村の人たちに守られている安心感
地域おこし協力隊として活動することで、スムーズに地域に溶け込めたといいます。
「“協力隊としてお菓子を開発している人”という、わかりやすい肩書きがあるおかげで、地域の人たちが私に興味を持ってくれて、早く距離が縮まったように感じます。移住前、村の人たちが閉鎖的だったらどうしようという不安もありましたが、杞憂でした。我が家に積もった雪を見たご近所さんが『雪下ろしはまだ大丈夫だよ』と教えに来てくれたり、加工センターで作業していると遊びに来てくれる人もいます。職場のスタッフさんたちとは定期的にランチに行きますし、先日は村のお母さんたちと“飯寿司(いずし)”づくりに挑戦しました。新参者の私たちをみんなで見守ってくれている、そんな感じです」
地域おこし協力隊としての活動も広がり始めています。
「地元の人から子ども向けのお菓子教室を開いてほしいと依頼されたり、役場と相談して、村の温泉宿で出すウエルカムスイーツを開発することにしたり、新しい仕事が増えています。自分がこれまで培ってきた力がいろいろなかたちで発揮できるのはうれしいし、楽しいです。お菓子教室も初めての経験ですが、小さな子どもと一緒に何ができそうか、自分なりに企画を練りました。関川村の協力隊は比較的、自由に活動させてもらえるんです。自分で考えて行動できるこのスタイルは、私に合っていたなと思います」
将来的にはパティシエとして関川村で独立できればと、協力隊の活動と並行して生ケーキや焼き菓子の受注販売を始めたそう。
「村の加工室を利用すれば、店舗を構えずにお菓子をつくって販売できるので、独立を考えるようになりました。東京にはたくさんのパティスリーがありますが、関川村にはパティスリーもベーカリーもありません。東京とは違う需要がここにはあり、そこに応えていけたらいいなと思っています」
村の食材を使ったスイーツ開発。おいしいお菓子をつくるだけでなく、安定的に農家さんから食材を仕入れられる仕組みをつくることもこれからの課題だといいます。今年はパンづくりにも挑戦したいと意気込みを語る𠮷田さん。村の人たちの食の楽しみがまた増えそうです。
credit text:矢島容代 photo:嶋田健一