鮭を守りながら、“遊び場”としての三面川も守る
三面川で釣りをしている人たちのなかには、長野や群馬など、県外から遠征している人の姿も。サーモンフィッシングを始めたばかりの人から、鮭だけでなくさまざまな魚を狙って30年以上三面川に通っている玄人まで、さまざまな人が集まっていました。
サーモンフィッシングができるスポットは、新潟県村上市以外にも北海道をはじめ北日本にいくつかあります。しかし「それでも村上の三面川で釣りたい!」という熱心なファンが毎年集まっているそう。
それは、地域の人とのあたたかい触れ合いや、人の手があまり入っていない自然のままの環境、そして何より鮭に関わる独自の文化を体感できる、村上ならではの魅力があるからにほかなりません。そんな村上らしさの背景には、佐藤さんをはじめ、地域の人たちの絶え間ない努力があります。
「漁協では、鮭の数を維持するために稚魚の放流や人工ふ化などを行っていますが、バランス良く野生種を保てるように、あくまで自然のお手伝いをするというスタンスで取り組んでいます。1000年以上続く鮭の歴史を絶やすことなく、次の時代へと受け継いでいきたいんです」
鮭は漁についての規定が法律で厳しく定められており、これまでは個人が釣ることはできませんでした。しかし全国に先駆けて実施した北海道の取り組みを参考に、漁協を中心に実行委員会を結成して数々の課題をクリアし実現した「三面川鮭有効利用調査」。サーモンフィッシングを通じて村上の食文化や伝統文化などを知ってもらい、全国の人との触れ合いの場所をつくり、文化の継承につなげる取り組みなのです。
また三面川は、秋のサーモンフィッシングの地として名高いのはもちろん、春のマスや夏のアユなど、一年を通して多彩な釣りを楽しめるのも魅力です。
「漁に関しての取り組みをしている漁協は多いけど、川を“遊び場”ととらえて、力を入れているところはまだ少ない。鮭釣りは、コアな釣りファンだけではなく、一般の人々の参加も増えています。この調査を通して、鮭の魅力、釣りの楽しさをもっと広げていけたらと思っています」
鮭のまちとして、人々の生活に鮭が強く根づいている村上市。市内には、ここでしか食べられない鮭料理を提供しているお店がたくさん。また、鮭の歴史や生態、文化を学べる日本初の鮭の博物館〈イヨボヤ会館〉も、ぜひ立ち寄ってほしいスポットです。
釣って、食べて、学んで……1000年続く村上市ならではの鮭文化を、ぜひ五感で体感してください。
Information
credit text:丸山智子 photo:中田洋介