粟島の魅力は、ないからこそ築き上げることができる手応え
初めてのひとり旅で訪れた粟島。たくさんのタイミングや人の縁に恵まれて移住をし、ゲストハウスを開きました。暮らしが根づき、青柳さんは新しい“贅沢さ”に気がつきます。
「それまで、いい暮らしや贅沢な暮らしというのは、お金があって、もので満たされていることだと思っていました。でも、今の自分をつくっているのは、ばあちゃんの育てた野菜や漁師さんが獲った魚。そして『うちでごはんを食べていけ』というやさしさだったりします。物質的な“贅沢さ”よりも、心を豊かに保てることが本当の贅沢なのではないかと気がつきました」
でも、こんな風に“贅沢”で、もっと賑やかな場所があることも、青柳さんはもちろん知っています。それでも粟島がいいといえる魅力はなんなのでしょうか。
「移住や観光にかかわらず、いろいろな取り組みをしている島や地域はたくさんあると思います。そのなかで粟島には、自分発信で未来をつくっている手応えがあるんです。誰かがなにかをがんばっている場所に参加しても、その人の計画に乗っかっていることになります。けれど粟島では自分で楽しみを考えて、自分の方法でやることができる。1日をどう過ごすかも、なにをやるかも自分の思うままでいい。粟島は自分でいられる場所。そこがわたしにとっての魅力です」
ゲストハウスオーナーというと、世界中を旅した旅人か、理想の暮らしに邁進する探求者が多いイメージがありましたが、青柳さんはそのどちらともほど遠く、変わらない自分のペースを保っていました。明確なビジョンや統率力のある言動は必要ないのです。「うまく言葉にはできないけれど、そうと感じたらしずしずと行動あるのみ」な青柳さん。それが、粟島の雰囲気と重なります。たしかに、ここなら誰のペースでもなく自分でいられる充実感がありそうです。
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Profile 青柳花子(あおやぎはなこ)さん
新潟市出身。新潟県粟島浦村にあるゲストハウス〈おむすびのいえ」オーナー。旅行やボランティアを通じて粟島を訪れるなかで、「自分のペースで、自分らしく生けていける」場所として粟島に移住。保育士、観光船のスタッフ、民宿のお手伝いなどを経て、クラウドファンディングを活用し、古い空き家を改修して、2016 年にゲストハウス〈おむすびのいえ」をオープン。島民とのつながりが深い超地域密着型のゲストハウスとして、粟島を訪れる人と、島民との交流の場となっている。
イベント情報
credit text:コヤナギユウ photo:斎藤隆悟