明治時代、当時はまだ知られていなかった医療看護の世界に飛び込んだふたりの女性の生き様を描く、NHKの連続テレビ小説『風、薫る』。主人公のひとりである一ノ瀬りんのモチーフとなった人物は、上越市の知命堂病院・初代看護婦長の大関和(おおぜきちか)です。
ドラマの舞台となるのは架空の町・高越(こうえつ)で、ロケは上越市内で行われました。今回、新潟ロケに合わせて同市内で行われた取材会の様子をレポートします。また、明治期から時代を超えて現存する建物など、100年前にタイムトラベルした気分を味わえるスポットをご紹介します。
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山頂に残る雪と、壮大な日本海を眺めながらの撮影

新潟編のロケは5月11・12日の2日間にわたって行われました。ロケ見学ができたのは初日の午前中、女学校の舎監として新潟に滞在しているりんを直美たちが訪ね、一緒に日本海を見に行くシーンです。
日本海が一望できる場所で30分程度ロケを見学したあと、場所を移して取材会が行われました。

「新潟を訪れてみて、いかがですか?」という記者からの質問に、見上さんは「雪がかかる山と日本海が同時に見られるロケーションのなかでの撮影は貴重な体験で、新潟での展開がより楽しみになりました」と答えました。
上坂さんは「新潟に来るのは初めてで、今回とても楽しみにしていました。天候にも恵まれ、視界いっぱいに広がる海を見ながら撮影ができて、幸せでした」と今朝の撮影の様子を振り返りました。

最後に、ドラマを楽しみにしている地元の方へのメッセージを求められ 、上坂さんは、「新潟が舞台になる時期は、りんと直美のふたりにとって大切な転機となります。今後の放送や展開、ぜひ楽しんでいただきたいです」と呼びかけました。
見上さんは、「ドラマのなかでは有名な飴屋さんが出てきます。そういう新潟の⾷や⽂化、空気に触れることでりんも元気をもらっていたのだと思うので、私も撮影期間中は⽬⼀杯、新潟を堪能して過ごしたいなと思います」と、新潟での生活がりんに与えた影響について交えながら話しました。
撮影期間の2日間、上越で過ごすことを楽しみにしていたふたり。りんや直美が歩いている姿を想像しながらまち歩きしてみると、いつもの風景が少し違って見えるかもしれません。
現代も暮らしに息づく伝統の技と、趣のあるまち並み

上越市高田といえば、風情の残る町家と総延長約12キロで日本一とも言われる雁木(がんぎ)のまち並みが有名です。この通り沿いには、明治時代はもちろん、それ以前の江戸時代の建築を現代に伝える建物が残っています。

高田駅から歩いて約11分、江戸時代末期の町家建築を今に伝える貴重な建物が〈旧今井染物屋〉です。市内に現存する建物のなかでも最大級で最も古く、かつては多くの職人や使用人が住み込みで働いていたといわれています。
〈旧今井染物屋〉の雁木は「造り込み式」という古い形態で、雁木の通路部分の上に母屋の2階や物置などの部屋がせり出している構造です。明治期の職人たちの手仕事や、雁木と共に生きた人々の息遣いが、その空間から伝わってきます。

〈旧今井染物屋〉では不定期で職人・手仕事作家の催しが開かれています。手仕事など実演・販売や、「バテンレース」の制作体験などもあり、歴史ある建物でワークショップが楽しめます。
カレンダーは毎月更新。出展に関するお知らせは公式のInstagramからご確認ください。
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モダンな西洋文化がいち早く流入した「文化の拠点」
1911(明治44)年、上越市高田のまちに突如として現れたモダンな建物が、現在の〈高田世界館〉です。〈旧今井染物屋〉からは歩いて約6分の場所にあります。

当時は〈高田座〉という芝居小屋として開業し、のちに映画館となりました。日本最古級の現役映画館として、当時の趣をそのまま残しています。館内はスクリーンを囲むアーチ型で、2階席がある独特の構造。高田城を治めていた榊原家の家紋「源氏車」をモチーフにした天井装飾も見応えがあります。

実は、〈高田世界館〉が誕生した年は、オーストリアのレルヒ少佐によって上越に「スキー」が日本で初めて伝来した年でもあります。医療の先進地だけでなく、エンタメやスポーツまで、当時の上越はまさに最先端のトレンド発信地でした。
〈高田世界館〉は支配人がセレクトする作品上映のほか、映画と映画の間の時間や上映のない時間帯に館内の見学も可能です。まち歩きの途中に立ち寄って、レトロなスクリーンや圧巻の天井装飾、映写室を見学するのもおすすめです。
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明治時代の上越市高田は、モダンな西洋文化がいち早く流入した「文化の拠点」として、活気に満ちあふれていました。
1910(明治43)年に、旧陸軍第13師団長・長岡外史中将によって建てられた〈旧師団長官舎〉は、〈高田世界館〉の建物ができた前年に建築されました。雁木通りからは少し離れた場所にあり、〈高田世界館〉から徒歩約20分の立地です。
当時、軍都として栄えた高田を象徴する美しい2階建ての木造建築で、1階は公的な空間として洋風に、2階は私的な部屋として和風につくられました。当時はこのような和洋折衷の構造を「長岡式」と呼んだといわれています。

現在は文化財として一般公開され、館内を無料見学できます。また、レストランとしても活用されています。
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創業400年、日本一歴史のある飴屋へ

〈旧師団長官舎〉からさらに少し足を延ばして8分の場所に、日本で一番古い飴屋があります。
創業は1624(寛永元)年、江戸時代から400年以上の歴史を持つ〈髙橋孫左衛門商店〉は、明治時代にも皇室への献上や文豪・夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場するなど、飴ひと筋で営業を続けてきました。

『東海道中膝栗毛』の著者、劇作家の十返舎一九も来訪し、『越後道中記・金の草鞋』のなかで、〈粟飴〉や当時の店の様子が紹介されています。

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上越のまちで、明治の面影を探して
NHKの連続テレビ小説『風、薫る』のロケ地となった上越。まちを歩けば、100年以上前の建物が今もカフェや映画館として愛され、当時の老舗が今も変わらず営業を続けています。
ドラマをきっかけに上越を訪れた際は、さまざまな場所を歩いてみてください。「明治の面影」を感じられるまち並みは、『風、薫る』の世界をきっと身近なものにしてくれるはずです。
credit text:井高あゆみ

