新潟のつかいかた

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【上越エリア
ワーケーション座談会】
個性的なワーケーションと、
これからの働き方 Posted | 2023/03/31

ワーケーションの認知はコロナ禍で急速に広まり、もはや珍しいものではなくなりました。その一方で、「バケーション」の部分が強調されて言葉がひとり歩きし、偏ったイメージを持っている人も少なくないかもしれません。

そこで妙高市、糸魚川市、上越市でワーケーションに関わる3人の先駆者たちをお招きし、上越地域におけるワーケーションの現在地とこれから、さらにはワーケーションの本質を探る座談会を開催しました。

参加者は、〈一般社団法人妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会〉の竹内義晴さん(妙高市)、〈株式会社イールー〉の伊藤薫さん(糸魚川市)、〈株式会社北信越地域資源研究所〉の平原匡さん(上越市)の3人です。モデレーターは新潟県知事政策局地域政策課地域づくり支援班主任の桝潟晃広さんが努めました。

座談会に参加した3者
左から、〈一般社団法人妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会〉ワーケーションコーディネーターの竹内義晴さん、〈株式会社イールー〉代表取締役の伊藤薫さん、〈株式会社北信越地域資源研究所〉代表取締役の平原匡さん。

3人が語る、上越ワーケーションの現在

ーーまずは、みなさんがワーケーションに携わるなかで感じている手応えや困りごとについて教えてください。

竹内義晴(以下、竹内) ひと言で言うと「簡単ではなかった」ですね。幸いなことに、僕は地元にいて地域の課題を感じているから「やらなきゃ」という気持ちになれるけれど、コロナ禍が始まった頃はめちゃくちゃ大変で、周囲には何を言っても響かない状況でした。
それでも、コロナ禍で働き方が変わったことで「そういう働き方があってもいいよね」と少しずつ理解されてきた感覚はあります。

伊藤薫(以下、伊藤) 糸魚川市にいらっしゃる方の場合、ワーク+バケーションという感覚でいらっしゃる方はそれほど多くありません。テレワークができる人にとっては、それが自分のオフィスであっても糸魚川市のワーク施設であってもそれほどパフォーマンスは変わりません。ただ、おいしいものがあったり、その地域にいたから会える人に会えたり、地域ならではの課題に対して価値を発揮できる結果「この場所に自分は必要とされている」と感じてもらえたりすると、それから繰り返し足を運んでもらえる気がしています。
ワーケーションで外から人が来ることで、地元の人にとっても新しい働き方やライフスタイルが伝わっていくといいなと思っていますが、そこはまだまだ時間がかかると感じています。

平原匡(以下、平原) 地元の中小企業からこの2〜3年間でよく聞いたのが、「ワーケーションなんて、うちの会社はそんなお立場にはなれませんから」という言葉です。「お立場」って何だろうと思ったら、ワーケーション=ゴルフだと思っているんですね。つまり、役員さんたちの余暇でしょうと。バケーションの部分だけが強調されている。
でも、竹内さんや伊藤さんの話を聞いていると、ワーケーションは普通の働く人たちの話であって、ライフスタイルの延長でいいんだということがやっと若手のなかから出てきたと感じます。

〈フルサットアップス〉の入口
座談会は、起業やスタートアップ支援などを行う〈FURUSATTO UPS(フルサットアップス)〉にて開催されました。

ーー確かに、「ワーケーション」という言葉だけがひとり歩きしているような状況が見受けられますよね。ワーケーションには3つのグラデーションがあると感じています。どのように外から人に来てもらうか。外から来た人と地域をどう混ぜるか。そして地域の働き方・学び方をどう変えるか。ワーケーションとは、ひいては働き方、学び方の可能性や、選択肢を広げていくことだと思います。

竹内 現実問題として、テレワークを主体とした働き方をできる人とできない人の差はあると思っています。ただ、例えば雪国の人って、大雪が降っても当たり前に出勤しますよね。朝5時に起きて渋滞覚悟で行く人が多い。そこまで苦労しなくてもいいと思うんです。がんばるべきはそこではないから。
ただ、働き方の幅は少しずつ広がってきた気もしています。東京ほどではないけれどもコロナ禍で在宅勤務する人も増えて、必ずしも毎日会社に行かなくていいかもしれない。多くの人がそう考えるようになれば、こうした働き方も馴染んでいくのではないかと思っています。

平原 都市部だけでなく、もっと地元の企業がワーケーションを取り入れてもいいのではないかと考えています。上越市の人が糸魚川市でワーケーション体験をしたっていい。

伊藤 すごくいいですよね。私、糸魚川市の企業さんに糸魚川市のワーケーションプログラムを試してほしいんです。最近、妙高市では地元企業さんから問い合わせがあったんですよね?

竹内 そうですね。「自分のいる地域をもっと好きになりたい」という問い合わせがあってうれしかったです。そういうことがもっとできるようになればいいですよね。昔、研修合宿ってあったじゃないですか。あの延長でやれないかなと。

コンテナを利用した商店街〈FURUSATTO〉の内観
〈FURUSATTO UPS〉は、上越妙高駅から徒歩1分の〈FURUSATTO〉というコンテナ商店街のなかにある。

ーー遠くに行かなくても、隣のまちに行くだけでじゅうぶん日々の環境は変わりますもんね。

平原 そのときに、幹事がものすごくストレスを感じることになるので、それを緩和してあげる翻訳家のような存在が必要なんですね。竹内さんや伊藤さんのようなコーディネーターが間に入って、場所の選定や合宿の目的設計をやってあげられるといいと思います。企業合宿のようなかたちをとることができれば、企業としては、人材育成として予算を出すことができるわけですしね。

竹内 僕らがやっているのは、ある意味ではその外注ですよね。あれを会社で幹事ひとりでやるのはめちゃくちゃ大変だと思います。

コンテナを活用した商業施設〈FURUSATTO〉外観

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