでくるのは分厚いコンクリートづくりの建物群。高くそびえる避雷針や「火気厳禁」の立て札も各所にあります。
火薬を扱っているため、万一、引火してもほかには被害が出ないように、製造の工房や貯蔵庫などは複数に分けて管理しているといいます。冬場や春先はニット類の静電気にも細心の注意を払うというから、まさに命がけの作業。
「作業をしながら考えるのは、無事に揚がるように、きれいに丸く開くように、ということです。机に向かって作業するからデスクワークに近いけれど、常に緊張感があるという意味では珍しいかも。気持ちを引き締めながら、ひと粒ひと粒並べていきます」
いつまで経っても難しいと思う工程は? と尋ねると、「やっぱり『星』の配合かなあ」と瀬沼さん。「星」は、色の組み合わせやトーンを変えたり、点滅させたりと無限にデザインできるからこそ、おもしろくて難しいといいます。
「よくいわれるのが『男性は形を見る、女性は色を見る』ということ。花火師というと男性のイメージが強いかもしれませんが、女性もいて、デザインする際は貴重な意見を出してくれます。聞けば、女性って男性の3倍以上の色彩が見えている人もいるそうですね。僕は女性ほど色の違いがわからないので、やっぱり花火師は男女どちらも必要です」
さて、玉の中身を詰め終わったら、「玉はり」の工程へ。専用の作業場では、この道20年のベテラン・篠塚和美さんが10層目の紙を貼っているところでした。乾かしては貼り、貼っては乾かし……を繰り返して、玉の強度を上げるといいます。
紙を貼り終えた玉を持って、篠塚さんが向かったのは「乾燥室」。ポカポカと温まった棚の中には、大小さまざまな玉が並んでいました。
こうした工程を経て、完成した花火は貯蔵庫へ。中をのぞいてみると、「今(10月上旬)はほとんど空っぽです。今年の花火は打ち尽くしました」という瀬沼さん。これからまた夏に向けて、貯蔵庫いっぱいに花火を蓄えていくのだそうです。
ワンシーズン分の花火をつくるのに、かかる期間は10か月。冬場は数メートル積もった雪を掘り進み、作業場に入り、静電気に気をつけながら根気よく作業を続けて、夏に日の目を見るまではガマンの日々だとか。
「本当に好きじゃないとできない仕事です。今、うちに勤めてくれているスタッフも、花火が好きな人ばかり。『日本一になろうな!』と、いつもみんなで話しています」