新潟のつかいかた

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田園風景に本、雑貨、パン。
わざわざ行きたい
新潟・燕三条カフェ4選 Posted | 2022/01/28

新潟の燕市と三条市は、金物や洋食器などで有名なモノづくりのまち。

燕三条エリアの工芸や文化に触れる旅へ出かけたら、その帰りにぜひ立ち寄りたいのがほっとひと息つけるカフェ。

田園に囲まれた〈KKVEL〉、中世ヨーロッパを思わせる〈LAND.〉、本と喫茶〈SANJO PUBLISHING〉、小さな複合施設〈ツバメコーヒー〉。

わざわざ足を運ぶ価値がある個性豊かなカフェを、モデルでカフェ好きの斉藤アリスが巡りました。

田んぼに佇む薪窯カンパーニュと自家焙煎コーヒー店〈KKVEL〉

見渡す限り広大な田んぼと青空が広がるなか、突如現れるシックな建物がカフェ〈KKVEL(クベル)〉。

KKVELの外観
田んぼに囲まれているKKVEL。

ここは薪窯カンパーニュと自家焙煎コーヒーのお店で、2021年3月にオープンしました。

郊外にもかかわらず、取材中もひっきりなしにお客さんが訪れるほどの人気ぶりです。

KKVELの入り口
写真左の看板の亀は、下の亀がカンパーニュを、上の亀がコーヒー豆を表しているそう。

店外には窯での燃料である薪が山積みに。パンを焼く香ばしい香りが風に乗って漂ってきます。

さっそく、アリスさんとお邪魔しました。

店内の窓から広がる田園風景
店内からは田園風景を一望できます。

たっぷりの日差しが差し込む店内は、どこを切り取ってもおしゃれでスタイリッシュ。

人気の席は、もちろん窓際。
窓の位置が低く設計されているので、着席して初めて圧巻の田んぼビューを堪能することができます。

窓際の席に座った斉藤アリスさん
着席すると、ちょうど目の前に田んぼが広がります。田んぼの中心でコーヒーをいただけます。

オーダーしたのは、しっとりふわふわの台湾カステラと本日のコーヒーであるグァテマラ。

台湾カステラとコーヒー
台湾カステラ(290円)、本日のコーヒー(450円〜)。

台湾カステラをはじめ、KKVELで焼いたパンや焼き菓子は、三条市産の小麦や村上市の笹川流れの塩を使用しており、新潟県内の“おいしい”が詰まった一品です。

コーヒーのこだわりは、焙煎の見極め。

豆の種類によって焙煎を定めているのではなく、豆の状態を見ながらベストな焙煎度合いに調整しているそう。

窓から見える田園風景
窓の向こうには東京スカイツリーと同じ高さの弥彦山が。冬は一面の雪景色が、夏は青々とした緑が広がるそう。

「台湾カステラの生地の下にはザラメがついており、ジャリジャリとした食感のアクセントが楽しい。コーヒーも分厚いマグカップだから保温力が高くて、ゆっくりのんびり飲めますね」と、アリスさん。

KKVELの看板メニューであるカンパーニュの製造現場も見学させてもらいました。

巨大な窯
奥行き5メートルもある巨大窯。薪で700度近くまで高温にしたあと、蓄熱させながら300度くらいまで下げ、その余熱でパンを焼き上げます。遠赤外線効果により、外はかっちり、中はもっちりした食感に。
ビッグサイズのカンパーニュ
直径20センチほどありそうなビッグサイズのカンパーニュのできあがり。

カンパーニュはできたてよりも2〜3日寝かせて食べると味にまとまりが出てくるのだそう。

実際に食べてみると、酸味がアクセントのあっさり素朴な味わいなので、何にでも合いそうです。焼いて食べるともっちり感がアップします。

おすすめはカンパーニュにクリームチーズをのせてハチミツをたらす食べ方と、薄くスライスして生ハムと一緒におつまみ感覚でいただく食べ方。

毎日の朝食が楽しくなりそうな一品です。お土産にひとつ、いかがでしょう。

Information

KKVELの看板

【KKVEL】
address:新潟県三条市西潟1-28
tel:090-6505-0312
access:JR信州本線「保内駅」から車で約6分
営業時間:10:00〜17:00(16:30L.O.)
定休日:月・火曜(祝日は除く)
駐車場:8台
備考:公式サイトではカンパーニュやコーヒーは通販可能

築90年超の医院を中世ヨーロッパの世界観にリノベした〈LAND.〉

壁面に這う蔦(つた)が美しい一軒家のカフェ〈LAND.(ランド)〉。

〈LAND.〉の外観
瓦屋根があるクラシカルな建築でありながら、洋風建築の要素もミックスされたレトロモダンな外観。

実はここ、築90年以上にもなる病院をリノベーションしてカフェに生まれ変わったのです。

入り口を入ってすぐ
右手のアーチ状の窓は、病院の受付だった名残。

中世ヨーロッパのまち並みをイメージしてつくられたLAND.。

タイル地の床は、まるでイタリアの石畳のようです。

〈LAND.〉の店内
右手と左手それぞれ客席が分かれており、各フロアの床の貼り方や席のレイアウトが異なるので、座る場所によって違った雰囲気を味わえます。
廊下の中央にあるシンボルツリー
長い廊下の中央にあるのは栗の木でできたシンボルツリー。本棚になっており、コーヒータイムのお供に一冊選ぶのも楽しそう。
ワッフル&ベーコンとコーヒー
ワッフル&ベーコン(900円)、LAND.ブレンド(660円)。

今回はLAND.で一番人気のワッフルと、たっぷり2杯は飲めるフレンチプレス式のコーヒーをオーダー。

ワッフルを味わうアリスさん
窓からたっぷりの日差しが入り込む店内。庭には四季折々の草花が。

新潟県産〈ゆきちから〉の小麦粉を使用したワッフルは、もちもちとした弾力を楽しめます。

大ぶりなので食べ応えも抜群。メープルシロップをかけ、添えられた燻製ベーコンと一緒に口へ運べば、クセになる甘じょっぱさでぺろりと1枚食べられちゃいます。

窓際のカウンター席
座る場所によって趣が異なるうえ、どこに座っても絵になる空間が広がります。

コーヒーは長岡市の焙煎スペシャリストである〈ナカムラコーヒーロースターs〉の豆を使用。

フレンチプレスで提供しているから、豆の油分や香りなどをダイレクトに味わうことができます。

景色を見ながらコーヒーを堪能

「広々とした空間だからゆっくり過ごすのに最適。Instagramにあげたくなるカフェですね」とカフェ好きのアリスさんも絶賛。

さて、今度来る時はどの席で一服しよう?

Information

LAND.の入り口

【LAND.】
address:新潟県三条市旭町1-8-21
tel:0256-55-5438
access:JR弥彦線「北三条駅」から徒歩約6分
営業時間:11:00〜17:00
定休日:月・火曜
駐車場:12台

アイデアを刺激する本と定番ナポリタンで一服
〈SANJO PUBLISHING〉

三条市の中央商店街に構える、本と喫茶の店〈SANJO PUBLISHING(三条パブリッシング)〉。

〈SANJO PUBLISHING〉の入り口
入り口には床から天井まで伸びる大きなガラス窓が。実は婦人洋品店だった名残で、ここはショーウィンドウだったそう。

三条市はモノづくりのまちとして栄えているため、本のセレクトもモノづくりのインスピレーションになるようなものを、あらゆるジャンルからピックアップしています。

入ってすぐの巨大な本棚
店内の巨大な本棚には古本を中心に約800冊並ぶ。毎月100冊ほど増えていくそう。

本を読む習慣がない人でも手に取りやすいように、本の並びにも工夫が。

入り口近くはラフで定番のものを、店の奥に進むにつれ文芸やデザインなどコアな内容の本が置かれています。

画集をながめるアリスさん
絵本や画集も取り揃える幅広いラインナップ。

しかも、購入前の本でも喫茶を利用しながら読むことが可能。

読書に対してのハードルを下げ、もっと本を身近に感じてもらいたいからなのだとか。

お気に入りの一冊を選んだら、さっそく腹ごしらえをしましょう。

ナポリタン
喫茶店の定番メニューのナポリタン(650円)。

生クリームとバター、隠し味にたまり醤油を加えた濃厚なソースが、もっちりとした太麺に絡んで食欲をそそります。

大きなテーブルでナポリタンとコーヒーをいただく
コーヒー(450円)。

ちなみにアリスさんが食事しているこの大きなテーブルは、小学校の図工室で使用していたもの。

本屋でもコンビニでも立ち読みができず、本に出合うシーンが限られているなかで、なるべくフランクに本を読んでもらえるように、ぴかぴかの高級テーブルではなく、絵の具がはねたこのアトリエテーブルを採用したそうです。

「これなら気兼ねなく長居できちゃいますね」(アリスさん)

2階の喫茶スペース
1階を見下ろせる2階の喫茶スペース。ゆったりした空気が流れているので、マイペースに読書できます。

「自分の居心地がよい場所を見つけて、じっくり本を読めるのはいいですね。クリエイティビティが刺激されます」と読書に没頭するアリスさん。

喫茶店として利用しようと思って入ったら、思いがけず本に目を奪われてしまう。おもしろい本を探しに来たら、コーヒーとナポリタンのいい香りに誘われてしまう。

そんな、本と喫茶のシナジーが生まれる不思議な空間でした。

Information

入り口の窓に書かれた「本と喫茶」の文字

【SANJO PUBLISHING】
address:新潟県三条市本町2-13-1
tel:090-1940-4485
access:JR弥彦線「北三条駅」から徒歩約9分
営業時間:11:00〜19:00
定休日:火・水曜
駐車場:あり

ランドリーにヘアサロン、読書、看板犬。多様な過ごし方ができる〈ツバメコーヒー〉

新潟県出身のイラストレーター・大塚いちおさんが手がけたツバメのロゴが目印の〈ツバメコーヒー〉。

〈ツバメコーヒー〉の外観

新潟のちょっといいものから生活が豊かになりそうな雑貨のセレクト。

建築やデザイン、アート、哲学を中心に店主の思考を反映した書籍が並ぶ本棚。

併設されたヘアサロンと入場料制のブック&コインランドリー。

看板犬の“黒スケ”、そしてカフェ。

ツバメコーヒーは、思い思いの過ごし方ができる小さな複合施設でもあります。

〈ツバメコーヒー〉のカフェスペース
日差しが降り注ぐ開放的なカフェスペース。

世の中がどんどん便利で豊かになっていく一方で、排除されてきた非合理性やムダの中に、思ってもみない楽しさがあるのではないか。

そんな視点を取り入れたのが、新たにオープンした入場料制のブック&コインランドリー〈WASH AND BOOKS〉。

本棚とコインランドリーが並ぶスペース〈WASH AND BOOKS〉
多種多様な本がずらり。洗濯の待ち時間にどれを読もう? 提供:ツバメコーヒー

洗濯をしながらあえてムダな時間を生成し、本を読むインプットの時間に変えていきます。

当初ヘアサロンを盛り上げるためにオープンしたツバメコーヒーですが、現在はそんな偶然の発見を楽しむ場所として、さまざまな要素が加わりながら今もなお、姿を変え続けています。

壁一面の本棚から本を選ぶアリスさん
本棚の前がフォトジェニックスポット。

カフェスペースにある大きな本棚には、アートフリークな人にはたまらない本がたくさん。

「普段読まないジャンルだからこそ、インスピレーションを得られそう」とアリスさん。

看板犬の黒スケとツバメブレンドとガトーショコラ
人懐っこい看板犬の黒スケが見守るなか、じっくり丁寧にハンドドリップされたツバメブレンド(500円)とガトーショコラをいただきます。
コーヒーを味わうアリスさん
本を読みながらのんびりコーヒーブレイク。

「クセがなく後味もすっきりしたコーヒーだから、毎日飲めそう。ガトーショコラは濃密なのにあっさり軽い口当たり。甘さもほどよくてホイップと相性抜群ですね」(アリスさん)

生活雑貨が並ぶ棚
生活雑貨販売スペースでは、モノづくりが盛んな燕三条エリアならではの金物が並びます。

コーヒーを飲みにきたのに、ついつい買い物もはかどってしまいそうです。

ロゴつきのコーヒー缶
ツバメコーヒーのロゴがあしらわれたコーヒー缶。レトロでかわいいカラーリングは、キッチンに置くといいアクセントになりそう。

目的とは違った楽しみ方を発見できるツバメコーヒー。
終始ワクワクが止まりませんでした。

Information

ツバメコーヒーの丸看板

【ツバメコーヒー】
address:新潟県燕市吉田2760-1
tel:0256-77-8781
access:JR弥彦線「吉田駅」から徒歩約13分
営業時間:11:00〜17:00
定休日:月・火・水曜
駐車場:あり

旅のついでに寄ったつもりが、旅の目的にもなりうる燕三条エリアのユニークなカフェ。一度訪れてみる価値はありそうです。

※価格はすべて税込です。

credit model:斉藤アリス photo:ただ(ゆかい) 
text:藤田佳奈美