ほかにも訪れたい! 人気の常設作品
常設のなかには更新され続けている作品もあります。絵本作家の田島征三の作品で、十日町の集落「鉢」にある廃校をアートで再生した『鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館』もそのひとつ。
「空間絵本」をコンセプトとして、2009年、最後の卒業生3人を主人公とした絵本『学校はカラッポにならない』を描き、流木のオブジェなどで立体的に表現して常設。2014年にはビオトープを制作、2018年には木工沈床という技法で小川を造成するなど、環境づくりにも力を入れてきました。
「生きもののケハイのする美術館」として、この夏秋には日本固有種の魚、シナイモツゴに光を当てた企画展『いのちのケハイ~とわちゃんとシナイモツゴの物語~』を開催。小さな命も芸術として表現する美術館です。
廃校を再生した常設作品では、クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン『最後の教室』も不動の人気。闇の中に響く鼓動、点滅する光。地域の記憶を呼び覚ますようです。
なお、ボルタンスキーは2021年7月に惜しくも逝去しました。生前のプランを実現した新作はレポート後編で紹介します。
さて、「泊まれるアート」も複数ありますが、第1回の芸術祭で制作されたジェームズ・タレル『光の館』では唯一無二の体験ができます。宿泊者は、日の出と日没の時間に合わせて、自然光と天井に映し出されるLED照明による「光の演出」が鑑賞できます。移り変わる空の色、闇の中の光のバスタイムなど、日常から離れてゆったりと過ごせます。
また、常設のなかでもひときわシンプルで普遍的な、内海昭子『たくさんの失われた窓のために』にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。窓枠を思わせる、風になびくカーテン。覗いてみると、まさに絵画のように切り取られた越後妻有の風景に出合えます。天候や季節、時代の流れなどにより、ひとつとして同じ景色はないのです。
そしてもちろん、いまや芸術祭会期中に限らず定番の人気スポットとなった清津峡渓谷トンネルにある『Tunnel of Light』も。詳細はこちらの記事をどうぞ。
大地の芸術祭のアート作品は、妻有の自然や歴史、人々の暮らしなどとともに見るとより記憶に残る体験となります。後編ではまだまだある新作に焦点を当てて紹介しますので、お楽しみに。
Information
【越後妻有 大地の芸術祭 2022】
会期:2022年4月29日(金・祝)~11月13日(日)
開催地:越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)
鑑賞時間:10:00~17:00(10・11月~16:00) ※施設によって異なる場合あり
定休日:全日程を通して火・水曜
web:越後妻有 大地の芸術祭
credit text:白坂由里 photo:ただ(ゆかい)