新潟のつかいかた

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お米県? それとも日本酒県?
新潟県は日本一の「棚田県」!
ふるさとの誇りを未来へつなぐ
新潟の棚田遺産 | Page 2 Posted | 2023/03/08

新潟県が「棚田県」たる所以

新潟県の棚田

棚田にはきちんとした定義があり、勾配が20分の1(水平距離20メートルに対して1メートルの高低差)以上であること、とされています。新潟県の山間部の特徴として、傾斜農地が多いことも新潟県が全国有数の「棚田県」になりえたということがいえます。

「今でこそ越後平野は、コシヒカリをはじめお米の一大産地となりましたが、灌漑技術が乏しい時代、信濃川などの大きな河川が流れている平野部は水害も多発し稲作に向いていませんでした。その頃は中小の川の近くや山間部での稲作が盛んで、越後平野を囲むように丘陵地や地滑り地帯が多くある新潟では、その地形を活かした多くの棚田が築かれたと言われています。

また、棚田地域の農作物のブランディングが難しいなか、『新潟県産の米』という強いブランド力があることが県内の棚田を支え、『棚田県』であり続けることができている所以ともいえます」

もうひとつ、「つなぐ棚田遺産」に新潟県から8市町36地区の棚田が認定された大きな理由があると水柿さんは言います。

「『つなぐ棚田遺産』では自治体から申請のあった棚田を各県がとりまとめて推薦し、それを委員会で選考しています。担い手側の棚田を守っていこうという意思や活動が多くあり、そうした棚田地域の情報を自治体や県がしっかりと拾い上げて推薦していただけたことが、新潟県が日本一の選定数を獲得できた理由です。したがって、新潟県は棚田保全に対する気持ちがアツいと言えるのではないでしょうか」

棚田県に行こう! 新潟県の名棚田4選

新潟県棚田MAP

昨年で20年目を迎え、個人会員約560人、団体会員28団体を集める〈ECHIGO棚田サポーター〉や、棚田保全活動の参加企業や団体を募る〈棚田みらい応援団〉など、新潟には棚田を守っていこうという雰囲気が官民双方から感じられると、水柿さんは言います。そこで水柿さんに新潟県内36の「つなぐ棚田遺産」のうち、印象的な棚田を選んでいただきました。

岩首昇竜棚田:オーシャンビューと棚田の融合

岩首昇竜棚田
提供:佐渡棚田協議会

佐渡島にある「岩首(いわくび)昇竜(しょうりゅう)棚田」は、日本海から昇る朝日と棚田の絶景が見られる「オーシャンビュー棚田」です。景観の美しさだけでなく、アウトドアブランド〈スノーピーク〉との取り組みをはじめ、県外、島外との交流事業にも積極的で理想的な棚田保全活動を行っている好例です。

旧佐渡市立岩首小学校が「岩首講義所」として棚田保全の事務所として機能し(今後場所は移転予定)、周辺には「養老の滝」などの観光スポットもあるので佐渡観光の一環として連動できている点もポイント。佐渡島だけでも7つもの「つなぐ棚田遺産」があるのはスゴイ!

【岩首昇竜棚田(MAP:31)】
所在地:新潟県佐渡市岩首
面積:16.7ha

星峠の棚田:芸術の里にあるアートな棚田

星峠の棚田
提供:(一社)十日町市観光協会

〈大地の芸術祭〉が行われる十日町市にある「星峠(ほしとうげ)の棚田」。棚田自体が芸術祭の作品のひとつかと思うような風景が広がります。全国から訪れる観光客の受け皿となる宿泊施設や飲食店が周辺にあるのも、棚田を保全していくうえで重要なことです。

NPO法人越後妻有(つまり)里山協働機構が活動をしている棚田でもあり、十日町市の女子サッカーチーム〈FC越後妻有〉の選手たちが棚田の担い手として移住・就農しています。全国でも類を見ない先駆け的な棚田プロジェクト!

【星峠の棚田(MAP:4)】
所在地:新潟県十日町市峠
面積:30ha

池谷・入山の棚田:地域の人たちが紡いだ「奇跡の棚田」

池谷・入山の棚田
提供:十日町市

岩首昇竜棚田、星峠の棚田が多くの観光客が訪れる棚田なら、「池谷・入山の棚田」は戸数6戸という限界集落から奇跡の復活を果たした棚田。棚田の担い手たちが中心となって、YouTubeチャンネル「元限界集落から地域おこしチャンネル」で積極的に情報発信をしています。その内容は、米づくりや雪かき、家畜の世話、稲刈り機の修理まで!……YouTubeのチャンネル登録者数はなんと2万人!

現地を訪れなくても棚田と暮らしをどうやってつないでいくか、それを教えてくれるのが池谷・入山の棚田の担い手たち。農業体験イベントの開催やブランド米〈山清水米〉の販売など多岐にわたり活動しています。

【池谷・入山の棚田(MAP:6)】
所在地:新潟県十日町市中条庚
面積:17.8ha

結東の石垣田:石造りの棚田に広がるトレイル棚田

結東の石垣田
提供:津南町

津南町の「結東(けっとう)の石垣田」は、明治初期に開田した比較的新しい石垣の棚田です。土質の影響や石工が多かったことから西日本には多く見られますが、東日本、特に新潟県内の棚田では珍しい石造りで、かつての火山噴火で石だらけだった場所を切り開いたと言われています。

石垣田を通る道がトレイルコースとして整備されており、その迫力と美しさを間近で体感することができます。

【結東の石垣田(MAP:18)】
所在地:新潟県津南町結東地内
面積:5.7ha

棚田とは細く長いつき合いを

「各地域の棚田がメインの観光スポットになることはなかなか難しいと思っています。でも、国内には本当に美しい棚田が数多く残っており、その棚田を保全している多くの人たちがいます。

まずは仕事や観光目的で訪れた地域をゆっくり好きになっていく過程で、棚田を見に行ってみよう、棚田の活動に参加してみよう、と少しでも多くの人が棚田に関わっていってほしいと思っています。きっとどんなまちにもすばらしい棚田があるはずです」

新潟の山あいを旅していると、車窓からいくつもの棚田を見ることができます。それぞれのストーリーをもつ棚田をぜひ楽しんでみてください。

credit 写真提供(1ページ目メインカット):佐渡棚田協議会

新潟県内の全8市町36地区の「つなぐ棚田遺産」はこちら!
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