おうちで過ごす時間が多すぎて、もうやることがない……。そんな今だからこそ、おうちで新潟に関する書籍や雑誌を読んで、新潟の知識を深めてみませんか?
新潟に関する書籍は、グルメや日本酒、歴史に関するものなど幅広く出版されています。そんな新潟本を調査するべく、新潟駅直結の本屋〈そだたべbooks〉さんにお邪魔して、オススメの本を聞いてきました!
新潟のものづくりや文化の背景を知ることができる
〈そだたべbooks〉
JR新潟駅西側連絡通路沿いにある、職人がつくった銘品がずらりと並ぶ〈ぽんしゅ館クラフトマンシップ〉。包丁やカトラリー、マグカップなどの金属加工製品から、手ぬぐいやタオル、ガラス工芸品などさまざまな商品を取り揃えています。
その一角にあるのが、新潟に関連する書籍を集めた小さな本屋〈そだたべbooks〉。「クラフトマンシップで販売する商品の背景を伝える書籍がほしい」と、〈ぽんしゅ館 新潟驛店〉でも書籍の販売をしていた松尾雄一さんに声がかかったそうです。
当初は新潟のものづくりに関する本を中心に置いていましたが、新潟の文化に関する本や、立ち寄った新潟県民が自分の故郷に関して知識を深められるよう、市町村別の本も置くようになっていきました。開店時から変わらないのは、「情報だけでなく、ずっと読み継がれる本を」というコンセプト。ただ情報を追うだけではなく、「新潟のことを知りたい!」と思ってもらえるように読者の心に留まる本を選ぶようにしています。
松尾さんが地元・新潟の文化に関心を持つようになったきっかけは、ワーキングホリデーで滞在したニュージーランドでの経験から。日本の文化について聞かれても、うまく答えられなかったのだそうです。「自分の生まれた土地こそ、アイデンティティであり、ちゃんと知らなければ!」と感じるようになりました。
本を通じて新潟の文化に詳しくなった松尾さんに、「いまだからこそ読みたい新潟本」と称して、オススメ本を聞いてみました。
オススメ3選 〜新潟本から、新潟と自分を振り返る〜
まずは、新潟の郷土食や旬の食材について学べる『にいがたのおかず』から。新潟には多くの郷土料理がありますが、県内でも地域によって料理方法や味つけが異なります。例えば、野菜をたっぷり使った新潟の郷土料理「のっぺ」。一般的には里芋やにんじん、鶏肉などを煮た汁物料理ですが、山間地では銀杏やクワイ、海に面する地域では鮭やいくらを入れるなど、土地によって入れる食材も変わってくるそうです。
こうした土地による違いや、郷土料理のレシピ、新潟野菜の説明が掲載され、料理本としても読み物としても楽しめる一冊。
おうち時間が長い今だからこそ、この本を読んで新潟の料理をご自宅でつくってみてはいかがでしょうか?
Information
『にいがたのおかず』
著者:新潟県食生活改善推進委員協議会
出版社:開港舎
価格:1676円(税込)
「忍耐強く、粘り強い」「誠実で、勤勉」「一度心を許すと、仲良くなりやすい」など、新潟県民の県民性は書籍や雑誌、インターネットなど、さまざまな場所で語られています。しかし、「その精神がどのようにしてつくられたのか」について雪や水、教育など分野ごとに縦割りで読み解いた書籍はあまりありません。
生きていくなかで、仕事や住まい、苗字など、変わっていくことはたくさんありますが、自分の出身地は生涯変わることはありません。先行きが見えない不安定な今だからこそ、出身地というアイデンティティについて考えてみてはいかがでしょうか。
Information
『新潟県 県民性の歴史』
著者:伊藤充
出版社:新潟日報事業社
価格:1980円(税込)
芸術や芸能、産業、政治、音楽など多分野で活躍する新潟人に焦点を当てた雑誌『LIFE-mag』。その中から、市民が運営する映画館として〈シネウインド〉を立ち上げた斎藤正行さんを特集したvol.7をピックアップ。
多くの映画ファンに愛された新潟市古町にあった名画座〈ライフ〉の閉館、映画評論家・萩昌弘氏(故人)が新潟日報に寄せた寄稿をきっかけに、市民にひと口1万円の出資を広く呼びかけ、「市民が運営する映画館」を立ち上げた斎藤さん。その軌跡を辿ったインタビューからは、斎藤さんの強い想いと熱量が伝わってきます。
舞台や映画館をはじめ、エンターテイメント業界が厳しい状況に置かれている現在。1985年に新潟で何の後ろ盾もなく立ち上げた映画館から、組織づくりや運営体制など運営の基盤について学んでみてはいかがでしょうか。
Information
『LIFE-mag vol.7【シネウインド編】 風をきり、闇をゆけ、そして光となれ』
発行所:株式会社エイチ.ケイ コネクション
価格:924円(税込)
ものづくりの本とmade in新潟の品を一緒に贈る
新潟を知る場所として活用できる〈そだたべbooks〉。クラフトマンシップが隣にあるので、工芸品と一緒に本を購入して、遠く離れて暮らすあの人に贈るのもいいかもしれませんね。
そんなときにオススメしたいのが、『世界一の金属の町 燕三条の刃物と金物』。現代の暮らしに寄り添う工芸品で人気を集める〈中川政七商店〉が厳選した燕三条地域の金物を紹介しています。
燕三条地域でなぜ金属加工業が発展したかという背景から、各メーカーの一押し商品の詳しい説明、工芸品を買える場所や使える場所の案内まで、燕三条地域のものづくりの入門書として最適な一冊です。
調理用具を揃えると同時に、モノの背景を知るために読んでみるのもいいのではないでしょうか。燕三条産製品のカタログ本の役割も果たしているので、先に本を読んでいつか新潟を訪れた際には、その工場を回って見学するのも良さそうですね。
Information
『世界一の金属の町 燕三条の刃物と金物』
編:中川政七商店
出版社:平凡社
価格:1,760円(税込)
どんな土地にも、その土地で育まれた文化があり、歴史があります。なかなか外出ができない今だからこそ、新潟本を読んで理解を深めてみてはいかがでしょうか。
そして、新潟を訪れた際には、県内職人の銘品が並ぶ〈クラフトマンシップ〉と、新潟本を取り揃える〈そだたべbooks〉にも足を運んでみてくださいね。
Information
credit text&photo:長谷川円香