新潟のつかいかた

上野さんと高田世界館の、第2ステージ

〈高田世界館〉
支配人・上野迪音さん
日本最古級の映画館の保存と
まちのコミュニティづくり
を目指す | Page 3 Posted | 2018/12/17

上野さんと高田世界館の、
第2ステージとは?

芝居小屋の名残のある映画館内
ステージがあり、芝居小屋の名残のある映画館内。かつて座席は畳敷きだったのだとか。

映画館の支配人と、まちづくり。二足のわらじを履く上野さんですが、やはり比重は映画館。来年にはNPOによる再生事業がスタートし10年目を迎えます。

現在はデジタル上映の全自動化の工事を進めているのだとか。最新の設備が揃い、受け入れ態勢も整って、興行会社としての積み重ねが認められれば、いままで扱えなかったメジャーな話題作も、高田世界館で上映が可能になるといいます。

「全自動化すると、窓口だけですべての作業が完結するので、楽になります(笑)。僕はメリハリも必要だと思っていて。フィルム上映のときはきっちり集中して、手を緩める部分も用意して。まちの映画館ですから、フォローの必要なお年寄りのお客さんも多い。でも上映を全自動化することによって、接客を手厚くすることだってできるんです」

映画館内のシート

工事が一通り完了すれば、映画館だけでなく、上野さん自身も第2ステージに進めるといいます。それは、いままで映画館にかけていた労力を、高田のまちづくりにもっと注いでいくということ。

日本各地と同様、人口減少の加速する高田のまち。そんな状況のなかで、どうやってコミュニティを立ち上げ、つくっていくか。それが上野さんの思う、このまちの課題だと言います。それはまちづくりだけでなく、映画館にも言えること。

「高田世界館を残していくにも、文化ならびにコミュニティをつくる必要があると思っています。ただ単純にメジャーな映画だけやっていても、そこには映画のコミュニティは生まれないんです。もちろん収益を得るには、流行や、売れ筋を嗅ぎとって、時期を逃さずにお客さんを入れるのが大事ですけれど、それだけだと文化として根づかない」

ロビーに貼られたチラシ
ロビーに貼られたチラシにはポップがつけられ、次回も観に来よう! と思わせるような工夫が。

映画と関連するライブ、トークショー、座談会、映画講座など、さまざまなアプローチを仕掛けてきたなかで、いま上野さんがコミュニティの可能性を感じるのはインド映画。

「イベントをやるたびに同じお客さんが足を運んでくれていて、インド映画好きのコミュニティができつつあります。顔見知りの常連さんがかたまってきたなっていう感覚はありますね。若い支配人が頑張っているから応援しよう、という気持ちで来てくださるのもうれしいんですが、本当は映画を観に来てほしい。映画の魅力、映画の楽しさでもって人を集めたいんです」

入場券売場

今年の11月、高田世界館ではインドのマサラ上映を企画。さらに翌日には「南インド料理を食べる会」というイベントを設定し、高田×インドを楽しむ2日間を開催しました。そこには上野さんのこんな思惑が。

「最近、映画館の裏に民泊施設が2軒もできたんですよ。僕としては、各地から来られたお客さんに、日帰りではなく、泊まって、高田のことをもっと知ってもらいたくて。“シネマツーリズム”ともいうべきイベントを企画しました」

支配人・上野迪音さん

県内外から人が集まるタイミングがあれば、そこからオプションを増やし、地域をPRし、巡ってもらうための仕組みやセッティングをするのは大事、と語る上野さん。

ただ、小さなコミュニティのためだけに、この高田世界館を使いたくはないともいいます。話題作を上映することで客が入れば経済もまわり、地域にもお金が落ちる。そういったまちへの循環も常に意識しているのだとか。

高田世界館を拠点に、イベントやまちづくりが少しずつ始まろうとしている高田のまち。上野さんが支配人になって4年。その短い時間のなかで地域にインパクトを与えてきた彼の今後の動向に、目が離せません。

〈高田世界館〉を写したモノクロ写真が飾られている

Information

【高田世界館】

address:新潟県上越市本町6-4-21

tel:025-520-7626/7442

access:えちごトキめき鉄道高田駅から徒歩約5分

定休日:火曜

web:takadasekaikan.com

上野迪音さん

Profile 上野迪音

新潟県上越市高田出身。高校卒業後、横浜国立大学へ進学し、映画評論を学ぶ。学生時代に自身で映画をセレクトした自主上映会を高田世界館で企画。2014年には高田へUターンし、NPO法人〈街なか映画館再生委員会〉の職員となり、高田世界館の支配人を務める。

credit text:林貴代子 photo:後藤武浩