リサーチから蘇る地域の記憶【十日町・川西】
磯辺行久は、2000年の第1回の芸術祭から妻有の歴史の地層を掘り起こしてきました。今回は、十日町と松代にかつてあったふたつの同じ名前の集落、小貫(こつなぎ)集落をリサーチし、閉村に至る経緯や農村地域が果たした役割に注目。
十日町の小貫集落では、集落の要であった農協跡を中心に直径300メートルの範囲で往時の表土面を露出させました。そのままでは草木が生い茂って藪のようになってしまうところに道を出現させて黄色いポールを立てることで、かつてここにあった人々の営みを想像させます。
なお、松代では『消えた集落 閉村の碑からよみとるもうひとつの理由』として展示。日本の行く末についても考えながら辿ってみましょう。
十日町市の市街地に近い新座(しんざ)や七和地区は今回、大地の芸術祭に初参加。深澤孝史は、新座の田畑を開発してできた新しいコミュニティ「七和地区」をリサーチしました。
昔からの行事を続けながら新たな取り組みにも積極的な同地区。その原動力は、一見厄介な「雪」にあると感じ、新座で開発された〈クマ武〉のスノーダンプ(除雪具)を組み上げ、力強いタワーを構築しました。
その新座の名家を会場とした中﨑透は、この家に関わる5組6名へのインタビューをもとにさまざまなエピソードを散りばめ、空間を再構成しました。
妻有の空き家は、まるでさっきまで人が住んでいたかのように家具や荷物もそのままの場合が多く、制作はまず掃除から始まります。織物業で栄えた頃を物語る品々、家主の収集品などを、ライトアートなどの自作と一緒に展示。代々住み継いだゆえの一筋縄では収まらないストーリー。家とは誠に多面体であることを浮かび上がらせています。
このあたりで野外で少しのんびりしてみましょう。川西エリアの〈ナカゴグリーンパーク〉の芝生広場には、約25人の若手作家が手がけた動物彫刻が点在。廃材など素材を生かした彫刻、重量のある彫刻など、子どもにもおすすめです。
近年では災害にもつながる「雨」ですが、水の循環を表す美しい現象でもあります。雨の日に小さな水たまりを眺めていて発想したという小松宏誠のインスタレーション。空中に大量の水が浮かび、雨となって地上に降り注ぐまでの旅を、プラスチックで制作した透明な無数のオブジェで表現しました。川西エリアの空き家の1階と2階に展示。
【 次のページ:ボルタンスキーの遺作も。
自然とともに暮らす人々|松之山・中里・津南 】