きのこの一大産地、魚沼エリア
秋の味覚のひとつである「きのこ」。しいたけ、えのきたけ、ぶなしめじ、まいたけ、なめこ、エリンギ……など、香りと食感は種類によってさまざまで、レシピに加えるだけでそのひと皿の味わいを豊かにしてくれます。
そんなきのこの生産量が全国2位(平成29年・特用林産物生産統計調査)の新潟県。夏場でも冷涼な気候に加え、冬の間雪に覆われる土地柄、冬場の産業として室内でできるきのこ栽培が盛んになったといわれています。
なかでも、魚沼市、南魚沼市、十日町市、津南町からなる魚沼エリアは一大産地で、県内全体の約6割を生産。「新鮮でおいしいきのこを多くの人に知ってもらいたい」と、生産者と行政が〈魚沼きのこ・山菜振興協議会〉をつくり、〈魚沼きのこ〉として出荷しています。
肉厚で香りたっぷり、旨みのつまった「まいたけ」
こだわりのきのこの秘密を探りに、今回訪れたのは〈石坂きのこ組合〉さん。南魚沼市で昭和55年からまいたけ栽培に力を注ぐ生産者です。もともとはえのきたけ、ひらたけの栽培からスタートしたそうなのですが、まいたけの種菌が開発されたことから、まいたけ栽培を開始。およそ10年かけて独自の栽培方法を生み出し、特許を取得。そして、現在ではまいたけのみを育てています。
「天然ものと同じ味をつくることを目指しています」と話す、石坂さん。湧水を利用したり、栽培環境を山と同じ自然な状態に近づけることで、おいしさと大きさを追求しています。
石坂さんたちが育てるまいたけの特徴が、茎(くき)までおいしいこと。培地に極力オガクズのみを利用して、時間をかけて生育させます。そうすることで、菌自身がオガクズを分解し、そこで得た養分がまいたけ本来のおいしさを引き出すのだとか。
また、培地に一斗缶を使用しているのも〈石坂きのこ組合〉ならでは。1株1.2〜1.5キロにもなる大きなまいたけを育てる工夫がここにあります。
「培地を大きくしたことで、菌床の殺菌処理が難しくなったり、培養中の菌に酸素が行き渡らないという課題がありました。そこで菌床に酸素を送るオリジナル装置を開発するなど、栽培法を確立するまで先代の父は試行錯誤の連続でしたね。それでも幼い頃に食べた天然まいたけの味が忘れられずに、ようやく野生の味に近づけることができるようになりました」と語ってくれました。
手間がかかるため、大量には生産できないという〈石坂きのこ組合〉のまいたけ。これまでのまいたけの概念を覆してくれる味に出会えるはずです。