輸出量・輸出金額ともに過去最高に。ますます加速する、海外での日本酒ブーム
2013年にユネスコ無形文化遺産に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録されてから、早6年。いまなお和食は世界から注目されています。そんな和食に続き、特にここ数年、高い注目を集めているのが日本酒です。
日本酒造組合中央会の発表によると、日本酒の輸出量・輸出金額は2010年から9年連続で過去最高を更新し続けていて、2018年の輸出金額は初めて200億円を突破。9年前と比較すると、輸出量は約2倍、輸出金額は約3倍にものぼっています。日本有数の酒どころである新潟の日本酒も、もちろん注目されています。
しかし日本人の私たちでも、材料を厳選し、時間をかけてていねいにつくられた日本酒を分類する「特定名称酒」の違いをはじめ、知らないことが意外と多い日本酒。日本酒の世界に初めて触れる海外の人に、その独特な味わいや魅力を伝えるのは、一筋縄ではいきません。
ブームとはいえ、まだまだ日本酒を知らない人たちも
「海外で日本酒の展示会やイベントを開催すると数百、数千人単位のお客さんがいらっしゃるので日本酒の人気を実感します。また当社では海外のレストラングループ会社のプライベートブランドの日本酒をつくっていたりもします。海外での日本酒ブームは、おそらくみなさんが想像している以上のものだと思います」と話すのは、新潟県新発田市にある1881年創業の菊水酒造に勤める、中国出身の李海蘭さん。
「でも『MADE IN JAPANのお酒なら、どれも日本酒でしょ?』と、日本酒も焼酎も同じお酒だと思っている人は海外にはまだたくさんいます。日本だと日本酒はお米からつくられているのは当然のように知られていますが、海外だと『原料は何?』というところから話が始まりますから」
1972年に日本で初めて火入れ(腐敗・劣化を抑えるための加熱処理)をしていない缶入り生原酒の商品化に成功し、2017年には累計出荷数量3億本を突破した生原酒〈ふなぐち菊水一番しぼり〉などの日本酒で知られる菊水酒造。その営業部グローバルディヴィジョンという部署で、海外営業を担当している李さん。世界20か国以上にある販売代理店と一緒になり、現地の人々や飲食店に向けた菊水酒造のお酒のプロモーションをされています。
語学留学をきっかけに新潟での暮らしを始め、今や人生の半分を過ごした新潟は「もう第二のふるさとですね」という李さん。学生時代は中国に戻り、日本語教師になる道も考えたことがあるという李さんですが、日本酒の奥深さに魅了されたことにより、人生が大きく変わったのでした。