2024年7月に「佐渡島(さど)の金山」として世界文化遺産に登録された新潟県・佐渡島。登録を機に、改めて多様な文化が注目されていますが、実は近年「アドベンチャーツーリズム」にも関心が高まっていることを知っていますか。佐渡島独自の地形を生かし、大人も子どもも「冒険」ができる場所。それが今の佐渡の楽しみ方なんです。
世界遺産だけではない佐渡の魅力
「アドベンチャーツーリズム」とは、アクティビティ、自然、異文化体験のうち、ふたつを組み合わせた旅のスタイルを指す言葉。雄大な自然を舞台にしたアクティビティや、日常と離れた異文化で五感を刺激するような文化体験など、佐渡を訪れる観光客は、そんな新しい旅のかたちを楽しむ人が増えているそうです。
「佐渡には昨年約44万2000人の観光客が訪れています。日本各地からはもちろん、欧米や台湾から訪れる団体・個人の方も多くみられました。また、今年は世界文化遺産に登録されたこともあり、佐渡金山に訪れる人は例年より3割ほど増えました」
そう話すのは佐渡観光交流機構事務局長の佐藤達也さん。
「『佐渡金山ではない、佐渡の魅力とは?』と考えたときに、やはり自然は欠かせない要素のひとつ。観光客が増えていくなかで、佐渡の新しい魅力をアピールするためにも、佐渡観光交流機構では『サドベンチャー』と題した佐渡の自然環境を楽しめるツアーを企画しています」
佐渡というと海に囲まれているのでカヤックやSUPといった海や湖でのアクティビティのイメージが強いかもしれませんが、巨大な天然杉が見られるトレッキングや、島内をめぐるサイクリングなど陸地でできるアクティビティも人気のツアーです。
大佐渡山地は標高1000メートル級の山々が続き、手つかずの天然杉の原生林が、本土とは異なる離島ならではの深い森をつくっています。
「サドベンチャー」のツアーには佐渡と新潟市をつなぐカーフェリー、ジェットフォイルの往復乗船券を含むものもあり、新潟観光の延長で佐渡も楽しめるように工夫されています。佐渡に宿泊しなくても、往復乗船券つきの日帰りツアーも企画されているので、佐渡との距離もぐっと縮まります。
崖に登り海を泳ぐ冒険! 滝ツアーがアツい
そのほかにも佐渡の魅力を楽しめるアクティビティのひとつに、島内の滝をめぐるツアーがあります。佐渡市内でスポーツショップ〈ダグアウト〉に勤務している石塚浩之さんは、滝ガイドとして佐渡の滝めぐりを企画しています。
「佐渡島には、落差5メートル以上の滝が50以上あります。お子さんと一緒にハイキング感覚で行けるところや、崖や沢を登ったり海を泳いだりしてようやくたどり着けるところなどさまざまで、初級者から上級者まで楽しめる多彩なツアーを用意しています」
そう話す石塚さんは、佐渡の出身で一度は県外に出たものの、Uターンしてきました。
「東京で仕事をしてから2年間の海外生活を経て、Uターンで佐渡に戻ってきたある日、知人から『滝を見に行かない?』と誘われたんです。スニーカーで気軽に参加したら、崖をクライムしたり、海に飛び込んで対岸まで泳いだりと、片道2時間の想像以上にハードなコースでした(笑)」
それまではキャンプもやらない、登山もしない、アウトドア派ではなかった石塚さんでしたが、この体験を経て自然で遊ぶ楽しさと、佐渡の可能性に気づいたそうです。
「みんなが写真を撮ってSNSに投稿しているような場所とはまったく違い、僕がたどり着いた滝ではネット上では見られないすばらしい景色が広がっていたんです。美しい自然のダイナミックさを全身で感じた、人生を変える経験でした」
それをきっかけに、現在では滝ガイドとして佐渡の滝をめぐるツアーを主催し、大人も子どもも楽しめるアドベンチャーアクティビティを提供しています。
「僕がガイドしているコースには幼稚園の年長さんも参加できるコースも用意しています。上級者向けのものでは、ゴールの滝に行くまで数時間かかり、1日がかりで往復する険しいコースもあります」
そして、自然を舞台にするアドベンチャーアクティビティには、同じコースでも季節によって異なる楽しみがあります。
「春は雪解けによって水量が増しダイナミックな滝が見られます。夏には、山の傾斜を生かした沢での天然ウォータースライダーや、沢登りなどが楽しめます。秋の紅葉の滝めぐりもおすすめですが、僕がイチオシのシーズンは、冬! 『氷瀑(ひょうばく)』と言われる凍った滝が見られたり、雪化粧した白銀の世界が見られたりと、普段目にすることができない景色を楽しめます」
石塚さんは、滝をめぐるツアーだけでなく、佐渡島周辺の火山灰でできた無人島「白島(しらしま)」にSUPで上陸して、佐渡にしかない独特な地形を見たり、クリフダイビングを楽しむツアーなど、新しいアドベンチャーツアーも次々と企画しています。なかには、限られた人数で参加する秘境ツアーなどもあるそうです。
「人が行かない場所にこそ、自然の魅力がある。ツアーに参加してくれた人には、自然で遊ぶ楽しさを知ってもらいたいですね」と石塚さん。
文化アクティビティも見逃せない
「『サドベンチャー』では、訪れた人に地域の文化交流を体験してもらい、旅の付加価値を高め、佐渡の魅力を伝えていきたいと思っています」
と話すのは、佐渡観光交流機構の佐藤さん。佐渡観光交流機構が主宰する「サドベンチャー」では、自然アクティビティだけでなく、佐渡伝統芸能「鬼太鼓」や能などが体験できる文化アクティビティも開催しています。伝統文化に触れられるプランは通訳付きのものもあり、外国人にも人気なんだそうです。
世界文化遺産登録で賑わう佐渡島ですが、「サドベンチャー」を知る人はまだそうは多くないのかもしれません。佐渡を知るうえで、金山の鉱山跡や資料館をめぐるのはもちろんですが、佐渡の自然を全身で感じるアウトドアアクティビティも見逃せません。佐渡を訪れる際は、世界遺産めぐりと合わせて「サドベンチャー」もお忘れなく。
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credit text:石田絵美