各分野のプロと手を組んだ、新しいカタチの道の駅
新潟県では41番目の道の駅としてオープンした道の駅たがみ。後発ということもあり、馬場さんはまず、他店舗との差別化を図りました。
「田上町って、県内の人でも場所を知らない人が多いんです。存在すら知らない人も。みんなから注目されるような道の駅をつくって、まちの名前をしっかり発信できれば、地域のさまざまなものにチャンスが生まれると思いました。そこで、子どもからお年寄りまで、訪れる人がワクワク、ドキドキできる、ほかにはない楽しくて、かわいい道の駅をつくることにしたんです」
そのコンセプトを具現化するためにタッグを組んだのが、新潟市の上古町(かみふるまち)を拠点に活動するクリエイティブ集団、〈hickory03travelers(ヒッコリースリートラベラーズ)〉の代表である迫一成さん。
「迫さんは上古町に店舗を構え、商店街全体を盛り上げている人。新潟市美術館のミュージアムショップも運営されている関係で、前職からつきあいがあり、この人しかいないと思いました。ブランディングからデザインマネジメントまで一貫してお願いしています」
動物と山をモチーフにした愛らしいロゴマークが目を引く、やさしい雰囲気の道の駅は、白をベースにした、木の温もりが感じられるナチュラルな空間。店内には、地元の採れたて野菜や果物をはじめ、田上町の特産品である梅やたけのこを使ったお土産品、全国から選りすぐった文具や衣類といったアイテムまでずらりと並び、眺めているだけで楽しくなります。
おもしろそう! と思ったら、まずは実行という馬場さんが大切にしているのは、その道のプロとチームを組んでつくり上げること。
「僕たち自身が成長するためにも、プロフェッショナルな人と一緒に仕事をするように心がけています。僕たちの成長は、子どもたちに受け継がれていくもの。みなさん田上町の未来を本気で考えてくださる方ばかりで、すごく恵まれているなと感じます」
特に子ども向けのイベントを企画する際は、気合が入ります。たとえば12月は、新潟で造園業を営みながら植物アート作家としても活躍する冨田昌希さんと手を組み、高さ4メートルの生木のクリスマスツリーを用意。地域の園児を集めて一緒に飾りつけを行いました。また春は、〈長岡つるしびなの会〉協力のもと、和布を使ってひとつひとつ手づくりされる、伝統的なつるしびなを展示。子どもたちの心に刻まれるような、田上町の恒例行事をひとつずつていねいにつくり上げています。
また道の駅を発信の場だけでなく、地域の人たちの憩いの場にもしたいと考えていた馬場さんは、週に1回、地域おこし協力隊の山口匠さんと一緒に、高齢者向けの無料のスマホ教室を開催。
「以前からコロナワクチンの予約ができない、孫とLINEをやりたいけどやり方がわからないといった声があったので、じゃあ企画してみようと。勉強したことをノートにメモしたり、みなさんすごく熱心で。やってよかったなとしみじみ感じています」
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