山の中で仕事をして暮らす仲間がほしい
2019年9月に任期満了を迎えたエミリオさんは、独立に向けて本格的に動き出しました。協力隊の任期中からニワトリ10羽を飼い始め、独立時には100羽に。現在は上越市にある複合施設〈あるるん畑〉や地元の商店〈アルカ〉、道の駅あらい内にある〈四季彩館 ひだなん〉で、卵や米、野菜を販売しています。
「少なくても週2回は納品に行っているんだ」と言うように、現在の活動は忙しくも充実しているようです。
「鶏小屋の中に卵を置きっぱなしにすると、ニワトリが蹴飛ばしちゃうかもしれないからよく見に行くよ。あと、ストレスを与えちゃいけないから、365日、朝6時に起床して同じ時間に餌をあげている。じゃないと、動物は育てられないからね」
動物相手に休みはない。毎日早い時間に起床することに大変さを感じながらも、動物の世話と農作業、両方を続けられていることをうれしそうに話してくれました。
ここは、冬になると人の背丈以上に雪が積もる日本有数の豪雪地。山暮らしの豊かさを感じながら生活できる土地でもあると教えてくれました。
「夜は本当に静かで、冬になると雪が降っている音まで聞こえてくる。日中は鳥の声を聞きながら農作業をして、木があって、太陽があって、植物があって、動物がいる。ずっと理想として夢見てきた生活ができているんだ」
再生可能な農業も、山暮らしも実現させたエミリオさん。一方で、一緒に理想とする農業を続ける仲間を集めたいと未来に思いを馳せます。
「米をつくる人がいて、野菜をつくる人がいて、ニワトリを育てる人がいて、牛を育てる人がいる。林業の人がいてもいいかもしれない。お互いに困っているときは助け合い、一緒に生業を続けていく。〈黒岩パーマカルチャーファーム〉をそんな場所にしていきたいと思っています」
しんと静まり返った山の中に、集落から外れてぽつんとたたずむ赤い屋根の一軒家。ここを拠点に仲間づくりにも本腰を入れていきたいと意気込むエミリオさん。豊かな土壌を次世代へと受け継いでいくために、エミリオさんの挑戦はまだ始まったばかりです。
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credit text:長谷川円香 photo:日下部優哉