新潟から発信される、世界レベルのニット技術
新潟県のほぼ中央に位置し、良質な水資源に恵まれた五泉市。江戸時代から戦前までは、京都の丹後、滋賀の長浜と共に「全国三大白生地産地」として、絹の織物産業で栄えた五泉市。現在では婦人ニット製品の生産で日本一を誇る “ニットのまち”として知られています。
糸の染色にはじまり、ニット生地の編み立てから縫製、そして加工まで、さまざまな工程を経て完成するニット製品。五泉市には各工程を担う工場がそろっており、工場同士が連携し合うことによって、市内だけでニット製品を完成できるという、ニットの産地としてほかにはない大きな強みを持っています。
また、長年培われてきた編立技術と縫製力も、五泉市でつくられる五泉ニットの特徴。ほかの産地では難しいとされる細い糸を使っての編立や、布はくなどの異素材とニットを組み合わせる製品を得意とし、その高い技術力にほれこむデザイナーも多いのだそう。
五泉ニットをさらに知るなら
Gosen Knit 五泉ニット工業協同組合(オンラインストアもあり)
現在では五泉ニットならではの魅力を生かした、市内の大手メーカーによるファクトリーブランドも登場しています。その中でもひときわ目を引くのが、高い技術力と洗練されたデザインが融合した、〈ウメダニット〉によるブランド〈WRAPINKNOT(ラッピンノット)〉。
独自のコレクションだけでなく、有名セレクトショップとのコラボレーションも数々手がける〈WRAPINKNOT〉。ファッションの流行に敏感な方なら「〈奇跡のニット〉シリーズを手がけているブランド」と聞けばピンとくるかもしれません。
新技術の導入で広がった“ニット”の可能性
1947年に〈ウメダメリヤス〉として創業し、1961年に現在の社名となった〈ウメダニット〉。ニット素材の開発から縫製まで一貫した生産体制を持ち、五泉市の中でも最大級の規模を誇るニットメーカーです。その基盤ができたのは、ニットの新技術の導入がきっかけだったそう。
「70年代から80年代にかけて、大手アパレルメーカーさんと組んで、当時ヨーロッパで確立されていたパターンドニットの手法を学ぶ機会があり、それが会社としての飛躍となりました」と教えてくれたのは〈WRAPINKNOT〉のディレクターであり、〈ウメダニット〉の3代目でもある梅田大樹さん。
それまで主流だったのが、袖や身ごろの形に編まれたパーツを縫い合わせて、一着のニットに仕立てる手法でした。それに対しパターンドニットは、四角く編んだニット生地にパターン(型紙)をあてて裁断するという、まったく新しい手法。
このパターンドニットによる立体裁断仕立ての確立により、トップスだけでなく、パンツやスカートなどをニットでつくることが可能に。“ニット”という素材による表現や可能性がグンと広がっていったのでした。
「いろいろなアイテムがつくれるように〈ウメダニット〉の技術や設備が拡大していったのが、この時期だったと聞いています。ただ当時はニットよりもコートやジャケットといった縫製の仕事のほうが多く、昔の〈ウメダニット〉を知らない人には『なんで社名が“ニット”なのですか?』と聞かれることもあったそうです」
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