新潟のつかいかた

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雪上キャンプから
野外アクティビティ、防災まで。
今、新潟のアウトドアシーンが
おもしろい! Posted | 2023/08/30

日本海を挟んで、北には佐渡島・粟島が、南には飛騨山脈や越後山脈など、自然豊かな立地から、一年を通してさまざまな景色を見せてくれる新潟県。昨今、そんな同県が、アウトドアの聖地として盛り上がりをみせているのを、みなさんご存知でしょうか? いったいどのように盛り上がっているのか、2023年7月18日に都内で開催された新潟県のイベントの登壇者である紫竹陽介さん、村山英明さん、斉藤友香さんにお話を聞きました。

新潟特有の野外アクティビティの魅力

新潟屈指のアウトドア専門店〈WEST〉で事業部長を務める、〈パール金属株式会社〉の紫竹陽介さんは、「新潟は、ほぼすべての野外アクティビティを楽しめる、贅沢な場所」だと話します。

〈パール金属株式会社〉紫竹陽介さん
〈パール金属株式会社〉WEST事業部事業部長 紫竹陽介さん。

「新潟は、海・山・川・離島と豊かな自然があるのはもちろん、雪解け水の影響で、2週間ごとに季節の雰囲気がガラッと変わるんです。なのでわれわれは、細やかな四季に応じて、さまざまな遊びを楽しんでいます。また、冬の野外アクティビティにおいては、北海道や長野と並ぶほど盛ん。特にスキーやバックカントリーを楽しむ人は、新潟は非常に多いといわれています」(紫竹さん)

越後妻有大厳寺高原キャンプ場や越後妻有松之山温泉スノーパークの管理・運営に携わる、〈有限会社湯米心まつのやま〉の村山英明さんは、毎年ゴールデンウィーク頃まで雪が残る新潟の山間部の立地から、数年前より春もキャンプ場を開放。想像以上に反響があったんだとか。

新潟県のキャンプ施設をマッピングしたポスター
新潟全域に点在するキャンプ施設。

「越後妻有大厳寺高原キャンプ場は、ゴールデンウィークでも雪が2メートル近く残っているんです。なので、監修先のスノーピークとも相談し、5月もキャンプ場を開放することに。最初は半信半疑で始めたものの、蓋を開けてみると、想像以上にお客さんが足を運んでくれました。この時期は、真っ白な残雪と青空とブナの新緑のコントラストがとても美しい。夏や秋とはひと味違う魅力があります」(村山さん)

雪原にたくさんのキャンプテントが並んでいる
残雪キャンプの様子。撮影:山田 努

近年話題を呼んでいる、雪上キャンプ

また、雪深い新潟の風土を活用し、雪の上でテントを張る「雪上キャンプ」なるものが、近年話題を集めています。2020年に、スキー場の常連さんからの要望でひっそりとスタートしましたが、翌2021年、YouTuberに取り上げられてから注目を集め、2022年には1000人以上の人が、新潟へ雪上キャンプをしに訪れました。

〈有限会社湯米心まつのやま〉村山英明さん
〈有限会社湯米心まつのやま〉常務取締役 村山英明さん。
夜の雪山でたくさんのキャンプテントがライトアップされている
真冬の雪上キャンプの様子。撮影:山田 努

「正直、ここまで人気になるとは思いませんでした。しかし、雪上キャンプは意外と夏より快適。テントに暖房器具を入れれば中は暖かいですし、夏のように虫もほとんどおらず、雪の上なのでテントも汚れません。澄んだ空気のなか、満点の星空を眺めながら、雪で冷やしたビールを飲むのは最高です」(村山さん)

新潟のキャンプシーンを女子目線で盛り上げようとさまざまな活動を行っている〈GOOD MELLOW CAMP〉代表の斉藤友香さんは、県外の友人が雪上キャンプに興味を持ってくれたことが、とてもうれしかったそう。

「雪上キャンプに県外の友人を誘ったら、すごくおもしろがって、すぐに新潟に遊びに来てくれました。とても新鮮な体験だったようで、『来年も絶対やりたい!』と言っていましたね。そのように楽しんでくれる人がいるというのは、雪上キャンプがいかにユニークであるかを証明していると思います」(斉藤さん)

達人たちによる、新潟アウトドアのススメ

そんな新潟のアウトドアシーンを知り尽くしているお三方に、個人的に注目しているアウトドアライフと、お気に入りのアウトドアグッズについて聞きました。

庭先の土手に焚き火台とチェアを設置した様子
写真提供:村山英明

村山さんのお気に入りアウトドアグッズは「焚き火台」。ウィスキーを片手に、チェアリングしながらゆったりと焚き火を眺めるのが、楽しみのひとつだそう。

バーベキューグリルで肉とピザを焼く
写真提供:紫竹陽介

昔、紫竹さん自らがバイヤーを担当していたという、〈weber(ウェバー)〉というメーカーのアメリカンバーベキューグリル。これを使うことで、留学していた当時の想い出が蘇るといいます。

メスティンのフライヤーでフライドポテトを揚げている
写真提供:イゲタ金網

最近キャンプで天ぷらを揚げることにハマっている斉藤さん。この〈メスティン〉のフライヤーは使い勝手が良く、さらに料理が楽しくなるんだとか。

「カヤックフィッシングができる新潟市角田浜の〈燦燦BASE〉というキャンプ場は、海に隣接した角田浜唯一のキャンプ場。日没時には、海に沈む美しい夕日が見えます。近くには、パンクバンド・Hi-STANDARDのベースボーカル、難波章浩さんが手がけるラーメン屋〈なみ福〉や、海抜0メートル地点から登る角田山などもあり、登山やカヤック、サップなどを楽しんだあとにラーメンを食べるという、新たな流れも生まれそうです」(紫竹さん)

〈GOOD MELLOW CAMP〉斉藤友香さん
〈GOOD MELLOW CAMP〉代表 斉藤友香さん。

「私は今、テントサウナにハマっています。新潟の海は透明度が高く、サウナから海へ飛び込むのがとっても気持ちがいいんです。また、新潟にはいろんな川があるので、毎回どの川にしようかと、場所を探すのも楽しみのひとつ。あと、この2、3年でSUPの道具を買う友人がぐっと増えました。キャンプ×海遊びが、新潟ではより身近になってきていると感じますね」(斉藤さん)

新潟での春と夏のキャンプの様子をまとめたパネル
会場のパネルには、過去にWESTが作成したコンテンツが。新潟には一年を通して、こんなにも豊かなアクティビティがあることが見てとれます。
秋と冬のキャンプの様子をまとめたパネル

「『365日ハイテンションでいたい』というのが私のモットーです。なのでいつも、SUPやカヌー、魚釣り、スキー、テレマークスキー、バックカントリースキーと、数あるアクティビティのなかから、次の休みの予定を立てるのが楽しみで。そのなかでも日常的によくやっているのは、折りたたみの椅子を持って山に登り、景色を楽しむチェアリング。特に冬、リフトに乗って山頂で折りたたみ椅子をセット後に、一面の銀世界を眺めながら飲むコーヒーはたまらないですね。その後山頂からゲレンデトレッキングで下山を楽しむんです」(村山さん)

アウトドアを通して、県の防災を強化

イベント『24サバイバルキャンプ』のポスター

また、新潟のアウトドアシーンをつくるのは、遊びの観点だけではありません。新潟ではいま燕三条の大手アウトドアメーカー5社を中心に〈新潟県アウトドア協会〉の立ち上げを目指しています(2023年秋予定)。その事務局を担当するWESTは、〈にいがた防災ステーション〉にも参画。活動の場を広げています。

一見アウトドアと防災はかけ離れた印象ですが、WESTは以前より、全国各地にアウトドアグッズを防災アイテムとして提供していました。今回の参画では、「そそる遊びで学べるコンテンツ」をテーマに、WESTが以前より考えていた、アウトドアと防災の関係性を強化する取り組みを行っていくといいます。

タブレットで展示されていた「サバイバルキャンプ」参加中の子どもたちの様子
「サバイバルキャンプ」参加中の子どもたちが、友だちと一緒に真剣にお題に取り組んでいる様子。

「現在は、テレビのサバイバル番組のように、さまざまなお題を通して生きる力を子どもたちが学ぶ『24サバイバルキャンプ』、夜に体育館でテントを張って寝ることで、災害対策の予行練習をする『タイイクキャン』などのコンテンツを企画しています。シンプルに楽しいアウトドアをキーに、気づかぬうちに防災の学びが溶け込んでいる、そんなユニークなプログラムを、次々に展開していく予定です」(紫竹さん)

野外アクティビティから防災まで、アウトドアを基点にさまざまな広がりを見せる新潟。キャンプ好きなら、ますます目が離せない場所になりそうです。

credit text:山田佳苗 photo:黒川ひろみ