日本酒の魅力を、海外の人へと伝えるために
世界各国に赴き、新潟の日本酒の魅力を伝えている李さんいわく「日本酒に対するイメージや、好まれる味わいは国によってまったく違います」とのこと。
「例えばアメリカですと、価格と味わいのバランスやコストパフォーマンスが良い日本酒が選ばれます。アメリカの次に取り扱いが多いのがタイですが、タイの方々、特に女性に好まれるのが甘口の日本酒。中国や台湾をはじめとする華僑の国では銘柄が重視されますね。『大吟醸か純米大吟醸なら間違いないだろう』と、名の知られた高級な日本酒が選ばれます。ちょっと良いワインやシャンパンを飲むのと同じ感覚で日本酒を飲まれている方が多い気がします」
日本酒の繊細な味わいを説明するときも、それぞれの国の人が受け入れやすい手法に変えているそうですが「やっぱりていねいにコミュニケーションをとりあうのが一番ですね」と言う李さん。
「日本酒を売りにいっているわけですが、最初からお酒の話をするとやっぱり嫌がられることが多いです。まず新潟や新発田がどんな場所なのか写真を見せながら話をし、それから菊水酒造がどんな会社で、どんなお酒をつくっているかを説明すると、自然にとんとんと話が進むんですね。あとお客様との会話を通して『こういう見方もあるのか』と、逆に自分のなかになかった考えを教わることも多いのでとても勉強になります。
大学で学んだ異文化コミュニケーションもそうですが、専門学校で学んだホテルやレストランの知識も、どれも役に立っていて。実は全部つながっていたんだなと感じることもあります」
日本酒とともに、中国と新潟の架け橋になることを目指して
日本酒の魅力を世界に広めるために、努力を惜しまず邁進している李さん。そんな彼女が今一番待ち望んでいるのが、東日本大震災から続く中国による日本産食品の輸入規制が緩和され、李さんにとって“第二のふるさと”である新潟の日本酒が再び母国の中国へと輸出できるようになること。
「昨年11月に輸入規制のうち新潟県産米については解除され、輸出が再開されました。私が菊水酒造に入社した目的のひとつが中国に日本酒を広めることでしたので、一日でも早く日本酒についても輸入規制が解除されたらいいなと思っています。準備は進めているので、解除されたらすぐにでも中国へ行きたいです」
また「日本文化のひとつである日本酒をきっかけに、中国はもちろん世界中の方々と日本がつながればいいなと考えています。お酒がある席では国や文化をこえて心が通い合う。そういうのを見ると、お酒が持つすばらしい力を感じます。もちろん、飲み過ぎには注意しないといけませんけどね」
国や文化を超えて、人と人の心をつなぐ、おいしい日本酒。新潟の日本酒とともに、さまざまな国と新潟の間に橋を渡す李さんの活躍は、まだまだ続きそうです。
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credit text:林みき photo:斎藤隆吾