里山とアートを巡る〈越後妻有 大地の芸術祭 2022〉。11月13日まで、新潟県十日町市と津南町からなる越後妻有(えちごつまり)地域で開催中です。7月30日からは、常設210点と新作・新展開123点を合わせた計333点の作品がすべて公開され、そのうち新作では13の国と地域から95組のアーティストが参加しています。
前編に続き、後編ではさらに新作をピックアップ! 大地の芸術祭は何度も訪れたことがあるというリピーターの方も、今期注目の新作をぜひチェックしてみてください。越後妻有地域を6つのエリア「十日町」「川西」「中里」「松代」「松之山」「津南」に分け、多様なアート作品を紹介していきましょう。
松代城が現代アートの異空間に!【松代】
まず新作で驚かされるのは、かつて上杉謙信が春日山城の支城として活用したとされる十日町市地域指定文化財の「松代城」がアート空間に変貌していること! 農舞台を中心に野外アートが点在する「城山(じょうやま)」、その中腹にある駐車場から徒歩約15分の坂道を登ると松代城が見えてきます。
標高384メートルのプチ登山で息を切らすも、城に入ってすぐ、エステル・ストッカーの『憧れの眺望』に目を奪われます。自然と人間性の対比をテーマとし、規則的な格子状のグリッドの空間に、紙をくしゃくしゃと丸めたような不規則な彫刻が浮いている……。不思議な揺らぎを覚える作品です。
3階は、鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志による『脱皮する時』という空間作品に変貌しています。
2006年の作品『脱皮する家』と同様に彫り尽くされた床、自らの姿が映り込む黒く塗られた天井と壁。四方に開かれた丸窓からは自然豊かな風景が一望できます。金箔の貼られた礼盤に腰掛け、時の流れを感じてみてはいかがでしょうか。
大地の芸術祭では、少子高齢化・過疎化で増え続ける廃校や空き家をアートで再生してきました。国際的に活躍する川俣正が仲間とともに、旧清水小学校の建物をアーカイブ/ライブラリー施設に変えてきた〈妻有アーカイブセンター〉もそのひとつ。
今回は、建物外壁に、工事用フェンスを横向きに添わせたダイナミックな新作インスタレーションを展開しました。雪囲い(雪対策)にもなり、通年で公開予定です(妻有アーカイブセンターは9月4日まで)。
館内では、これまでの大地の芸術祭の全ドキュメント、川俣の1980~2005年の活動資料、批評家・中原祐介の約3万冊の蔵書を保存し、閲覧もできます。
また2階の体育館スペースにアトリエを構築し、併設のアートギャラリーでは過去のプロジェクトを含むマケット(模型)や記録を展示。また、秋山伸率いるデザインと出版社〈edition nord(エディション・ノルト)〉がライブラリー&ショップを展開しています。
また、蓮池ももは、2009年の芸術祭で制作ボランティアをしていた縁で、新潟市から十日町市に家族で移住し、今回アーティストとして初参加。空き家を会場として、米づくり、子どもの誕生といった、移住してからの約3年間の出来事を描いた絵巻物などを展示しています。
【 次のページ:リサーチから蘇る
地域の記憶|十日町・川西 】