豊かな植生があり、独自の伝統芸能や食文化があることから“日本の縮図”とも言われる新潟県・佐渡島。そのユニークな土地柄のせいか、日本有数の酒どころ・新潟においても本土に引けを取らない酒蔵が佐渡にはあります。今回はそんな佐渡にある5つの酒蔵を紹介します。
【北雪酒造】超音波や音楽でお酒を熟成
音楽演奏、超音波による熟成や遠心分離機による酒の抽出など、さまざまな方法でイノベイティブな日本酒づくりを行っているのが〈北雪酒造〉。個性あふれる離島・佐渡の酒蔵のなかでも一際異彩を放つ存在で、日本国内にとどまらず世界中にファンがいるとも言われています。
例えば、「波に揺られた酒はうまい!」「波に揺られている水は真夏でも腐らない」という漁師の古い言い伝えをもとに、「たらい舟」での熟成にチャレンジ。味・香りともに引き立つことがわかると、超音波による振動でその効果を再現し、「新酒の鮮度と古酒の熟度の両立」を実現しました。ほかにもシンセサイザー奏者・喜多郎氏の曲に日本海の冬の波音をミックス、24時間休むことなく聴かせた長期熟成酒〈音楽酒〉や、大吟醸酒だけでなく純米酒や普通酒までさまざまなもろみを遠心分離機で抽出した限定酒など、革新的な日本酒づくりに挑戦し続ける酒蔵です。
【尾畑酒造】日本酒特区第1号。廃校を学校蔵に再生
〈真野鶴〉で知られる〈尾畑酒造〉は、少子化によって廃校となった校舎を酒蔵として利用しています。〈学校蔵〉と名づけられ、佐渡島の真野湾を臨む高台の上にある旧西三川小学校が、老舗酒蔵の第2酒蔵として蘇りました。尾畑酒造では、この学校蔵が元小学校であることから、「酒づくりの学びの場」としても活用し、酒づくり体験プログラムを実施しています。この活動が認められ、2020年5月には尾畑酒造が「日本酒特区」第1として認定され、これをきっかけに佐渡が全国で初めての特区となりました。
〈学校蔵〉でつくられた〈学校蔵〉ブランドは毎年新しい酒質に挑戦しており、尾畑酒造本社でつくられる人気銘柄〈真野鶴〉とともに、注目しておきたい銘柄です。
【天領盃酒造】若い力が躍動する佐渡の酒蔵
蔵元・加登仙一さんが28歳と、若い力が活躍するのが〈天領盃酒造〉です。蔵人の多くはIターン移住者で、平均年齢は29歳。使用する米の9割を佐渡産にこだわり、品質を高水準で均等にするために契約栽培制を採用し、直接農家に米づくりを依頼。全量自社精米を徹底し、「若者から若者へ、日本酒の魅力を広める」をモットーに酒造りに取り組んでいます。
仕込みごとに改良を行い異なるレシピで仕込んでいるため、同じ銘柄でも仕込みタンクごとの変化も楽しむことができます。
蔵元を継いでから酒蔵の立て直しを進め、醸造設備を一新。体制が変わる前から続く主力銘柄〈天領盃〉とは別に、特約店限定銘柄〈雅楽代(うたしろ)〉を2019年春にリリースするなど、新しい取り組みも精力的に行っています。この秋には、敷地内にクラフトビールの醸造所もオープンする予定です。
SNSを使ったプロモーションやオンラインイベントの開催と、若い世代ならではの感性で、佐渡で酒づくりに取り組む造り手です。
【逸見酒造】佐渡唯一の山廃仕込み。島で一番小規模の酒蔵
佐渡には最盛期で200以上の酒蔵があったと言われています。そのうち現在も残っている酒蔵はわずか5つ。明治5年創業の〈逸見酒造〉はそのなかでももっとも小規模な酒蔵です。小さな酒蔵とあって、1回に仕込む量は人の目が届く範囲を基本としており、「素顔の美酒」をモットーにていねいで繊細な酒づくりに定評があります。
なかでも、人気銘柄の〈至(いたる)〉は、TVで紹介されたことで全国区の知名度となり、仕込む数も少ないことからプレミア感が高まり、より多くのファンを集めています。
【加藤酒造店】全量佐渡産米で醸造。生粋の佐渡の酒
オール佐渡産「made with Sado」を掲げる酒蔵が〈加藤酒造店〉。佐渡の5つの酒蔵のなかでも先陣を切って「全量佐渡産米」による酒づくりを達成し、島内の指定契約農家による「無農薬栽培米」「自然栽培米」の利用にもいち早く取り組んだ、これぞ「佐渡の酒づくり」というスタイルを一貫しています。
代表銘柄である〈金鶴〉は佐渡以外では特約店のみでしか販売されておらず、新潟県内でも「佐渡の地酒」として高い評価を受けています。都内のアンテナショップでは〈金鶴〉のほかに、〈拓(ひらく)〉や〈風和(かぜやわらか)〉など希少な銘柄を購入することができます。
今回紹介した佐渡の酒蔵のお酒は、都内の3つのアンテナショップで購入することができます。季節や時期によって、取り扱っている銘柄は異なりますが、遠方への外出を制限される今だからこそ、アンテナショップをめぐってみてはいかがでしょうか。