異素材ドッキングが得意な〈高橋ニット〉
次に訪れたのは、Milestoneを展開する〈高橋ニット〉の本社兼工場。
同社代表取締役社長の高橋慶至さんの案内のもと、特別に工場を見学させてもらいました。
そもそもニットとは“編み物”ということ。
織物は、縦の糸と横の糸を交互に織り込んで布地をつくりますが、ニットはたった1本の糸をループ状の連鎖で編み上げたものを指します。どうやらアリスさんが今日着ているブラウスは織物のようですね。
「ニットといえば羊毛の太い糸で編まれたセーターを思い浮かべていましたが、編み方のことだったのですね。Tシャツもニットに該当するだなんて知りませんでした。私たちの日常にはたくさんのニットアイテムがあるんですね」とアリスさん。
自社で製造している〈高橋ニット〉には、次の8つの作業工程があります。
1、問い合わせ・相談
2、企画・デザイン
3、編立
4、裁断
5、縫製・リンキング
6、仕上げ・検品・アイロン
7、出荷
8、販売
注目ポイント①編立の工程
「編立(あみたて)」とは、ニットを編むこと。上記写真は編立するための機械「横編機(よこあみき)」で、針を上下させながら横方向(左右)に糸を往復させて編地を生成します。
「弊社は、丸編機に比べ針が太く編み目の大きい横編機をメインに使っています。まずはニットの各パーツを横編機で編み立てて、できた編地を裁断した後に、各パーツの編地を縫製してつなぎ合わせ、ひとつのニット製品をつくります」(高橋さん)
注目ポイント②裁断
次に、編み立てた布地を裁断します。
非常に細かい編み目で薄手のハイゲージニットの場合、伸縮性が高く布地がヨレやすいため、裁断する位置や縫い合わせる位置を機械で示すことができません。
加えて服のトレンドの移り変わりが早く、パターンの種類も幅広いため、都度機械に位置を覚えさせるほうが非効率。
そのため、縫い合わせる位置を人の手によって慎重に確認していきます。
「弊社の横編機は16ゲージまであり、レンジが広いのでさまざまな表情の編み目のニットをつくることが可能です。仕上がりはどれも伸縮性に富んでおり、心地よいフィット感があるのが特徴です。
さらに、ニットと異素材を組み合わせる異素材ドッキングも得意としています。このようにバラエティ豊富なデザインがうちの強みのひとつですね」(高橋さん)
かっちりしたコートなどのニット製品が得意な〈ウメダニット〉
次に訪れたのは、〈ウメダニット〉の本社兼工場。
営業部の山田香織さんに工場内を案内してもらいました。
「弊社のニットはローゲージ、ミドルゲージ、ハイゲージに対応しています。シンプルなセーターだけでなく、コートなどのアウターからスカートやパンツといったボトムスまでパターンをいかしたさまざまなアイテムづくりを得意としています」(山田さん)
注目ポイント①3DCAD(3Dキャド)
企画では、ニットのパターンや設計図を立体でつくるソフト「3DCAD」を介して、体を動かした時の服の動きやフィット感など仕上がりイメージを確認します。
注目ポイント②丸編機
編立では、服のパーツごとに1枚の平たいニットを編む「横編機」のほかに、円筒状に編む「丸編機(まるあみき)」を活用しています。
丸編機は50本近くの糸を同時に回転運動で編み立て、円筒状に編まれた生地を生成。それをカットして反物をつくります。横編機がパーツごとに生地を編むのに対して、丸編み機は大きな生地を編み立て、そこから各パーツを切り出して使用します。
「丸編機では主にカットソーやアウターなどに使われるシンプルなデザインのニットをつくります。オリジナルのジャージー生地に横編機でつくった付属を合わせた企画もウメダニットならではです」(山田さん)
注目ポイント③リンキング
この丸いミシン「リンキングミシン」は、ネックパーツなど体を通す部分に伸び縮みするよう編み込むためのもの。
「ネックパーツを通常のミシンで縫い付けてしまうと固定化されてしまい、ネック部分が広がらず着る時に頭が入りません。リンキングでしたら伸び縮みするので、頭を通す際には広がり、通した後は元の状態に戻ります」(山田さん)
リンキングはニットの細かな編み目ひとつひとつに針を刺していく非常に繊細な作業。名工にしかできない熟練の技が光ります。
ニット製品ができ上がるまでの一部始終を目の当たりにしたアリスさんは、「大量生産のファッションとは一線を画したクオリティに感動しました。一着一着に愛着がわきそう」と大絶賛でした。
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