江戸時代から400年。燕三条を支えてきた
金属加工の技術とつながりを
すぐれた製品を生み出し、世界から認められている燕三条地域。金属加工の歴史は古く、雪に閉ざされる冬の仕事としても農業以外の生業が必要だと、和釘の製造が推奨されたことに端を発し、江戸時代初期に始まりました。それから400年もの間、燕三条の金属加工は発展を続けてきました。100年以上の歴史を持つ工場も複数あります。
〈燕三条 工場の祭典〉は、普段は一般公開されていない多くの工場を一斉に開放し、訪れた人が見学や体験を行うオープンファクトリーイベントです。
2013年に第1回を行い、12年目となる今年は、地域にある108社の企業や施設が参加します。工場見学以外にもワークショップや商品の販売をする事業所や施設も多数予定されています。技術に触れるのはもちろん、燕三条でものづくりを行う人たちと訪れる人とが直接コミュニケーションをとり、つながりを生むことを目指しています。
世界に認められた技術を体験してお土産にも
会場となる工場や施設などは、隣り合う燕市と三条市に広く点在しています。その広いエリアを三条市街地、三条北、三条南、下田、燕西、燕東と6つに分けています。
燕東エリアにある〈燕市産業史料館〉は、燕の江戸時代から続く伝統的金属工芸技術から、現在の金属産業の変遷を紹介する施設で、イベント当日は全部で12ある案内所のひとつにもなります。
館内にある体験工房館では、純銅タンブラーの鎚目(つちめ)入れなど、金属を扱ったものづくり体験が可能です。自分で鎚目を入れて仕上げた銅製タンブラーがあれば、冷たいドリンクをいっそうおいしく感じさせてくれるでしょう。
やはり燕東エリアの〈山崎金属工業〉は、1918年創業の金属洋食器メーカーです。ノーベル賞創設90周年記念晩餐会にカトラリーを提供するなど、その技術は世界的に認められてきました。近年話題となっているのが、カレーライスがもっとおいしくなるスプーン〈カレー賢人〉のシリーズ。その絶妙な形状にどんな技術が生かされているのか、カレー好きならずとも見逃せません。
三条南エリアにある〈相場産業〉は金属を叩いて強度を高める鍛造技術のエキスパート。鉄、ステンレス、チタン、チタン合金を用いたプロ向け作業工具の製造・販売を行っています。2011年に立ち上げたトラックバイク専用工具ブランド〈RUNWELL〉はオリンピックで東京、パリと2連覇を果たしたオランダ自転車チームのメカニックも使用するなど世界のプロに愛されています。
燕三条のものづくりは、複数の工場が持つ技術をつないでひとつの完成品をつくる分業制ができあがっていることも特徴のひとつです。1/1000ミリメートル単位の精度で金属表面加工を行う〈笹川メッキ〉や、プラスチック製品をつくるために必要な金型をつくる〈一成モールド〉、金属を光らせたり滑らかにしたりする研磨を担う〈明田川自研〉など、大小さまざまな工場が〈燕三条 工場の祭典〉に参加。
鮮やかな手つきの職人技を目の当たりにすると、いくつもの専門技術が集まっていることや、時間をかけて技術が発展してきたことなど、地域の歴史にも思いを馳せたくなりそうです。
東京駅から新幹線で2時間足らずの場所で開催される〈燕三条 工場の祭典〉。さまざまなものづくりの現場を直接目にすると、日常的に使っている道具にも高度な技術が隠れていることを知ることができます。秋の遠足気分で足を運んでみてはいかがでしょうか?
Information
【燕三条 工場の祭典】
会場:新潟県燕市、三条市
開催期間:2024年10月3日(木)~6日(日)
開催時間:9:00〜17:00
※工場によって見学等が可能な日程や時間は異なります。
入場料:無料
※ワークショップは有料の場合があります。
web:燕三条工場の祭典
credit text:野崎さおり