「新潟がサウナの聖地であることを皆さんにもっと知っていただきたいんです」
そう話すのは、新潟県でキャンプ場運営や建築デザインを行う〈Adventure Trip〉代表でアースバッグビルダーの五十嵐貴博(いからし たかひろ)さん。アースバッグビルダーとは、不燃材の土を主材とする建築物(アースバッグ)の専門家のことで、五十嵐さんは土を積み上げてつくるアースバッグサウナを、新潟県内外に広めています。では、その五十嵐さんが言う「新潟がサウナの聖地」である理由は?
「サウナといっても、新潟のサウナの特徴は“アウトドアサウナ”であるということ。新潟の豊かな自然を生かし、自然のなかで楽しむサウナです。僕が知る限りでも新潟県の日本海側だけでもアウトドアサウナが7施設もあります。なかでも日本海に飛び込めるようなサウナは3施設あるんです」
日本海という“大水風呂”で火照った体を冷やす……なんとも贅沢です。
自然を感じられるサウナの例を五十嵐さんに挙げていただくと、三条市の〈Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS〉は2022年にオープンした複合施設。セルフロウリュのサウナ後に粟ヶ岳を望む外気浴スペースで体を休めれば、心からととのう瞬間を体験できます。
また、五十嵐さんも「注目している」という新潟県五泉市の〈ななほしサウナ〉もサウナー憧れの地。菅名岳のふもとの吉清水という、冷たく清らかな湧き水を引き込んだ水風呂が魅力なのだとか。
新潟の自然の恵みをめいっぱい享受できるサウナのクオリティに加えて、やはり外せないのが食の魅力。「サ飯(サウナ飯)」のポテンシャルの高さについては、五十嵐さんも声を大にして伝えたいといいます。
「県外の友人を連れて行くとみんな感動する回転寿司。それからラーメンもいいですね。燕三条だったら背脂系、長岡だったら生姜醤油ラーメン。これがサウナ後に染みるんですよね」
そんな五十嵐さんも新潟で新しい宿泊施設とサウナを展開しています。美しい日本海と夕日が一望できる1日2組限定の〈日本海夕日ヴィラOne Story〉を出雲崎町に、そしてその敷地内に、阿賀野市の特産品「安田瓦」で床を覆う唯一無二のアースバッグサウナ〈On The Sea〉を2024年6月にオープンさせました。
出雲崎町は、新幹線とレンタカーを利用すれば、東京から2時間強でも行くことができ、「夕日のまち」としても知られる風光明媚なまち。この地が全国のサウナーに慕われる地になるのにそう時間はかからなさそうです。
美しい海岸線を持つ新潟県だからこそ、
海と旅を軸とした持続可能な“アウトドア県”へ
〈笹川流れカヤックセンター〉代表の飯山達哉さんは、シーカヤックで日本一周の旅をした経験から、2019年に村上市に移住し、遊覧船を運航する〈笹川流れ観光汽船〉に入社。2020年に〈笹川流れカヤックセンター〉を独立開業してからは、幅広い年齢層のお客さん(とワンちゃん)に慕われるカヤックガイドとして活動し、村上市の名勝天然記念物である笹川流れ地区の絶景をカヤックで漕ぎ進むツアーを実施しています。
そんな飯山さんおすすめの「新潟のシーカヤックスポット」を紹介します。
※カヤックで周遊を楽しむためにはガイドの案内または相応のトレーニングが必要です。ご希望の方は、笹川流れカヤックセンターへお問い合わせください。
【村上市 笹川流れ】
碧く美しい海に白い砂浜、浸食された岩々に洞穴など見事な風景に出会うことができる。
【糸魚川市 親不知海岸】
ジオパークにも指定されている地質学、歴史、近代史など多くの視点から楽しめる日本有数の断崖絶壁。親不知海岸はヒスイ拾いの名所としても有名。
【糸魚川市 能生エリア】
初心者でも楽しめる。フォッサマグナの海底火山の噴火によってできた地形遊びが楽しい。能生のシンボル「弁天岩」を海上からカヤックで眺めると新たな発見があるかも。
【柏崎・米山福浦八景】
風光明媚な岩礁地で「日本の渚百選」に選ばれた鯨波海岸と、そこから続く約12キロの海岸線が美しい。
【佐渡島】
2024年7月に世界遺産登録が決定した話題の島。体験カヤックを行うガイドの豊富さで人気。ダイビングスクールもあるアウトドア先進地域だと飯山さん。「泊まりで来られる方が多いのでナイトカヤックが盛んです。カヤックの中に明かりを仕込んで漕ぐと魚が近寄ってくるんですよ。そういう場所は多分ここだけだと思います」
【胎内沖・油ガス田】
胎内沖5キロに位置する海上油ガス田施設。飯山さんたちは映画『アルマゲドン』のワンシーンに倣ったプログラムで1年に2回ツアーを実施。
【粟島】
岩船からフェリーで1時間半、笹川流れから18キロに位置する小さな島。22キロの海岸線は断崖絶壁のすばらしい光景と動植物の楽園。
「カヤックツアーのシーズンは海水浴シーズンよりも長い4月から10月で、身長85センチのお子さんから上は何歳でも大丈夫。愛犬とも参加いただけます。お客さんの8割は初心者なので初めての方もぜひ笹川流れカヤックセンターへお越しください!」と話す飯山さん。夏の終わりの思い出づくりにぴったりですね。
海水浴のシーズンは終わりを迎えますが、秋には秋の楽しみがあります。食もいっそう豊かになるこれからのシーズン。サウナやカヤックでめいっぱい汗をかいたり、体を動かしてお腹をすかせて、新潟の秋の味覚やご当地グルメを存分に味わう。もしかしたらそれが一番おいしい“新潟の食しかた”なのかもしれません。
credit text:海老原 悠