新潟のつかいかた

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〈大地の芸術祭〉を通して、
十日町の暮らしや文化を
自分の言葉で伝えていく | Page 2 Posted | 2022/03/29

人とのつながりを大切にできる仕事を

学生時代は観光学部で文化人類学を専攻し、バックパッカーとしてたびたび東南アジアを旅した佐藤さん。「旅行ではなく、現地で生活をしたい」と1年間ラオスの国立大学に留学もしました。そのなかで、日本で当たり前だと感じていた価値観が当たり前ではないと気づいたといいます。

インタビュー中の佐藤あゆさん

「ラオスでは50以上の民族が独自の文化をもって暮らしていたり、フィールドワークで訪れたマレーシアの大学では中国人やマレーシア人、インド人などさまざまな民族の学生がいました。それでも、お互いの宗教や文化を尊重しながら一緒に授業を受けている。それは、日本では経験したことがない感覚でした。異なる文化的背景や他国の価値観を知るなかで、“豊かさ”ってなんだろう、自分は何を大事に生きていきたいんだろうと自問するようになりました」

そんな経験を通し、いつか東南アジアでボランティアツアーを企画したいと考えるようになった佐藤さん。まずは旅行の基本的な知識や経験を積めるように大手旅行代理店に就職し、カウンター業務からプランの組み立て、販売までひと通りの業務を学びました。

しかし、次第に個人が旅行の受け手となる〈Airbnb〉などのサービスが出てくるようになり、人とのつながりを軸とした旅行業に興味を抱き始めます。加えて、旅行代理店で本と喫茶を楽しめるコミュニティスペースの立ち上げに携わる経験も。価値観が似ている人同士がつながっていく様子を見て、こうした仕事をしていきたいと考えるようになっていました。

地域の内側に入ることで、自分ごとに

雪が積もった越後妻有里山現代美術館 MonET
大地の芸術祭の拠点施設でもある、〈越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)〉。

大地の芸術祭に携わるようになったのは、友人から〈こへび隊〉に誘われたことがきっかけ。軽い気持ちで参加したものの、美しい景色や地元の人と触れ合うなかで、次第に十日町の魅力に惹かれていきました。

それでも移住までは考えていなかった佐藤さん。しかし大地の芸術祭をテーマとしたスタディツアーに参加し、半年間十日町市に通いながら地域課題に対する解決策を探るなかで、地域の外からではなく、この地域の一員になりたいと考えるようになりました。

「同じ地域に何度も通ううちに顔がわかる人が増えてきて、もっと力になりたいと思うようになったんです。都内に住んでいるとどうしても限界があるし、いつまでも自分の言葉で地域のことを話せないもどかしさを感じていました。東京での仕事にもやり甲斐を感じ、生活も充実していたので迷いはしたものの、最終的には地域の人のあと押しが力となって移住に踏み切りました」

ワークショップの様子

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