フーディはもちろん、料理人にも意義あるアワードに
荒井 いい食材や美しい自然があって、孝則さんのようなスポークスパーソンがいて、「新潟ガストロノミーアワード」のような県全体の食に光が当たるような枠組みもできている。料理人目線で考えたら、こんなに恵まれた環境はないですね。
中村 アワード創設から4年、ようやく下地が整ったというところかなと感じています。ここからが本番、新潟が世界の美食都市に並ぶデスティネーションになるよう、力を注いでいきたい。例えばですが、先に話に出たバスク地方のように。
荒井 ですね、伸びしろしかない気がします。が、最終的にレストランは店とお客様との関係で成り立つものなので、個々の料理人、レストランの発信力がますます重要になってくるのではないでしょうか。
中村 荒井さんご自身は、具体的にどんな努力や工夫をされましたか?
荒井 先ほど情報収集の話でもお伝えしたとおり、最も身近かつ手軽で、波及力の大きいインターネットは最大限に活用すべきですね。僕は25年前に開業したのですが、10年前からインスタグラムに力を入れるようになりました。オープンした頃よりも1段ギアを上げて、ガストロノミーの高みを目指せたらと考えたとき、「いまはこんな料理をつくっている」「なぜならこんな考えがベースにあるから」というのを、発信することはとても大切だと思います。
中村 その頃から「アジアのベストレストラン50」の授賞式にも、足を運んでくださいましたよね。シェフたちは、営業を休んで渡航費も自費で参加下さるので、運営側としてはいつも頭が下がる思いで。
荒井 結果、参加して得るもののほうがはるかに大きかったと感じています。まず、こんな風に料理人が主役になれる場があるのかと感動しました。華やかなステージで、スポットライトを浴びて。料理人は下積みが長く、独立しても「裏方」の仕事だとずっと思っていたので、それこそ涙が出るほど感動した。そこから、おのずと目標はより高くなり、モチベーションも上がった。国内外のシェフと横のつながりが持てたことも財産です。

中村 シェフ同士のつながりは、すごく大事ですよね。技術はもちろん、ポップアップイベントのようなアウトプットの機会も共有できる。さらにお互いのファンをシェアできることが大きい。
荒井 アワードに注目するフーディたちは、常にアンテナを張って、よりおいしいもの、これまでになかった食体験を貪欲に探し続けている人たちですからね。
中村 そうそう。SNSを見て、「あの写真で〇〇シェフの隣に映っている人は誰?」と、来店機会につながっていく。「新潟ガストロノミーアワード」も同様に、授賞式が単なる発表の場ではなく、シェフたちにとって意義のある体験の場にしなくてはと考えています。
荒井 食材の生産者さんにも、もっと光が当たるといいですよね。
中村 おっしゃるとおり。そしてまさに今年から、生産者の方々への賞も発表することになりました。近年、新潟では料理人と生産者との連携も深まっていて、レストランの料理に刺激された農家さんや漁師さんのアップデートも目覚ましい。よい流れです。
荒井 あとは僕自身ももっと知りたいのが、カジュアルレストランやローカルなストリートフードの店。新潟県に限らず、食目的で旅をするときに、昼夜レストランでフルコースもオッケーみたいな強者もいますけど(笑)、僕は地元の人がふだん、あるいは昔から食べているようなものを食べてみたいと思うので。
中村 そうですね。これまでもインフォーマル賞という特別賞がありましたが、そこも力を入れていきたいところ。回を重ねるごとに「新潟ガストロノミーアワード」の内容も少しずつ充実させ、食を愛する人の注目を集めるアワードに育てていきたいです。
Profile 中村孝則
1964年神奈川県生まれ。ファッションからレストラン、酒やシガーなどの嗜好品をテーマに幅広く執筆・発信している。「世界のベストレストラン50」「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長を12年にわたり務めた経験を持つ。著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)、共著に『ザ・シガーライフ』(ヒロミエンタープライズ)など。現ベスト・オブ・コロンビア大使、大日本茶道学会茶道教授、剣道教士八段。2024年より「新潟県推進ブランド品目アンバサダー」に就任。
Profile 荒井昇
1974年、東京都浅草生まれ。調理師専門学校を卒業後、都内のレストランなどで研鑽を積む。24歳で渡仏しパリ〈オーベルジュ・デ・シーム〉、南仏〈オーベルジュ・ラ・フニエール〉などの星付きレストランで修業。帰国後、築地の仲買として1年間勤務の後に、26歳の若さで地元浅草に〈HOMMAGE(オマージュ)〉を開業。現在『ミシュランガイド東京版』で二つ星。2025年度「アジアのベストレストラン50」では78位にランクイン。
Information
【新潟ガストロノミーアワード】
web:新潟ガストロノミーアワード
credit text:佐々木ケイ photo:小川朋央



