新潟のつかいかた

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集落に自生する「苔」に注目。
サステナブルな苔栽培を目指す Posted | 2022/03/18

きっかけはロンドンの大気汚染

ガラス容器に苔を入れると、そこに小さな森が出現したかのような神秘的な雰囲気に。置くだけで様になるこの「苔テラリウム」は、手軽にグリーンを取り入れたい人におすすめのインテリア。

ガラスの器に入った苔
日本には約1800種類ほど存在するといわれる苔。その奥深く美しい世界に魅了される人も多く、静かなブームとなっています。

「しかも苔って環境にもやさしいんです」という福岡県出身の朽網(くたみ)裕子さん。苔好きが高じて4年前、地域おこし協力隊として胎内市坂井地区にやってきました。昨年の春に任期を終えましたが、イギリス人のご主人と娘さんの家族3人で定住を決め、現在は苔苗や苔テラリウムを販売するショップ〈mossy mossy Japan〉を立ち上げ、活動を続けています。

冬はスノーボード、夏はボディボードを楽しみ、専用のロープを使って木に登るツリークライミングの資格も持つという朽網さん。都会で暮らす姿が想像できないほど自然のなかに溶け込んでいますが、実はロンドンでの生活が長く、このとき苔の魅力に開眼したといいます。

「ロンドンの空気の悪さに辟易していたとき、苔には空気を浄化する作用があることを知ったんです。生態系の維持においても大切な役割を担っていることがわかり、その頃からこの植物に関わる仕事ができないかと考えるようになりました」

取材を受ける朽網(くたみ)裕子さん
ロンドンの大気汚染や娘さんの教育環境を考え、2016年に日本に帰国。朽網さんは娘さんとともに2018年に、イギリス人のご主人は2020年に胎内市に移住したそう。

思い立ったが吉日。さっそく日本に一時帰国し、専門家のもとで苔栽培の研修を受けた朽網さん。ロンドンに戻り、仕事の合間をぬって苔栽培を始めました。日本に完全帰国してからも苔への愛は高まるばかり。苔栽培を生業にできないかと模索するなかで、地域おこし協力隊の制度を知ったといいます。

「胎内市の地域おこし協力隊は週休3日、副業を積極的に推奨していて、任務は地域活性化を主軸に置きながら、3年後の任期終了後を見据えて自分のビジネスモデルをつくり上げることでした。しかも胎内市は自生する苔の種類、量ともに豊富。起業を応援してもらいながら、苔栽培をこの地域の産業にできるのではないかと考えました」

朽網(くたみ)裕子さんが栽培した苔

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