新潟のつかいかた

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デザインで新たな価値を提案
〈合同会社アレコレ〉
代表・迫一成さん | Page 2 Posted | 2020/08/27

商店街から生まれたデザインの仕事

店舗の2階
古い木造建築の魅力をそのまま生かした2階の店舗。定期的に期間限定の展示会も開催。

実は迫さん、新潟から遠く離れた福岡の出身。新潟大学で行動科学(社会学や心理学)を学ぶため、この地にやってきました。学生時代は勉強の傍ら、バックパックひとつでヨーロッパやインドを回り、各地の美術館に足を運んだり、イラストレーターや絵本作家を養成するスクール〈パレットクラブ〉に通ったり、デザインにも興味を持っていたと当時を振り返ります。

「何かをわかりやすく伝える仕事がしたかった。デザインの力で社会が好転する。そんな社会学的な側面にも興味がありました」

大学卒業後はパレットクラブで知り合った友人とTシャツのデザイン販売を始めることに。拠点は新潟。すでに土地勘があったこと、また新潟のまちの規模も雰囲気も人も迫さんにとって心地よかったといいます。

「新潟は僕にとってちょうどいい感じというか、すごくいい感じでしたね」

まずは何か行動を起こしてみようと始めたTシャツのデザイン販売でしたが、思うような結果は出ませんでした。

そんなとき、行政や商工会議所などが中心となって新たに事業を始めたい人を応援する「チャレンジショップ」という制度を知ります。2001年、服飾を学んでいた大学時代の先輩も誘ってさっそく参加することに。これがヒッコリースリートラベラーズの始まりです。メディアなどでも紹介され、若い3人の活動は順調に動き出します。

インタビュー中の迫一成さん
迫さんの創作活動の原点であるTシャツはいまの店舗にも多く並んでいます。

「1年半ほどして、ある程度、資金が貯まったところで、古町三番町の商店街に店を構えることにしました」

当時、借りた店舗は、いまの店のちょうどはす向かい。

「この場所を選んだのは、商工会議所で市の空き店舗対策として家賃補助があったのが理由です。でも商店街に店を構えたことで、自分の仕事が自ずと変化していきました」

「かみふるまち」のロゴ
上古町商店街の柱に印字されているロゴは迫さんのデザイン。

オリジナルTシャツの販売を続けるうちに、商店街には目的を持たずにふらりと立ち寄れる店のほうが合っていると感じ始めた迫さん。そこで2010年、現在の店舗への移転を機に、扱う商品を拡充。既存のTシャツやバッグに加え、全国からセレクトしたアイテム、新潟らしいお菓子や産業品など、観光客も地元の人も楽しめる内容に変えました。

「商店街で何年も店をやっていると、応援してくれる地元の人たちが出てくるんです。そういう人たちも気軽に買えるような商品を置きたいという思いもありました」

hickory03travelersショップの陳列棚
観光客には“新潟らしい店”、地元の人には“楽しい店”がコンセプト。
浮き星が入った湯呑にお湯を注ぐ

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新たなヒット商品に


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