冬ならではの海鮮と地元との交流で温まる佐渡旅へ

東京駅から上越新幹線で新潟へ。そこから佐渡汽船に乗り換え、冬の日本海を進む。この日は季節風の影響で海は大しけ。船が大きく揺れ、まるでアトラクションのようですが、それもまた冬の佐渡らしさ。約2時間半の船旅を経て両津港に到着すると、そこには凛と澄んだ空気と、どこかほっとする島の景色が待っています。
今回の旅のテーマは、冬だからこそ楽しめる佐渡のグルメと、人との温かな交流。モデルの斉藤アリスさんが、女子ふたり旅で冬の佐渡を巡ります。

冬の佐渡は、寒ブリ、南蛮エビ、ズワイガニ、そして加茂湖の牡蠣など、海の恵みが最高潮を迎える季節。観光客が比較的少ない時期だからこそ、島の人とゆっくりお話する機会も増えます。出会う人との距離も自然と近くなるのが魅力です。
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湖で牡蠣? 加茂湖の牡蠣漁を見に行く

最初に向かったのは、佐渡島の中央部に広がる加茂湖。牡蠣漁船〈あきつ丸〉に乗って牡蠣棚を見に行きます。

冷たい風を切って船で5分ほど走ると、湖の中央に整然と並ぶ牡蠣棚が見えてきます。水深は7〜8メートル。9メートル×4.5メートル規格の牡蠣棚からは、約5メートルのロープが何本も吊るされ、その先に牡蠣が育っています。

ひとつの牡蠣棚につきロープは約100本。3〜4か月で身がつき、最終的にはむき身で約300〜400キロもの牡蠣がとれるのだそう。

採取時は、機械でロープを巻き上げ、洗浄しながら牡蠣がカゴへと吐き出される仕組み。

その様子を間近で見たアリスさんは、「これから食べる牡蠣を、育てて採取するところから見られるなんて、贅沢すぎます」と笑顔に。

「湖で牡蠣?」と驚く人も多そうですが、加茂湖は日本海とつながる汽水湖。淡水と海水が混じり合い、栄養豊富なプランクトンが多い環境のため、通常2年かかる牡蠣の養殖を、1年で良質な状態に育てることができます。

「湖で育てる牡蠣は海で育てる牡蠣より磯臭さがなく、ミルキーで食べやすいんですよ」と漁師さん。

加茂湖には、佐渡金北山からのミネラル豊富な伏流水をはじめ、雪解け水や大地からの湧水が流れ込み、牡蠣の生育に適した環境が整っています。
さらに、佐渡周辺には、雑菌が少なく水質の安定した海洋深層水もあり、出荷前の仕込みや管理の工程で活用されることもあるようです。加茂湖の恵まれた環境で育つ牡蠣のシーズンは11月中旬〜4月いっぱいまで。
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とれたて牡蠣を味わう、
大パノラマの湖畔のレストラン〈湖ASOBi〉

牡蠣漁のあとは、そのまま湖畔へ。訪れたのは、船小屋を改装して2021年にオープンしたカフェレストラン〈湖ASOBi〉。

ここは〈あきつ丸〉を運営する漁師さんが手がけるお店で、加茂湖を一望できる特等席。
北風が強い冬でも、大佐渡山脈が風を和らげてくれるこの場所だからこそ、穏やかな湖を望むロケーションが成立しています。
いただいたのは、佐渡と加茂湖の恵みを存分に味わえる料理たち。

加茂湖産牡蠣がたっぷり入り、オイルには牡蠣の旨みがじんわり溶け出しています。「バゲットですくって、一滴残らず食べたい……」と思わず口にしてしまうほど。

大ぶりで脂がのったブリカマは、香ばしく焼き上げられ、身はふっくら。牡蠣のアンチョビパスタも大ぶりの牡蠣がふんだんに使われていて食べる手が止まりません。

佐渡加茂湖産牡蠣ドリアも、惜しみなくたっぷり盛られたチーズとホワイトソースに、プリプリの牡蠣が絡み合う冬ならではのひと皿。

窓の外に広がる加茂湖の景色は、まるで一枚の絵画のよう。時間がゆっくりと流れ、心までほどけていきます。心ゆくまで牡蠣を堪能したアリスさんでした。

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夜は島人と旅人とが交流できる場、
〈焼とりやじま〉へ!

夜は、島の人との距離がぐっと縮まる場所へ。向かったのは、地元客と観光客が自然に混ざり合う〈焼とりやじま〉。

「佐渡ならではの食材はもちろん、会話も楽しんでほしいんです」と話すのは店長の矢島拓さん。

「旅先でどんな人と出会うかで、旅全体の印象は決まると思うんです。だからカウンターでは、できるだけ話しかけるようにしています」と、ひとり客の心細さなどにも寄り添いながら、佐渡に来た人々を歓迎しています。

会話に夢中になっているうちに、気づけば目の前の炭火からいい香りが。焼き上がったのは佐渡牛の串焼きや、イカの口(トンビ)、佐渡の地鶏。こうした貴重な佐渡の食材が味わえる、島でも数少ないお店です。

なかでも印象的なのが、佐渡金山へ向かう人々に親しまれた地元銘菓「沢根だんご(池田菓子舗)」を炭火で焼いた「焼き沢根だんご串」。

なめらかなこしあんを包んだ団子を焼き、ほんの少し塩を振ることで、甘じょっぱい味わいに。餅もとろっとした食感になり、思わずおかわりしてしまうおいしさです。
これは常連さんと一緒に試作を重ねて生まれたメニューと聞いて「一緒にお店を育てていく感じがいいですね」とアリスさん。


気づけば隣り合った客同士が自然と会話を交わし、初対面とは思えない距離感で笑い合っていました。アリスさんも「ひとりで来ても、ちゃんと構ってもらえるから寂しくない。アットホームで楽しかった」と、すっかり島の夜に溶け込んでいました。
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まだまだ夜は終わらない、
はしご酒で行きたい〈HOSTEL perch〉

旅の締めくくりは〈HOSTEL perch〉へ。ゲストハウスとしてスタートしたこの宿は、食事提供はないものの、エントランスを兼ねたカフェ&バーが、旅人と地元の人をつなぐ場所になっています。

元板前でもあるオーナーの伊藤 渉さんがつくるお酒と、佐渡の空気感。ここでは、長期滞在者や何度も通うリピーターなど、自然と濃いつながりが生まれています。
「冬は苗場、夏は佐渡。新潟全体で若い人が行き来できる流れをつくりたい」という想いのもと、旅する人が自分の力で稼げる仕組みづくりにも挑戦中。
「人がちゃんと混ざるような場所を提供しているからこそ、熱量に引き寄せられて集まってくる人がいるんでしょうね」とアリスさんも納得の表情。

エントランスの奥で酒盛りをしていたので、アリスさんたちも混ぜてもらうことに。

「佐渡で農業をやろうとしている若い人がいたりして、おもしろい人たちが自然と集まってくる場になっているんですね」とアリスさん。
佐渡に来た理由、今日食べたもののこと、明日の予定のこと。そんなたわいないやりとりが重なって、旅は“訪れるもの”から“帰ってくるもの”へと変わっていく。ここで生まれた会話が、また佐渡に足を運ぶ理由になりそうです。
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旅人にやさしい佐渡は、冬がねらい目

荒々しい海を越えた先に待っていたのは、滋味深い冬の味覚と、人のぬくもり。「繁忙期である夏の賑わいも楽しいですが、冬の佐渡はとてもゆったり回れるのが良いですね」とアリスさん。
観光地を巡るだけじゃない、「また帰ってきたい」と思わせてくれる冬の佐渡が、ここにありました。次は冬の佐渡の食材を使って料理するホテルステイを紹介します。
credit model:斉藤アリス photo:ただ(ゆかい) text:藤田佳奈美

