新潟の土と穴窯を使って、新たなうつわづくりを
うつわづくりは、こちらの工房とお爺様から譲り受けたという一軒家を改装した自宅で行っています。
さらに、阿賀町の三川に穴窯も所有する育男さん。登り窯よりも古いタイプである穴窯。大きな窯の中で松の木を使って焚き火をし、それによって生まれる灰が土にかぶさって溶け、釉薬になるといった構造。伝統的な「信楽焼」や「備前焼」によく用いられる作陶方法です。
「これが〈青人窯〉のうつわ、というスタイルが築けたのが3年前くらい。やっとひとつめのステージをクリアした感じです。次の目標は、穴窯を使って納得のいくうつわがムラなくつくれるようになること。穴窯は焼成に1~2週間程度かかるので、普段使いというより作品としてのうつわになりますが、穴窯じゃないと絶対に出せない趣きや質感があるんですよ。それをコンスタントにつくれるようになりたいです」(育男さん)
完全に自然相手の穴窯。火を炊く作業は、人がつきっきりになっていないと行えない大変な作業です。穴窯で焼くうつわには、育男さんが県内のさまざまなところで掘り起こし、自身で精製した土を使っています。
実用性のある定番のうつわづくりと、趣味に近いうつわづくり。〈青人窯〉を構えて8年、現在はそのふたつのすみ分けがうまくできていると育男さんは語ります。
前述の通り、育男さんがつくるうつわは、使いやすく、盛りつけた料理が美しく映えることを大切にしたもので、大山家の食卓にも毎日並ぶそうです。
料理を盛りつけた〈青人窯〉のうつわは、静から動へ、いきいきと命を得た感じ。素材を生かしたシンプルな料理から、洋食、エスニック料理まで、どんな料理もしっかりと受け止めてくれます。もちろん、和食にもぴったり。ほかにも、大山家ではハンバーグや具だくさんのスープを盛りつけて、“食とうつわの関係”を楽しんでいるそう。
暮らしになじみ、土の持つあたたかい風合いで食卓を豊かに彩る〈青人窯〉のうつわ。金・土・日曜は、電動ろくろを使った陶芸体験や、薪窯焼成まで楽しめる会員制の陶芸教室も開催しています。新潟の自然の恵みを受けて生まれた陶器の数々、ぜひその手で触れてみてください。
Information
credit text:新潟Komachi 河野文香 photo:中田洋介