新潟のつかいかた

“サッカー”と“農業”で、なでしこリーグをめざす! 〈FC越後妻有〉の女子選手たち

“サッカー”と“農業”で、
なでしこリーグをめざす!
〈FC越後妻有〉の女子選手たち Posted | 2018/05/31

女子サッカーチーム〈FC越後妻有〉

女子サッカーチーム〈FC越後妻有〉。新潟へ移住してきたIターン者によって、2016年に結成されたばかりの新チームですが、彼女たちの暮らし方がとてもユニーク! と、じわじわ注目を集めています。

どんな暮らしかというと、“サッカー”と“農業”の両立。

彼女たちが暮らす越後妻有――「えちごつまり」とよばれるこのエリアは、いまではよく知られる世界最大級の国際芸術祭〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉の舞台。3年に1度の国際芸術祭が今年開催されますが、実は本プロジェクトも、芸術祭の一環としてスタートしたものなんです。

2000年に制作された、イリヤ&エミリア・カバコフの作品〈棚田〉
2000年に制作された、イリヤ&エミリア・カバコフの作品〈棚田〉。芸術祭では里山の風景の中に多数のアート作品が展示されます。

〈FC越後妻有〉とは?

サッカーと農業という、二軸の暮らしを営む彼女たちは、大地の芸術祭を運営するNPO法人〈越後妻有里山協働機構〉の職員として、新潟県十日町市・津南町に移住してきました。

小学校の廃校を再生活用した〈奴奈川(ぬながわ)キャンパス〉を拠点に、高齢化や過疎化で担い手のいなくなった400~500年もの歴史のある棚田を借り受け、米づくり、伝統・文化・景観の継承というミッションをこなしながら、なでしこリーグへの参戦を目標に、プロと同じサッカーメニューを日々積み重ねています。

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選手メンバーは2016年に入団した大平理恵さんと、西川美里さん、2018年4月に加入したばかりの井神志織里さんと、寺戸愛海さんの4名。

どんな毎日を送っているの?

奴奈川キャンパス横のグラウンドは、天然芝のサッカー場。このグラウンドで、火・木曜の日中はトレーニングを行い、午後は農作業へ。別日には、夕方から十日町のサッカーチームに合流して室内練習をこなします。土・日曜は、公式戦やトレーニングマッチなども。

奴奈川キャンパスのグラウンドにて。サッカーチームの立ち上げをきっかけに、地元の方々の協力を得て、元小学校の運動場に芝生の苗を植えたのだとか
奴奈川キャンパスのグラウンドにて。サッカーチームの立ち上げをきっかけに、地元の方々の協力を得て、元小学校の運動場に芝生の苗を植えたのだとか。

聞けば、なかなかハードな毎日。でも、彼女たちは笑顔ながらも真剣な眼差しでサッカーのトレーニングに励み、美しい里山の風景の中で、生き生きと農作業にいそしみます。その姿は、なんとも頼もしい!

江副良治監督。選手と同様に、サッカーだけでなく農業にも従事
江副良治監督。選手と同様に、サッカーだけでなく農業にも従事しています。

彼女たちを指導するのは、全国レベルの高校生プレーヤーや、幼稚園児~小・中学生まで幅広い年代のコーチを務めてきた、サッカー指導一筋の江副良治監督。また十日町市には、トッププロや代表チームなどにも対応できるレベルのグラウンドもあり、サッカーをするには不自由のない抜群の環境。

でも、なぜこの場所で、サッカーチームを?

発起人は、奴奈川キャンパスの体育学科チューターであり、JFA(公益財団法人日本サッカー協会)のスポーツマネジャーズカレッジダイレクターである坂口淳さん。これまで、日本各地の生産者や匠を訪ねる機会があり、そのなかで、食・農・文化・伝統など、地方にまつわる問題に直面したことをきっかけに、スポーツをフックに、廃れそうな一次産業を守る活動ができないか、と考えたそう。

FC越後妻有を立ち上げた、坂口淳さん(右)
FC越後妻有を立ち上げた、坂口淳さん(右)。

〈大地の芸術祭〉の総合ディレクター・北川フラム氏に話をもちかけ、「よし、やろう!」とゴーサインをもらってからは、各地の大学をまわり、サッカーと農業の両立を「おもしろい!」と受けとめてくれる選手を探しまわりました。2016年には、大平選手と西川選手をスカウトし、〈FC越後妻有〉がスタートすることになったのです。

何もないチームへ飛び込んだ2名の選手の話

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