新潟県は明治時代まで人口が一番多かったことをご存じですか? 東京や兵庫を抑え、1892年まで人口数トップを誇っていました。これは越後平野が米の栽培に適していたことに加え、海の貿易路として恵まれたため、比較的裕福だったからと言われています。
その証拠に、新潟には「豪農の館」と言われる格式高い民家や、立派な庭園を持った寺院が多く点在。それらをひとつなぎにしたドライブルートが「にいがた庭園街道」です。村上市を起点とし、国号290号線を“ノスタルジックライン”として、日本の原風景に包まれながら「新潟の美の世界」を堪能することができます。
「にいがた庭園街道」に登録されている庭園・建築は全部で28施設。その中でも城下町風情漂う村上市での、隠れた名所を3つご紹介します。
【 Spot 1 】
寺院や水田、里山が一望できる〈普済寺(ふさいじ)〉
曹洞宗の寺院である〈普済寺〉には回遊式日本庭園(建物からだけでなく、園内を回遊して鑑賞する庭園)があります。これは現在の住職である第三十三世覚隆住職が約40年間を費やして築き上げたもので、本堂を中心に1000トン近い石が配置されています。築山上部の薬師堂前から庭を見下ろせば、寺院や水田、里山が一望でき、越後・村上の豊かさを感じることができるはずです。
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【 Spot 2 】
上杉家の“鬼神”が開いた〈長楽寺(ちょうらくじ)〉
戦国時代中期、上杉家の“鬼神”といわれた本庄繁長(ほんじょう・しげなが)が開基した、曹洞宗の寺院〈長楽寺〉。もともとは別の地にあったものが本庄氏とともに村上へ移り、参道入り口に上品下生仏、境内に三十三番観音を祀っています。本堂の裏手にある中庭は山を借景とした庭園で、環境との調和が感じ取れます。
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【 Spot 3 】
幽玄な〈竹灯籠まつり〉でタイムスリップ「黒塀(くろべい)通り」
城下町の四大要素である城跡・武家屋敷・町屋・寺町が今も残る、全国的にも珍しい村上。なだらかな平野の中に突きだした「臥牛山(がぎゅうさん)」には、かつての村上城の礎が残り、地元の人には「お城山」と呼ばれ親しまれています。そのお膝元、旧町人町と寺町をつなぐ「黒塀通り」は、かつて松尾芭蕉も歩いたと言われる趣のある小路です。これは、2002年に地元の人々が城下町らしい昔ながらの景観を取り戻そうと「黒塀一枚千円運動」をおこし再建したもの。460メートルにわたり黒塀が再生されています。
もし、秋口に村上を訪れるなら〈むらかみ宵の竹灯籠まつり〉に合わせてみるのはいかがでしょうか。これは、城下町の魅力をもっと感じてもらいたいと市民が中心になって行っている催しで、黒塀通りをはじめ、2万本の竹灯籠が小路を照らします。風情あるまち並みに浮かび上がる夜の景色は一見の価値あり。ろうそくで揺らぐ幻想的な雰囲気の中、琴、三味線、尺八、和太鼓といった古典楽器がやさしい音色を響かせます。
毎年10月の第2土曜・日曜の2日間開催され、2019年は10月12日、13日の開催です。古き良き秋の城下町にタイムスリップできることでしょう。
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第34回国民文化祭・にいがた2019、第19回全国障害者芸術・文化祭にいがた大会
2019年9月15日からは新潟県で「国民文化祭、全国障害者芸術・文化祭」も開催されます。国民文化祭は、「文化の国体」とも呼ばれる国内最大の文化の祭典です。今年は「文化の丁字路~西と東が出会う新潟~」をテーマに、新潟県を7エリアに区分し、地域の文化や特徴などを生かした特色ある文化イベントを県内各地で開催。「にいがた庭園街道」は「村上・新発田エリア」のテーマのひとつとなっています。
まだまだ暑い日は続きますが、暦の上ではすでに秋。文化と芸術の秋のはじめに、新潟・村上めぐりはいかがでしょうか。