桜の開花時期が気になり始める今日この頃。新潟県のお花見スポットといえば、「日本三大夜桜」のひとつと呼ばれる上越市の〈高田城址公園〉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
開花シーズンに約2週間にわたって開催される「高田城址公園観桜会」は、夜間に桜がライトアップされ、多くの屋台が出店し、県内外から花見客が訪れる一大イベントです。
高田城址公園の観桜会の見どころや地元の方ならではの楽しみ方まで、2024年で99回目を数える「高田城址公園観桜会」についてご紹介します。事前に知っているとお花見がさらに楽しくなる、豆知識が満載です。
伊達政宗が陣頭指揮した高田城で約100年続く観桜会

〈高田城址公園〉は、園内に芝生広場や遊歩道、陸上競技場や図書館、歴史博物館まで有する上越市民の憩いの場。高田城の跡に整備された公園で、公園全体が新潟県の史跡に指定されています。
1614(慶長19)年、松平忠輝公(徳川家康の六男)の居城として築城された高田城。江戸幕府が全国の諸大名に対して権威の誇示に加え、忠義の証を立てさせるなどの目的で行われた「天下普請」によって建てられた城で、その陣頭指揮に当たったのは、忠輝公の義父にあたる伊達政宗でした。
築城当時、江戸幕府と豊臣家の間で行われた「大坂の陣」を間近に控えていたこともあり、外堀を含め60ヘクタールを超える城郭が、およそ4か月で完成したという逸話を持っています。高田城には、天守閣、石垣がありませんが、石垣の代わりに城全体に巡らされた土塁は、今なお高田城本丸に残る見どころのひとつとなっています。

1909(明治42)年に、旧陸軍・第十三師団(以下、第十三師団)の入城を記念して在郷軍人団によって最初の桜が植えられると、8年後の1917(大正6)年、第十三師団が庭内や司令部構内を開放したことで一般市民も桜の花見ができるようになりました。
その後、桜を含む多くの樹木が次々と植えられ、1926(大正15)年に現在まで続く観桜会がスタートしました。第1回も現在のように4月15〜24日まで約2週間にわたって開催され、「名物花見踊・スキー踊」や「郷土芸術民謡大会」などの催しが行われていたことが、史料に残されています(写真下)。
現在は、公園とその周辺を含めて約4000本の桜があり、県内随一のお花見スポットとして新潟県の春の風物詩となっています。

「日本三大夜桜」だけじゃないさまざまなタイトル

「高田城三重櫓だけでなく、桜の枝木にも直接ぼんぼりをつけることで、夜のお堀に桜が浮かぶ美しい情景を演出しています。満開の桜の花が見事に咲き乱れる桜のトンネル『さくらロード』や、しだれ桜にもご注目ください」と、話すのは上越観光コンベンション協会の福嶋大さん。
〈上野恩賜公園〉(東京都)、〈弘前公園〉(青森県)とともに「日本三大夜桜」として名高い〈高田城址公園〉ですが、そのほかにも「日本さくら名所100選の地」「新潟景勝百選」「日本の歴史公園100選」「続日本100名城」と、さまざまな肩書きをもっています。

また、「高田城址公園観桜会」会期中には、3000個以上のぼんぼりに明かりが灯され、幻想的な景観をつくることから、「夜景の美しい城」として、「日本三大夜城」「日本夜景遺産ライトアップ夜景遺産」にも選ばれています。
飲んで!食べて!楽しめる「高田城址公園観桜会」

県内外から観光客が訪れる「高田城址公園観桜会」は、例年3月末から4月中旬まで開催されます。見どころは約4000本の桜と高田城三重櫓のコラボレーションですが、昼と夜とで注目すべきポイントも変わるようです。
「昼間は南堀の桜並木から雪が残る妙高山を望むことができます。桜と残雪のコントラストを楽しめる、雪国新潟らしい景色は息をのむほどの美しさです。夜は何と言ってもお堀の水面に映る桜と高田城三重櫓が感動的。観桜会開催時には数多くの露店が並びますが、食事の持ち込みもOK。
一夜干しの塩スルメを天ぷらにした上越の郷土料理『するてん』や、「お花見だんご」など、地元グルメもお楽しみください」(福嶋さん)

一時期は新型コロナウイルスの影響によって公園内での飲食が禁止されていましたが、2023年春からは4年ぶりに飲食・飲酒が全面解禁となりました。
公園の敷地内以外にも、えちごトキめき鉄道高田駅前通りから高田城址公園の間を流れる青田川と儀明川の川沿いや、明治期の木造建築が残る「旧師団長官舎」など、桜のビューポイントはたくさん。
地元グルメと地酒を片手に、さまざまな角度から「高田城址公園観桜会」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
第99回「高田城址公園観桜会」へ行こう!

1926(大正15)年から現在まで、かたちを変えながらも観桜会は脈々と受け継がれてきました。99回目となる「高田城址公園観桜会」は、2024年3月29日(金)から4月14日(日)まで開催されます。
「観桜会初日となる3月29日(金)には、18時30分から三重櫓前よりミュージックスターマイン(速射連発花火)を打ち上げます。お客さんで賑わう週末には、神輿渡御や自衛隊によるパレードも実施予定です。各種企画は天候に合わせて開催されるため、詳しい情報は『上越観光Navi』をご覧ください。
そして、いよいよ来年は第100回目の観桜会となります。この先100年楽しめる観桜会にしたい」(福嶋さん)
2024年の「高田城址公園観桜会」会場には250店以上の露店が並ぶほか、音楽ライブなどが行われる「さくらステージ」も、会場を「市民交流施設 高田城址公園オーレンプラザ」に変更して復活します。
新型コロナ流行以前の賑わいが戻ってくる今年の「高田城址公園観桜会」。昼も夜も楽しめるお花見スポットを心ゆくまで満喫しましょう!

新潟県内屈指のお花見イベント「高田城址公園観桜会」では、春の美景だけでなく、「日本三大夜桜」「日本三大夜城」にも選ばれる夜の絶景があり、飲み食いしながら新潟の春を感じられる特別な2週間です。
そんな、100年余り人々の心をつかんで止まない感動的な美しさを目撃しましょう。
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credit text:松永春香