新潟を訪ねるから発見できる本当の魅力
柳沼さんと南波さん、編集者・コラムニストとして、日本各地の魅力を発信することをライフワークとしている中村孝則さんの3名によるトークセッションが都内で開かれました。

中村さんは学生時代から趣味の釣りのため、新潟県内には何度も足を運んでいたのだとか。魅力あふれる新潟の食文化を全国、そして世界へ発信していきたいという思いから、2022年から開催している〈新潟ガストロノミーアワード〉の審査委員長を務めています。
「取材が僕の原点」と話す中村さん。長岡市で大口れんこんを育てる畑を訪ねて、収穫を体験するなど、新潟の食を本質から理解する活動も続けています。「たとえば、大口れんこんの育つ環境、生産者さんの苦労を取材することで、なぜおいしいのかを伝えることができます」と積極的に多くの生産者やシェフの元へ出向きます。
その場所に足を踏み入れるから、あらためて魅力を発見できるというのは柳沼さんも同じです。柳沼さんは「阿賀町に移り住むまで、新潟といえば、米や酒、雪というイメージを持っていました。福島県と接する山奥の阿賀町に住んで、山菜やオニグルミなど、雪深い山の中だから育つすばらしい素材と出合えました」と話します。
静岡県出身の南波さんは、新潟の家庭でつくられてきた根菜中心の煮物、のっぺがお気に入り。「今、のっぺをつくって食べるのはおじいちゃんやおばあちゃん。こういった食文化を受け継いでいくことが重要なんじゃないかと思っています」と、KIKUSUI蔵GARDENでも新潟の郷土料理を伝えたいと希望を持っているのだとか。
中村さんは「雪国ゆえの保存食品や発酵食品の文化は、世界に誇れるものです。今は世界のトップシェフが発酵に注目しているので、新潟には発酵食品がすべてあるよと僕は自慢しています」と話します。そんな中村さんに問いかけが。「今なぜ世界で発酵がブームなのですか?」
「発酵食品を食べると、美しく長生きできると考えられているからです。新潟の発酵食品、保存食品の文化は世界に向けて大きなセールスポイントになると思います」
柳沼さんが扱うオニグルミには抗酸化作用がある成分が含まれることもわかっているので、美容と健康に気を遣う人たちがその存在を知れば、多くの人が食に取り入れたいと考えようになるかもしれません。
必要なのはファンづくり。
まだ知られていない新潟のごっつぉ=ごちそうを世界へ
これから新潟県内、日本国内、そして世界に向けて食文化を発信していくために重要なことはなにか。世界の食に精通する中村さんは、今やレストランがメディア、発信の場となったことに注目しています。
「スターシェフがつくる料理を目当てに旅をする人がたくさんいますし、シェフたちはインフルエンサーとして影響力もあります。新潟県は、食材、食文化が豊かなだけではなく、シェフの数が多く、技術の高いことも大きな資産です。オニグルミのようなすばらしい食材もシェフたちが使うことで国内外に発信されていくと思います」と中村さん。
その言葉に柳沼さんは、「新潟の山奥に自生するオニグルミが、世界の健康や美容を意識した流れと相性がいいと聞いて自信になりました」と誇らしげです。
ここで中村さんに質問。「これから新潟の食材が世界に広がるためにはどんなことが必要でしょうか?」
中村さんの答えは「ファンをつくることだと思います」。
KIKUSUI蔵GARDENはまさに日本酒や菊水酒造のファンをつくる施設。「特に食品は、食べること、作られる過程を体験することが重要です。食に関心がある旅行者はきっと訪れると思います」という中村さんのコメントからも期待がうかがえます。
南波さんは「新潟の発酵を体験して、帰ってからもお土産と一緒に話題にしていただけるようにしたいですね」とますます活動に意欲を燃やしていました。
「2023年にシンガポールで、新潟のシェフに新潟の食材で現地のシェフや富裕層に向けたデモをしてもらいました。その目的は新潟の食材を世界に広めるだけでなく、僕が新潟のファンになったように、国内外の人に新潟に来てもらうことです。新潟にはル レクチエやのどぐろなど美味しい食材がたくさんあるんです」と中村さん。
トークセッションは、新潟の食材が持つポテンシャルの高さを感じられる時間となりました。新潟には世界に通じる食材、食文化がまだまだ隠れているのかもしれません。
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credit text:野崎さおり