日本では数少ない「再生可能な農業」の実践者
豊かな土壌を守り、土壌の質を自然に高めることを主な目的とする、再生可能な農業(Regenerative agriculture)。近年、欧米で話題となっている分野で、畑を耕さずに作物を育てたり、地元産の野菜屑やもみ殻で堆肥をつくったりと、土壌の構造を尊重し、自然と質がよくなるように工夫するものです。
これを日本で実践しているのが、新潟県上越市に住むガルシア・バランコ・エミリオさん。2016年9月から上越市柿崎地区の地域おこし協力隊に就任し、地域の農業や除雪などに従事。その後、同地域で農場〈黒岩パーマカルチャーファーム〉を設立し、現在はニワトリ、ウコッケイの卵や米、野菜を提携先の店舗で販売しています。
自然の力を活用した農法で質の高い生産を
再生可能な農業を実践するエミリオさんは、自身の稲作過程で出たもみ殻や近くの牛農家さんから譲ってもらった牛のフン、大工さんからもらったおが屑など、さまざまなものを堆肥に利用しています。6か月かけて発酵させた堆肥を、畑に撒き、土壌の栄養分として活用。もみ殻やフン、おが屑など不要なものを地域内で循環し、次の土地へと受け継ぐ農業を実践しているのです。
エミリオさんの実践は、これだけではありません。古くから自然農法として親しまれてきた「合鴨農法」もそのひとつ。農薬・化学肥料は一切使わずに、合鴨を田んぼに放って安全な米を育てています。
「田植え後から収穫まで、合鴨を田んぼに放して自由にさせているんだ。合鴨は草や小さな虫を食べてくれるし、フンをするとそれが肥料になる。今は合鴨を20羽飼っていて、すごく助かっているよ」とエミリオさん。
そのおかげもあって、お米の色や形から「JAに出せば、一等の評価が受けられるできばえだよ」と地域の人から褒めてもらうことも多いそう。また、春から秋にかけてニワトリやウコッケイも放し飼いに。鶏小屋ではなく、好きな場所を自由に歩かせることで、ストレスのない環境で育てています。
こうした活動を通して、再生可能な農業の実践者として活動するエミリオさん。農業に興味を示すようになった原点を振り返ると、その原点はスペインで過ごした幼少期にありました。