新潟県の西部、日本海に浮かぶ佐渡島。島の玄関口である両津港から40分ほど車を走らせると、穏やかな真野湾を一望できる〈しまふうみ〉が現れます。ここは、日本海の絶景を見ながら、こだわりのパンや料理を楽しめると話題のベーカリー&カフェ。佐渡の人気スポットのひとつで、島の食材を使ったパンや焼き菓子、魚介のランチなどが味わえます。
オーシャンビューが話題の〈しまふうみ〉ですが、近年は佐渡の自然環境に関する事業にも取り組んでいるそう。その新たな取り組みについておうかがいしました。
食の宝庫・佐渡の食材をふんだんに使う〈しまふうみ〉
真野湾沿いの高台に建つ一軒家、〈しまふうみ〉。島の果物からつくる自家製天然酵母をベースにしたパンや、魚介類から野菜、果物まで島の味覚を凝縮したランチプレートが人気です。
店長の松柴敬太さんは独学でパンづくりを勉強し、2010年に〈しまふうみ〉をオープン。「毎日異なる景色を見せてくれる真野湾と佐渡産の食材を知ってほしい」という思いから、時間を気にせずにゆっくりと過ごせるベーカリー&カフェとしてスタートしました。
扱っている食材は、ほとんどが佐渡産。パンの具材やランチプレートで使う野菜や果物、黒米、米粉も佐渡でつくられたものです。
佐渡島の中心を走る北緯38度線は、植生分布の境界線とされ、島の南北で気候が変わるため、南側ではパッションフルーツやみかん、いちじくなど南国の果物が収穫できます。〈しまふうみ〉で使われているパンには、そんな果実から取った天然酵母が使われており、さまざまな酵母とかけ合わせてじっくりと発酵させているのです。
佐渡の地形や海の大切さを食で表現
〈しまふうみ〉は近年、佐渡ジオパーク推進協議会とともに、食を通して佐渡の自然環境に関する課題にも取り組んでいます。
「佐渡ジオパークプレート」は、かぼちゃやパプリカ、南蛮エビなど、佐渡ならではの食材をふんだんに取り入れたひと皿。「食の宝島」とも言われる佐渡の味覚を季節ごとにアレンジし、海洋資源のサステナブルな取り組みを支援しています。
地球や大地、公園を意味する言葉を掛け合わせた「ジオパーク」。日本には46の地域にジオパークがありますが、そのひとつに佐渡が選ばれています。何度も起こった波の浸食と地震によって、佐渡では海側から段々と標高が高くなる階段状の地形が生まれ、地質学的にも海洋学的にも独自の文化が息づいています。
さらに〈しまふうみ〉は水産資源の回復を目指すプログラム〈ブルーシーフードガイド〉とも協力。地球温暖化や乱獲によって枯渇した魚介類を守り、代わりに持続可能な水産物を使用する取り組みとして、資源量が豊富な魚介を仕入れ、「佐渡ジオパークプレート」のメイン料理に使用するようにしています。
「こうした問題に〈しまふうみ〉が取り組むことで、学術面からはアプローチできない層にも思いを届けることができるのでは」と、食材以外の魅力の啓発にも力を入れているのです。
朝食は宿泊者だけ。真野湾を眺めながら穏やかな1日を
〈しまふうみ〉の楽しみ方はベーカリー&カフェだけではありません。カフェから少し丘を登ると見える〈SEASIDE HOUSE in しまふうみ〉は、「地中海にいるようにゆったり過ごせる」と人気の一棟貸しの宿。
玄関から入ると広々としたキッチン&リビングがあり、ふたつのベッドルームを完備。家族やグループ旅行での連泊にもぴったりで、ゆったりとした時間が過ごせます。
この宿の人気の秘密は、朝食でベーカリー&カフェ〈しまふうみ〉をひとりじめできること。
普段はたくさんのお客さんで賑わっているカフェですが、朝の7:30〜10:00は宿泊者限定の時間。海を眺められるテラス席も、オープンガーデンのブランコや芝生席も宿泊客のみの貸切となります。真野湾を眺めながら、焼きたてパンと地元の食材を使った朝食を味わう時間は格別です。
〈しまふうみ〉の楽しみ方は人それぞれ——ベーカリー&カフェにふらっと立ち寄っても、宿泊をして地中海のような穏やかなひと晩を過ごしてもOK。ランチをいただきながら、島の地形や自然に思いを馳せるのもすてきです。
絶景を目の前に佐渡の食材や自然環境を存分に味わえる〈しまふうみ〉、ぜひ足を運んでみてください。
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credit 写真提供(メインカット):ただ(ゆかい)