「おれのまちにはたけのこがある!」から生まれたイベント
昨年10月、竹灯籠や竹まりといった「竹あかり」でまちをライトアップする、田上町をあげてのアートプロジェクト「たがみバンブーブー2022」が開催されました。10月1〜30日までの開催期間中の累計来場者数は2万4000人以上。大盛況だったこのイベントの仕掛け人も馬場さんです。
「地域を象徴するような催事をしたいとずっと考えていました。田舎の人ってよく『うちのまちは何にもない』って言うでしょ。でも田上の人って違うんですよ。おじいちゃんも若者も口をそろえて『おれのまちにはたけのこがある!』と、当たり前の顔をして言うんです。これはすごいことだなって。何かおもしろいことに変わるんじゃないかと思ったんです」
県内有数のたけのこの産地として知られる田上町は、同時に、放置竹林問題を抱えています。
「すごくおいしいたけのこをつくるのに、目も当てられないような放置竹林があっては、その魅力も半減してしまいます。竹を利用して、みんなの記憶に残るようなアーティスティックなイベントができれば、田上町の知名度を上げることができ、そして何より、地域の人たちが誇れる、新しい価値をつくることができると思いました」
そこで、自身も所属する商工会青年部に声をかけて、プロジェクトチームを結成。竹あかりの制作には熊本を拠点に活動する、竹あかり総合プロデュース集団〈CHIKAKEN〉に協力を依頼しました。
「地域の人たちにも協力してもらって竹を伐採し、竹あかりをつくりました。みんなが準備段階から参加し、“自分ごと”としてこのイベントに関われたことが何より良かったと感じています。もちろん来年も行うつもり。毎年続けて、田上町を美しい竹のまちにしていきたいと考えています」
「まちの価値をつくるためなら何でもしたい」と、今では道の駅を超えて、田上町の顔となり、地元のラジオに出演したり、地元の大学生とイベントを企画したり、パソコン片手に東奔西走する馬場さん。最近では、小学生と直接関わる活動も行っています。
「地元の小学校の設立150周年の一環で、4年生の授業を受け持ったんです。そこで特別講師に迫さんを招いて、田上町の魅力をキャラクターにして発信する授業を行いました。地元の小学生たちは、1年生から3年生まで田上町について勉強するので、4年生はその集大成。キャラクターは、何歳で、どこで生まれて、何が得意で、といったことを考えてもらい、最終的にみんなの意見を少しずつ取り入れたキャラクターを11種完成させました。自分たちのアイデアが入りまくりなので、子どもたちは大喜び。その様子を目の当たりにしたとき、子どもたちの未来をつくっている仕事になったなって、すごくうれしくなりました」
地域の仲間と地域の未来について考え、行動できることが何より楽しいと話す馬場さん。今後も独自のアイデアでまちを盛り上げてくれそうです。
Profile 馬場大輔
1978年田上町生まれ。大学卒業後、いくつかの職を経て、北方文化博物館に勤務。博物館では、8代当主伊藤文吉氏のもとで、国際交流や地域文化継承の重要性など、多くのことを学ぶ。2022年10月、田上町の文化継承とまちの新たな価値づくりのため、道の駅たがみの駅長に。休日は、新潟の自然をちゃんと感じたいと、冬はスキー、夏はキャンプと、家族でアウトドアを楽しむ。
Information
credit text:矢島容代 photo:内藤雅子