新潟のつかいかた

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佐渡の果実を巡る旅 | Page 2 Posted | 2021/11/12

直売所に行列ができる、人気の「佐渡リンゴ」

続いて、「開店前に行列ができる直売所がある」と聞き、訪ねてみました。そこは〈西三川(にしみかわ)くだもの直売センター〉。

〈西三川くだもの直売センター〉外観

現在8つの農園が、とれたての果物を直売しています。1997年に誕生し、2019年に現在の場所に移転。7月のスイカから始まり、桃、ブドウ、梨、リンゴと、新鮮なフルーツが農園別のコーナーに並びます。取材に訪れた10月はなんといってもリンゴ!

果物がならぶ店内
おなじみの品種から、初めて聞くものまでズラリと並んでいます。

Information

【西三川くだもの直売センター】
address:新潟県佐渡市田切須517-4
tel:0259-58-2045
営業期間:7月10日頃~3月頃
営業時間:10:00〜18:00(12月~3月は~17:00)
定休日:期間中無休

佐渡のリンゴはなぜこれほど種類が多く、島外でも毎年注文する熱烈なファンが多いほど人気なのか。その秘密を探るべく、この直売所にリンゴなどを出荷している〈そで農園〉を訪ねました。

〈そで農園〉代表の佐々木良昌(よしすけ)さんは2代目で、現在は3代目の長男・友和さんとともにリンゴ、梨、〈ル レクチエ〉、ブドウ、桃を栽培しています。

佐々木さんは山形県の研修から戻った1972(昭和47)年頃から、山形で学んだ接ぎ木栽培によって徐々にリンゴ栽培を増やしていき、現在ではリンゴがかなりのウエイトを占めています。

〈そで農園〉で栽培する各種リンゴ
〈そで農園〉で栽培するリンゴの一部。右から〈もりのかがやき〉〈相伝ふじ〉〈シナノスイート〉〈秋映〉〈こうりん〉〈ゴールデンメロン〉。

リンゴの収穫は8月の〈サンつがる〉から始まり、12月末の〈サンふじ〉まで。途切れないように、約20種類の品種を栽培しています。

佐渡のリンゴがおいしい理由を佐々木さんにうかがいました。

「島なので海に囲まれているため最低気温が高く、積雪も少ないんです。東北などの産地では気温や積雪の関係でリンゴが凍ってしまわないように一度に収穫することが多いようですが、佐渡ではクリスマス頃まで、熟したものから順に収穫できることもおいしさの理由ですね」
なるほど……!

リンゴの木が並ぶ
山に囲まれた谷にリンゴの木が並びます。風の影響を受けないように、谷に農園をつくっています。

佐々木さんのリンゴ園を見せていただくと、〈シナノスイート〉〈ぐんま名月〉〈サンふじ〉などが収穫期を迎えていました。

収穫作業中の佐々木さん
〈シナノスイート〉を収穫する佐々木さん。
サンふじ
酸味と甘みがほど良く、日持ちもする〈サンふじ〉。

農園でもうひとつのおいしさの秘密を教えていただきました。それは、佐渡のリンゴは他産地に比べて、葉を多く残していることです。他産地では栽培途中で、色づきが悪くなるなどの理由で葉をほとんど取ってしまうことが多いようですが、〈そで農園〉をはじめとする佐渡のリンゴ生産者は「葉が栄養を取り込んでくれるから、葉を残して栽培している人が多いですね。」と佐々木さん。

その代わり、まんべんなく色づくようにリンゴを回すなど、手間がかかるそう。「おいしい」と喜んでくれる人たちの笑顔を思い、佐々木さん一家は手間を惜しまず栽培しています。

佐々木良昌さん

収穫後の袋詰めなどの出荷作業は奥さまと一緒に行います。県外から毎年注文するファンも多く、贈答用には特製の紙に包んで発送しています。

箱詰め作業

こんな包みで佐渡からリンゴが届いたら、うれしいですね。

包み紙でパッケージングされたリンゴ

Information

【そで農園】
address:新潟県佐渡市田切須37
tel:0259-58-2636
web:そで農園

南部で育つ〈ビオレ・ソリエス〉と「佐渡みかん」

佐渡南部の小木地区などで栽培される黒イチジク〈ビオレ・ソリエス〉は通称「小木ビオレ―」と呼ばれ、今や島内外で大人気です。8月中旬から11月中旬まで出荷され、最盛期は9月上旬から11月上旬。

ビオレ・ソリエス
フランス原産の黒イチジク〈ビオレ・ソリエス〉。

小木地区にある直売所〈はなゆめ〉で小木ビオレ―を販売しているという情報を聞きつけ、訪ねてみました。

パック詰された「小木ビオレ―
ありました!「小木ビオレ―」。

〈はなゆめ〉は菊地カヨ子さんが12年前に始めた直売所。小木地区やその近郊で採れる野菜や果物、魚介類や海藻など、約30名の会員が直接持ち込んだものを販売しているのでリーズナブル。カヨ子さんがつくるジャムや赤飯なども人気です。

ジャムやフルーツソース

Information

【直売所 はなゆめ】
address:新潟県佐渡市小木町1935-2
tel:0259-86-3170
営業時間:8:30~15:00
定休日:1月1日~4日

カヨ子さんに小木ビオレ―の生産者をお聞きすると、なんと夫の菊地行男さんが生産しているとのこと。さっそくハウスへお邪魔しました。

菊地行男さん

なぜ小木地区で〈ビオレ・ソリエス〉を栽培するようになったのでしょうか。

行男さんによれば「小木は高い山も大きな川もなく、水も少ないため、畑作が主で、1999年頃までは葉タバコを栽培していました。それに代わる将来性のあるものを、現在の組合員のメンバーと探った結果、〈ビオレ・ソリエス〉に行き着きました」。

木になった〈ビオレ・ソリエス〉

生産組合には現在12名が参画しています。会の愛称は「金のクローバー」。〈ビオレ・ソリエス〉は1本の木から主枝が4本出てくることと、「佐渡=金山」でこの名がついたそうです。

雨除けハウスでの収穫は朝4時から8時頃まで。すぐにパックに詰めて出荷されます。普通のイチジクの糖度が15度前後であるのに比べて、〈ビオレ・ソリエス〉は20度前後と高く、濃厚な味わいが魅力です。

半分に割った〈ビオレ・ソリエス〉

栽培当初の数年は実がつかず、菊地さんたち生産者はさまざまな工夫を重ね、その努力が実を結び、現在では安定的に高品質なものが出荷されています。首都圏の料理人やパティシエからも熱い視線が注がれています。

行男さんは、佐渡が北限の産地となる〈温州みかん〉も栽培しています。JA佐渡によれば、佐渡のみかんは2001(平成13)年に栽培が始まり、現在は〈JA佐渡果樹部会みかん倶楽部〉として19名が栽培しています。

温州みかん
栽培品種は〈ゆら早生〉と〈田口早生〉など5品種。

「もともと佐渡にも温州みかんの木はありましたが、酸っぱくて食べられませんでした。〈ゆら早生〉は佐渡の気候風土に適していて、通常は糖度が10くらいですが、私たちのみかんは11~13度。甘みと酸味のバランスがいいのも特徴です」と行男さん。

佐渡のみかんの収穫は11月から始まり、佐渡最大級の直売所〈よらんか舎〉などで購入することができます。

Information

【新鮮空間 よらんか舎】
address:新潟県佐渡市千種68番地1 エーコープ金井店内
tel:0259-63-3538
営業時間:9:00~19:30
定休日:元日のみ
web:新鮮空間 よらんか舎

佐渡初のパッションフルーツと島のジャム&ソース

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