子育て世代の声から生まれた全天候型施設
子育て中の親子をサポートする「地域子育て支援拠点」の数が全国1位の新潟県。テーマパークや大型公園、キャンプ場やスキー場など、こども連れでお出かけできるスポットが数多くあります。一方で、近年では雨や雪の日に限らず、夏日の増加による熱中症のリスクから、天候に左右されない屋内型遊戯施設の需要が高まっています。
ものづくりの町として知られる燕市では、子育て世代を対象に行ったアンケートの結果を受け「屋内こども遊戯施設」の建設が決まり、2025年9月6日 に〈うさぎもちハレラテつばめ〉をグランドオープンしました。0歳から12歳のこどもがたくさん動いて遊び、学ぶための工夫が詰まった〈うさぎもちハレラテつばめ〉は、週末になると予約で埋まってしまうほど人気です。

上越新幹線「燕三条駅」から車で6分ほどの場所にある〈うさぎもちハレラテつばめ〉は、完全屋内型のこどもの遊び場です。天候に左右されず思いきり体を動かして遊べるのが特徴で、大型のトランポリンやアスレチックのほか、こどもたちの年齢や発達・興味に応じて選択できる遊具があります。
1階と2階からなる施設の収容人数は220人で、平日は午前と午後、土・日曜・祝日は1時間半ごとの入れ替え制。専用Webサイトから事前予約が可能で、燕市民は利用料金が無料だというから驚きです。また、燕市外の方でも、こども400円、大人300円と良心的な価格設定です。

「ハレラテ」という名称には、「雨の日も、雪の日も、猛暑の日も、ここに来ればいつも晴れている」、そして「こどもも大人も楽しめて、気分が晴れる場所」 というふたつの意味が込められています。また、こどもたちや若い保護者の方にも方言が親しみやすく感じられるように、燕市の方言で「〜だよ」を意味する「〜らて」が使われているそうです。
3つの広場で、各年齢に適した遊び方を実現
1階は「よちよちひろば」「すくすくひろば」「わいわいひろば」という3つの広場からなり、各広場は主な対象年齢が決まっていて、各年齢に合った遊びが楽しめるようになっています。

0~2歳が主な対象の「よちよちひろば」では、緩やかな滑り台やはいはい用のスペースがあり、いろいろなおもちゃが置いてあります。

「すくすくひろば」の主な対象年齢は3~5歳。汗だくになりながらはしゃぐ子やブロックで自分のスペースをつくって遊ぶ子など、それぞれの楽しみ方を満喫できます。



この日、5歳の男の子を連れて訪れていた女性は新潟市在住で、2週間に1度ほど燕市にある実家に泊まるタイミングがあり、今回初めて〈うさぎもちハレラテつばめ〉に来たのだそうです。
「家の近くにはこどもと一緒に屋内で遊べるような施設がないので、久しぶりに全力で一緒に遊べて楽しかったです。さっきも上のネットで遊んできたんですが、こどもだけじゃなく自分も汗だくになりました」と話します。

「わいわいひろば」の主な対象年齢は6~12歳。大きいこどもたちが対象ですが、もちろん小さな子たちも遊べます。


「わくわくひろば」のメインであるエア遊具は〈うさぎもちハレラテつばめ〉のオリジナル。遊具の壁には「つばめっ子かるた」の絵柄が描かれています。
「つばめっ子かるた」は燕市のご当地かるたで、『ごんぎつね』や『手ぶくろを買いに』『かさじぞう』などの絵本の挿絵で知られる、新潟市出身の黒井健さんが描いたものです。

なお、〈うさぎもちハレラテつばめ〉の遊具は入れ替え制。このオリジナルのエア遊具以外にも、エアトランポリンや大型の遊具があり、定期的に遊具を入れ替えることで、何度遊びに来ても飽きない工夫があります。
また、3つの広場の間には「みんなのひろば」があり、ネットぶらんこやハンモックに、「ころころウォール」や「えほんコーナー」など、比較的ゆったり遊べるコーナーがあります。体を動かしたい子のみならず、静かに遊びたい子も、障がいのある子もない子も、それぞれが楽しむことのできるインクルーシブなスペースになっています。


県内最大級のネット遊具で、こどもも大人も大満足!
「わいわいひろば」の両脇にある階段またはスロープから2階にあがると、巨大なネット遊具が広がります。県内でも最大級の規模で、ネット同士をつなぐトンネルやミノムシネットなど、ユニークな仕掛けも。



こどもたちは広いスペースを有効に使って遊び、付き添う大人たちも全力で体を動かしていました。こどもと大人の楽しそうな笑い声が混じり合い、館内に響きます。
遊びや体験を通じて豊かな感性や社会性も学べる場所に
本施設について、施設長の長谷川佳小里さんに話を聞きました。
「〈うさぎもちハレラテつばめ〉では広場ごとの入室制限を定めていません。こども向けの遊戯施設はフロアやエリアごとに対象年齢が分かれていて、何歳以上は入っちゃだめ、と制限をされているところも結構多いんです。確かに、安全面を考えればそれは一つの正解であると思います。しかし、当施設はあくまで『主な』対象年齢として区切ってあるだけで、年齢による『制限』はありません」

当然ながら、小さい子の広場で大きい子が走り回るなど、安全に支障がある場面での注意は行っており、移動を促す声がけをすることもあります。制限やルールで縛ればその分管理しやすくなりますが、それは避けたいと長谷川さんは続けます。
「こどもたちは素直で賢く、『小さいこどもたちのフロアだから走り回ったら危ないよね』と話をするとちゃんと理解してくれます。それが本人の学びにもなるんです。元気な子たちは全館使って鬼ごっこを始めることもありますが、走っちゃだめ、鬼ごっこはだめ、じゃなくて、『このエリアは小さい子がいるから気をつけようね』と話して、どうしたら安全に鬼ごっこできるかを自分たちで考えるように促しています。昔の公園みたいに小さい子も大きい子もいるなかで、徐々に社会性を学びながら遊んでいくのが〈うさぎもちハレラテつばめ〉のいいところだと考えています」

「とはいえ、こどもは遊びに熱中してしまうと周りが見えなくなってしまうこともあります。こどもたちには思い切り楽しんでもらいながらも、大人がそっとバランスを取り支えること、それが私たちの役割だと考えており、日々意識しながら取り組んでいます」

〈うさぎもちハレラテつばめ〉は室内遊び場スペースの魅力はもちろんですが、休憩スペースや授乳室、おむつ替えスペースなどもあり、安心して利用できる施設です。駐車場に屋根がついているのもうれしいポイント。雨や雪の日に濡れることがなく、真夏に車内が暑くなりすぎるのを避けられるのもいいですね。


燕市が進める充実した子育て支援事業とは
〈うさぎもちハレラテつばめ〉は建設前から大きな反響を呼んでいました。理由は、総事業費約24億円の費用の大半を、クラウドファンディング型ふるさと納税や、国からの交付金でまかなうことに成功したからです。
燕市こども政策部の菊地貴之さんは、「最初はクラウドファンディングで建設費用が集まるのか不安でしたが、結果的に想定していた以上のご支援をいただけました。それは、皆さんがこの屋内型のこども遊戯場を切望されているという事実にほかなりません。クラウドファンディングを通じ、応援してくれている人がたくさんいることを知れたからこそ、ほかにはない要素を取り入れつつ皆さんのご要望を反映したいい施設をつくることができました」と、感謝の言葉を織り交ぜながら話してくれました。

燕市は「子育てするなら燕市へ」をスローガンに、子育て支援事業に力を入れており、ライフステージに合わせた120以上の充実した制度や補助があります。〈うさぎもちハレラテつばめ〉は本事業のなかでも目玉となるもの。施設運営に留まらず、今後もほかの施設や市役所と連携をしながら子育てをサポートするイベントや企画を考えていく予定だといいます。
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まだまだある! こどもが一日中遊べるエリア
〈うさぎもちハレラテつばめ〉のすぐ近くには、児童研修館〈こどもの森〉や〈燕市交通公園〉、〈燕市体育センター〉などの公共施設があり、こどもたちが一日中遊べる施設が揃っています。

児童研修館〈こどもの森〉も屋内型の施設ですが、〈うさぎもちハレラテつばめ〉が体を動かす室内遊戯がメインであるのに対し、〈こどもの森〉は積み木やレール遊び、工作コーナーなど手や頭を動かす体験学習がメインです。対象年齢は0歳から18歳まで、入館料は無料で市内外問わず登録なしで利用できます。





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〈うさぎもちハレラテつばめ〉が建設されたエリアには、記事内で紹介した〈燕市交通公園〉や〈こどもの森〉もあり、今後は飲食店などもオープンする予定です。
子育て世代の声から生まれた全天候型施設〈うさぎもちハレラテつばめ〉と周辺エリアの今後に、ますます期待が高まります。
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こむすび県にいがた
credit text:井高あゆみ photo:歸山芳文(SIIKS)